2番底に向かう世界経済
27日、カナダのトロントから北へ200キロ、保養地ムスコカで開かれたG20(20ヶ国・地域首脳会議)が終了。その前に開かれたG8では、もう一つ明確にされなかった先行き経済に対する対応策が、景気刺激策から財政再建策へと方向転換する流れが鮮明となった。
オバマ大統領は各国首脳に景気刺激策を呼びかけたが、欧州を中心とする国々から受け入れられず、アメリカ流の思惑(おもわく)は完全に頓挫することとなった。議長国であるカナダの首相が読み上げた声明文は、各国は財政刺激策が終了した後は財政再建を優先し、2013年までに財政赤字を半減することに集中するというものであった。
アメリカが景気刺激策を主張してきた背景には失業率が10%弱と26年ぶりの厳しい水準にあることや、この秋に中間選挙を控えていることなどがあるわけだが、欧州各国はギリシャの信用低下が他国に飛び火してユーロやEUが崩壊することを恐れており、これ以上アメリカの主張に同調することは出来ないと断を下したわけである。
特にドイツは、第一次世界大戦後の賠償金支払いのために借金を重ね、その結果、超インフレに襲われナチスの台頭を招いたことや、1929年の株価暴落後、31年から始まる世界恐慌発生の震源地となっているだけに、とてもオバマ大統領の呼びかけに応じて財布のヒモをこれ以上ゆるめることは出来なかったのである。
そうした厳しい内容が話し合われた会議の中で、おかしなことに、日本だけは財布のヒモをまだゆるめても善いというお墨付きをもらったというのだ。その理由は、我が国の借金は他国に頼っていないからだという。
債権者が身内(国民)であろうが、借金は借金である。立ちゆかなくなってデフォルトしたとき、1000兆円の財産を失う人間がいることには変わりはないというのに、日本だけが特例を認められたということは、まるで日本国つぶしの策略が見え隠れしているようだ。
世界恐慌へ向かう可能性
問題はこれから先の景気動向である。これまでも何回かHPで述べてきたように、リーマンショック後、株価の暴落と経済危機を何とか立て直し、景気回復が軌道に乗ったように見せかけてきたのは、
世界各国が足並みをそろえて行って来た金融機関や大手企業に対する財政支援策と、車や住宅購入に対する減税策であった。
その結果、世界各国政府はは1000兆円とも言われる膨大な財政赤字を新たに抱え込むことになったわけである。その典型的な国がアメリカであることは、先刻読者はご承知の通りである。
この異常とも言える財政支出が打ち止めになり、反対に緊縮財政に方向転換するということが、実体経済にどれほど大きなインパクトを与えることになるか、甘く考えていたら大変である。各国もそれは重々承知の上で、背に腹は換えられないということで、方向転換に踏み切ろうとしているわけである。
日本の新聞は相も変わらずお天気な記事を書いているが、28日のアメリカABCテレビは、G20が財政赤字削減への方向転換を共同声明として打ち出
したことを受けて、メリーランド大学のピーター・モリス教授の大変衝撃的なコメントを伝えている。
「景気刺激策が方向転換すれば、足腰の弱い景気回復が腰折れし、2番底を打つ恐れが大きい。いったん2番底に向かえば、そこからの回復は非常に難しく、大恐慌に陥る可能性が大である。具体的には、失業率が再び10%を超してくる
他、住宅市場も更に悪化し、貸し渋りが一段と進むことになる」。
「これを喫煙に例えるならば、喫煙を始めた人がその時期は分からないが、これから先、必ず病気になるのと同じ事である」、と
いうのがモリス教授の主張である。日本の経済学者ももう少しぴりりと辛いコメントを発表したらどうだろうか。
1年半前、経済崩壊の危機に陥った世界は急遽G20を開催し、景気刺激策という劇薬の投与策で歩調をあわせ、一番底脱出を図ってきた。しかし、ここに来てG20ヶ国の足並みは乱れ、お互いに自分の頭のハエを追うことが最優先される事態に
陥(おちい)ってしまったようである。
1年半前の景気回復に対する高揚した気分はこれで完全に消滅である。いよいよ、世界経済の動向からは目が離せなくなってきた。モリス教授の予測が正鵠を得ているなら、7月から8月に向かって、いったん開いた「地獄のフタ」が
再び視界に入って来ることになるのかもしれない。