深刻化する中国の水不足
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迫る砂漠化に畑を脅かされる中国甘粛省敦煌の農民 (AFP)
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3月の始め、NHKのBSハイヴィジョンテレビ番組で、中国の水問題の現状を明らかにするために、環境保護活動家の揚勇氏が中国内陸部を4万3000キロに渡って踏破する大規模な環境調査のドキュメンタリーを放映した。皆さんの中にもご覧になられた方もいられることと思うが、その内容は大変ショッキングなものであった。
13億の巨大な人口を抱えて、爆発的な経済成長を続けている中国。しかし、今、その成長を脅かしているのが深刻な水資源不足と水質汚染問題である。
大量の食糧や工業製品を生産するため、また、豊かになった都市生活者による大量の水を使うライフスタイルの広がりのために、中国の水の使用量はここ数年、放物線を描いて増加する一方で、環境の変化による降水量の減少も加わって、中国各地の河や湖は次々と干上がっている。
テレビを見ていて一番驚いたのは、中国の2大河川の一つである、あの黄河に「断流」と呼ばれる現象が起きていることである。断流とは何か? 川の上流地帯で人口が増加し取水量が急増したために途中で川の水が枯れてしまい、
水の流れが海に到達しない現象である。
黄河や長江(揚子江)といえば、5000キロから6000キロの長さを誇るアジアの3大河川の一つである。その悠々とした流れは昔から中国の水墨画に描かれ、
流域の風光明媚な景色と共に、豊富な水量を誇る大河のイメージが我々日本人の頭の中に残されている。その川の一つの黄河が今や渤海には一滴の水も注がない断流川となっているというのだ
から驚きである。
それは、黄河の源流となっていた大小300個の内200個の湖が次の3つの要因で乾燥化し、水位が下がっために、干上がってきてしまっている
ためである。
@ 気象の変化による降水量の減少
A 遊牧民族の流入による人口増加と農地の無秩序な拡大
B 鉱物資源の採掘や狩猟、薬草採取を目的とした人間活動の活性化
黄河や長江の水量の減少は、下流域の大都市に大きなダメージを与えるだけでなく、内陸部の農村自体にも深刻な影響を及ぼしている。内陸部を代表する穀倉地帯として有名な黄河上流の寧夏回遊自治区では、水不足によりトウモロコシに実が入らず、梨の実が収穫できない状況が続いており、このような状況があと2〜3年続いたら、農家は皆この地を離れなければならない
ようである。
驚いたのは、そうした地域に住む農家の人たちは深刻な水不足のため、作物の収穫が出来ずにいるだけでなく、毎日の生活用水にも事欠く有様で、飲み水だけでなく身体を洗う水まで、ペットボトルを買っていることであった。
こうした生活で手持ちのお金を使い尽くした彼らが、この地を離れ流れ着く先は、下流の大都市、北京であり、天津、上海であることは間違いない。
同様なことが新疆ウィグル自治区のチュモーという町でも起きていた。この町はシルクロードのオアシスの町として栄えてきていたが、綿花が栽培できると
いうことで、近年、綿花作りが盛んになり、土地が安いために全国から農民が一挙に移住、この10年間で農地が5倍に増えた。
その結果、畑を潤すために大量の水を消費したために次第に水不足となり、今は井戸を掘って何とか凌いでいる。しかし、多くの井戸の掘削によって地下水の水位が次第に下がり、全ての井戸水が枯れるのは時間の問題となっている。彼らもまたこの地を去り、新たな職を求めて大都市へと向かうことになる
のは時間の問題である。
(次回に続く)
中国の干ばつ化と水不足を裏づけるニュースが、数年前から大紀元日本社から報じられているので、それらの幾つかをピックアップしてみた。
直近のニュースと併せて読み直してみると、それらは皆、先のNHKの番組の内容を裏付けるものばかりである。
中国西南部、「百年に一度」の干ばつ 二千万人飲み水難
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雲南省会澤県。6千立方メートルの大型貯水池が干上がり、子供たちの遊び場に(ネット写真) |
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【大紀元日本2010年3月19日】
川は断流、ダムは底が見え、畑は裂ける。昨年秋以来、雲南省を始め、中国西南部の大部分は相次いで大干ばつに見舞われている。特に雲南省や広西自治区の一部の地区では雨が半年以上も降っておらず、100年に一度の特大干ばつが続いている。多くの地区では人や家畜の飲用水確保が極めて困難で、被害は二千万人にも及んでいる。
一体いつになれば雨が降るのか。これは最近、幾度となく寄せられている問い合わせだ。3月16日、雲南省気象局の出した回答では、少なくとも4月15日前までは雲南省では高温で降水も非常に少ない天気が持続すると予想されている。
また、「2009/2010年雲南秋、冬、春連続干ばつ中期評価結果」によると、09年秋から同省では気象記録開始以来、最も深刻な秋冬連続の干ばつで、現在依然として持続、拡大しており、すでに秋冬だけでなく秋冬春の連続干ばつに発展している状態。
