深緑の景観に身を置こうと、八ヶ岳山麓に沿って走る甲斐の国(山梨県)から信濃の国(長野県)に向かう信濃路(しなのじ)を通って、茅野市の山間部にある「滝の湯」と呼ばれる大滝温泉へ向かった。
我が家からは40キロほどの距離である。
路傍には旅人の道中の安全を願って置かれた33体の聖観音像が立ち並んでいた。その中の一か所には先の天皇陛下が皇太子だった頃に妃殿下と共に訪れた聖観音像もあり、そこには十数体の像が集められて、陛下と妃殿下が3回目に訪れたことを記念して建てられた立札が建てられていた。
大滝温泉の開湯の年代は古く、今から1220年前の平安時代(795年頃)にさかのぼると言われており、甲斐の武田信玄公が信州を攻略
し始めてから川中島合戦(1540〜1564年)に至る間、その軍勢が八ヶ岳山麓を通っての行き帰りの都度、当温泉に浸かって、戦塵(せんじん)を流し英気を養ったと語り伝えられている。
私の子供の頃には山の湯治場(とうじば)として活用されており、近郷の人々には名声を馳(は)せており、私も小さい頃、母親に連れられて何度か訪れたことがあった。道中に建てられた33体の聖観音像は、湯治場に向かう人々の道中の安全を願って建てられものであった。
その温泉の近くには大滝や御謝鹿池 (みしゃかいけ)
や蓼科湖(たてしなこ)などもあり、現在は信濃路の観光地の一つとなっている。
そんな大滝や御謝鹿池を訪ねてみると、道中や池の周囲に立ち並ぶ木々が見事なまでに深緑に輝いでおり、コロナ禍で暗くなりがちな心を癒してくれた。まさに「深緑の地」
と呼ぶのにぴったしの地で、都会にお住いの方々にはお勧めの観光地の一つである。