広がる不安 (2)
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流出原油はとうとうフロリダの海岸を汚染し始めた
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第2の疑問点は、本当の流出量はどれほどかという点である。
当初、BP社が発表した1日の流出量は160キロリットルであった。その後事故に対する関心が深くなるに連れ、そんな量ではなさそうだという観測が広がり始め、6月に入ってマスコミの記事には、推定数値として5600〜9500キロリットルという
大きな数字が登場するようになってきた。
ところが、数日前のアメリカのABCテレビを見ていたら、BP(British Petroleum)社が改めて発表した数値は15、000キロリットルであるという衝撃的な数値が報道
されていた。この量はドラム缶に置き換えると、7万5000本分に該当する。最初の発表数値に比べると、何と100倍もの量である。
一方原油の吸い上げ量であるが、こちらは1日当たり2900キロリットルが限界であるようなので、流出量の20%しか回収出来ていないことになる。その差の1万2000キロリットルという数値
が、1997年のナホトカ号重油流出事故の2倍に匹敵することを考えると、いかに
今回の事故の流出量が多いかが分かろうというものである。
2年前に予見された流出事故
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ルイジアナ海岸にたどり着いた油膜はまるで赤潮のようだ。 (クリックで拡大)
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これだけの量が毎日流出しているわけであるから、広大なメキシコ湾といえども、このまま流出が続くようなことになれば、湾全体が原油の油膜に覆われる日が来るかもしれない。実は、ちょうど今から2年ほど前に沖縄の講演会に出かけた際に、現地のスタッフの一人の女性がこんな話をしてくれたことがあった。
彼女が夜半に肉体離脱して導かれた先はメキシコ湾上空。成層圏の高いところからメキシコ湾を展望すると、なんと海全体が赤褐色でまるで赤潮に襲われたような状況で
あった。彼女は巨大な湾全体がこんな色になってしまったのは、きっと温暖化で海水に異変が起きて赤潮が発生してしまったに違いないと
考えた。その時には、それ以上のことは思いつかなかったようである。
ところが今回の原油流出事故が起き、私から送られたルイジアナ海岸に押し寄せた油膜の写真(上段に掲載)を見て、自分の見せられた赤潮は、実は今回の事故による油膜の広がり
だったのではないかと、思うようになったという。
彼女がそうした情景を見せられたのが2年前であることを考えると、それは、この先2年後に、我々が赤褐色の油膜に覆われ、死の海と化したメキシコ湾の姿を見ることを暗示していたのかもしれない。
あるいは原油流出が引き起こした赤潮の広がりであるかもしれない。思い過ごしであれば幸いだが、その可能性は決して小さくはない。
いずれにしろ、我々は今回のメキシコ湾原油流出事故は単にアメリカの問題だけでなく、人類全般に関わる一大事であることを認識しておく
必要がある。日本人やアジア人にとってそれは決して対岸の火事では済まされないからである。
これから先、夏場に向かって発生したハリケーンがメキシコ湾上空を横断し、原油成分やその分解剤である強い毒性を持ったコレキシト9500が、アメリカの沿岸地帯に降り注
がれるようなことが起きたときには、世界有数の穀倉地帯に与える影響は甚大で、それは即、我が国や世界の食糧問題に波及するからである。
彼女がメキシコ湾の惨状を見せられた後に幻視したのは、中東のある国の砂漠化した都市のヴィジョンであったようだが、それは一体何を暗示しているのだろう? そう遠くないうちに、我々はその答えを知ることになるのかもしれない。