尋甸回族イ族自治県では干ばつにより40万畝(1畝:6・667アール)の秋まき作物のうち、85%の収穫が絶望的となり、約10万人と9万頭以上の大型家畜の飲用水確保が非常に困難な状態である。14日、同県で最も乾いた村と言われる河口郷岩子村では強風が吹き、空が埃に包まれた。このため多くの若木が死に、道路両側の松の葉も枯れてしまったという。いつもなら、この時期は山桃や梨の花が咲き美しい景色が見られるのに、今年は枯れ木が残るばかり、とドライバーの蒋さんは話す。
各庄鎮では給水車が水を供給し、人々はチケットを購入して水の配給を受けている。一方、山村では往復5時間もかけて水源を探す人もいるという。山道は交通が不便で給水コストが高くつく。自動車で山道を走行すると1月に2度もタイヤを交換しなければならないので、公共道路のない地域では馬や家畜が車を引いて水を供給しているそうだ。
雲南省のほか、貴州省ではほぼ全域で干ばつによる被害が現れ、中国最大のサトウキビ生産量を誇る広西チワン族自治州でも、干ばつのため生産量が大幅に減少しているという。四川省では600万人以上が干ばつによる被害を受け、130万人の飲用水が不足している。西南地区の干ばつ拡大により、北京当局は四川省で国家4級救災応急方案を発動した。
一部地区視界ゼロに 新疆ウイグル自治区で強い砂嵐
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黄砂から身を守る中国の女性たち。年々ひどくなる黄砂は、
森林破壊や砂漠化などの環境問題が原因だといわれている(STR/AFP/Getty Images)
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【大紀元日本2010年3月14日】 12日、新疆ウイグル自治区ホータン地区で今年最初の砂嵐が吹き荒れた。一部地域では舞い上がる砂が空を覆い、最もひどい時には視界ゼロとなった。同日午後7時までホータン地区は黄砂に包まれていた。
ホータン地区気象台は12日午前に西から東へ向かう特大級の砂嵐を観測。午後5時、砂嵐はホータン地区に到達し、風力5級から6級の強風を現地にもたらし、グマ県(皮山県)やホータン市では一時視界ゼロとなった。午後6時、砂嵐はチラ県(策勒県)に移動し、午後9時にはニヤ県(民豊県)に到達、周囲500キロ以上を覆い尽くした。
中国土地砂漠化問題、人為的要素が主因
【大紀元日本2007年6月18日】 中国の砂漠化した土地は全国土地面積の約18%を占め、深刻な問題になっている。甘粛省で長年砂漠化問題に取り組んでいる専門家は、その主な原因とは水不足であるとしているが、問題を深刻化させた原因は、乱開発、乱放牧、乱伐採などの人為的要素が殆どであると指摘した。中央社が伝えた。
報道によると、中国牧草区は長期にわたり放牧超過の現象があり、牧草はそのために急激に退化し砂漠化したという。内モンゴル、新疆、甘粛省において、過度放牧のため、牧草面積は急速に縮小している現状である。
一方、乱放牧の他に、乱開発、乱伐採、過度に水を使用するなどの人的破壊も原因として挙げられた。同時に、沙化区で漢方薬材料の採集および炭鉱の開発も深刻問題となっている。報道によると、四川省ガバチベット族姜族自治区のノアガイ県では、百種類以上の漢方薬の材料が豊富に生産されているが、採集時期になると、全国各地から十数万人が一気に同県の山に集まり、土を勝手に掘り起こしたり、植物をもぎ取ったりして土地の砂漠化をもたらしたという。
6月17日、中国国家林業局副局長の祝列克氏は、第11回「世界砂漠化および旱魃における予防と解決」会議で、
中国には現在174・3万平方キロメートルの土地が砂漠化しており、全国土地面積の18・2%を占めているとし、砂漠化による直接経済損失は毎年540億元(約8,316億円)に達し、約4億人の生活に影響を与えていることを明らかにした。
国家林業局の資料によると、中国では20世紀末以降、毎年3436平方キロメートルの土地が砂漠化しているが、これは5年ごとに北京市の面積が砂漠化し、利用価値を失っていることになる。
四川省:加速する砂漠化、200以上の湖が枯渇
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緑豊かだった四川省若尓蓋(ルオアールガイ)草原
にも砂漠化が迫ってきている
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【大紀元日本2007年10月10日】 中国大陸で最も美しい湿地草原といわれる四川省北西部の若尓蓋(ルオアールガイ)草原の砂漠化が急速に進んでいる。沼沢はすでにその跡を見つけることすら難しく、砂漠化する面積は毎年11・65%ずつ増えている。300以上あった湖の内200以上が干上がり湿地面積の委縮は60%を超えているという。
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中央気象台3月15日の干ばつ観測図(ネット写真)
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