外出制限解除を巡って揺れる、EUと米国
早期の解除は禍根を残すことになりそうである
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感染者数が16万7000人、死者数が2万4000人を超えたフランス。
人っ子一人いない広場もロックダウンが解かれたら、観光客で一杯になるのだろうか。 |
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新型コロナウイルスによる外出制限が発令され、世界各国で経済活動の停滞状態が続いているが、EUと米国の今年1月から3月までの第一四半期のGDP(経済成長率)が発表された。EUは前期比3.8%減少し1995年の統計開始以来、最大の減少率を記録。一方、米国も−4.8%と2008年以来の最大の落ち込みとなった。
その結果、各企業が厳しい状況に陥っているが、中でもそれが顕著に出ているのが自動車メーカーと航空機製造業界である。昨年の販売台数が世界一だったドイツの大手自動車メーカー・フォルクスワーゲン社は中国市場を中心に世界の販売台数が大幅に落ち込んだ影響を受け、売り上げが8・3%減少し、営業利益は80%近く減少。
また、ヨーロッパの大手航空機メーカーであるエアバス社は売り上げが15%減少し、第一四半期の損益は550億円の赤字となっている。こうした状況は米国でも同様で、これから発表される自動車メーカーや航空機メーカの決算内容は相当厳しいものとなりそうである。
問題は、第二四半期もこうした状況は続き、むしろこれから先の方が厳しさを増す可能性が大きいという点である。恐らくEUも米国も第二四半期の数値はマイナス2ケタ台に落ち込むことは間違いなく、発表される数値は、1929年の世界恐慌以来の厳しいものとなりそうである。
そうした状況の中で、心配なのは失業状態に陥っている労働者の増加である。中でも米国では先月25日までの1週間で失業保険の申請件数は383万件増、3月中旬以降の6週間では、合計3000万件を超してきており、4〜6月の失業率は15%近くに達しそうである。
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ニューヨークが人で埋まるのはまだ先になりそうである。
米国の感染者数は110万人、死者数はベトナム戦争の戦死者を上回る6万4000人
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ただ米国における失業保険の申請件数の増加には裏があるようだ。ニューヨーク州などでは失業申請者には州政府と国から併せて50万円程の手当てが支給されるため、給与の低かった人の中には、このまま、失業状態が続いてくれたほうが有難いと、思う人たちも出てきているようである。
その資金の一部はトランプ大統領が選挙目当てに用意した、120兆円近い特別予算から支給されているわけであるが、こんなことをいつまでも続けることは無理。そんなことをしていたら、さもなくても借金大国となっている米国の負債額は、3000兆円を超してしまうことになってしまう。
こうした状況下、非常事態宣言の解除を巡って、フロリダ州のように経済活動の再開を急ぐ州とワシントン州やネバダ州の様に、外出自粛を延長する州に分かれ、対応がまちまちとなっている。トランプ大統領は次回選挙を念頭に再開を急いでおり、共和党の州知事もその多くが同様な措置を取ろうとしているようである。
そこで、私が気になったのは次のような情報を目にしたからである。それは、マサチューセッツ工科大学と連邦準備制度(FED)が、1918年に米国でスペイン風邪が猛威を振るった際に実行された、今回の非常事態措置と同様なロックダウン措置の期間の長さが、その後の経済の回復にどのような結果をもたらしたかという調査結果であった。
その結果、より迅速に始められ、長期にわたってロックダウン措置を続けた都市の方が、力強い経済回復を遂げていたことが明らかとなったのである。今回の新型コロナウイルスに対する非常事態措置も同様な結果が出る可能性は高そうなだけに、早い時期にワクチンや治療薬が開発されれば別だが、州知事が自身の立場を有利にするためにロックダウンの早めの解除をした場合には、どうやら厳しい結果が待っていそうである。
来年の今頃には、多くの人がその結果を目にすることになるのではなかろうか。
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失業保険の申請に集まる人々。
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