秘密会合となったG7

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G7非公式化へ


これまで、米欧日の主要国が経済問題を協議してきた「主要7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)」が5、6日にカナダのイカルウイットで開かれるが、今回の会合から非公式化されることになった。

G7は米、日、英、仏、独、伊、加の7ヶ国が参加。最近はほぼ年3回、定例で開かれ、毎回経済の情勢認識や強調して取り込むべき課題を確認する ため共同声明を採択し、会合後に発表してきた。それを今回から非公式の会合にし、共同声明などを一切発表しないことになったというわけである。

こうした動きを働きかけたのはガイトナー米財務長官。表面上の理由は「共同声明作りに傾斜しがちな会合を中身のある会議にしよう」ということのようで、菅直人財務相 も「文書をまとめるということではなく、ざっくばらんな意見交換の場にしょう」ということであると、述べている。

しかし、私は今回の処置が菅大臣が呑気に述べているような理由から、非公式化したものではないのではないかと考えている。非公式化だけでなく、話し合いそのもの を秘密裏に行おうとしている意図が見え隠れしているのだ。

というのは、今回G7が開かれるイカルウイットは中国の新華社がワシントン発として伝えているように、カナダの極北の地にあって、イヌイ ット原住民が60%を占め、白人が40%という人口6千人足らずの小さな村で行おうとしているからだ。

しかもこの村は、高速道路網から孤立、隔絶されており、2月の平均気温はマイナス30度、 夜間にはマイナス40度近くになる極寒の地で、道路が凍結するため車は使用出来ず、スノーモービルか犬ぞリしか移動手段が無いという信じ難い場所であるからである。

新華社伝は、宿泊施設もごく限られているため、随行団は最小限に押さえられ、各国からの出席者はトップだけになるはずだ、と伝えている。したがって記者団は事実上ホテルの予約が取れ ないため、どうしても取材をしたい記者は、大型輸送機にスノーモービルと宿泊設備、発電設備等を積み込んで、現地入りするしかないようである。

主催国カナダは、なにゆえこんな隔離され交通手段もなく、宿泊施設もないような厳寒の地を開催地にしたのかという理由として、環境破壊が進む中、厳しい自然環境を各国の首脳に知ってもらうためだと述べているが、財務相や中央銀行のトップにそんなことを知ってもらったからといって 、環境維持に一体どれほどの効果があるというのだろうか。

 

 
 


極寒の秘境の地を開催地に決定したカナダのフェレアティ財務相

 

 

恐らく通訳も主催者側が用意した人物を使い、日本から事実上会議に参加できる人物は菅財務相と 今回特別に参加が認められた大塚耕平金融副大臣、それに白川日銀総会だけではないかと思われる。参加者をこれだけ限定し、会議の内容を共同声明として発表することがなく、マスコミの取材班も寄せ付けない 裏には、何か重要な意味が秘められていると考えて当然である。

深読みの出来ない我が国の政府関係者や金融マンは、何も知らずに呑気に構えているようだが、今回の会議では、 我々の知らされないところで、これからの金融政策に関わる相当突っ込んだ論議が交わされることになることは間違いない。

それを物語るように、G7に入っていない中国の国営通信社「新華社」だけが、あまりに不自然な開催場所と、何か重大な内容が秘密裏に話し合われる可能性が大きいことを伝えている。

日本のマスコミは、オバマ大統領が取り上げている金融規制改革についてや、中国など新興国の内需拡大や為替問題が主要な議論となるだろうと表面的なことだけを伝え、自分たち取材班が なにゆえ閉め出されているのかを理解していないようであるが、なんとも情けない限りである。

 

「火の車」の財政状況


アメリカをはじめ日本、欧州各国の財政状況は、今回の金融危機回避のために費やした巨額の財源によって「火の車状態」に達している 。アメリカの昨年度の財政赤字が142兆円に達し、この3年間で400兆円近い莫大な赤字を計上することになった。

日本とて内情は同様である。現に、「11年度予算はもはや消費税の大幅増加なしには組むことが出来ない」という仙谷大臣の発言や、「社会保障財源6兆円不足 」という菅大臣の発言を聞いていると、いよいよ我が国の財政状況も待ったなしの状況に追い込まれたな、という感じである。

表だってはギリシャやポルトガル、スペインといった国のデフォルト問題が取り上げ られているが、それ以上に「火の車」なのがアメリカであり、日本かもしれない。基軸通貨を持つがゆえに、財政危機を引き延ばししているアメリカであったり、借金の貸し手の大半が国民であるがゆえに緊迫感が薄い日本であるが、両者とも、事実上のデフォルト状態に入っているといったところが、本当のところではないだろうか。 勿論、イギリスを始め、ヨーロッパの主要国といえども状況は同じである。

主催国カナダのフェレアティ財務相は「初期のG7は暖炉を囲んだ少数の閣僚による雑談のような会議だった。われわれは原点に立ち返ろうとしている」と述べているが、マイナス30度を超す凍てつく寒さは、今日の出席する各国のおかれた財政状況を表しているようで、会場としては 最適地かもしれない。

そうした中で開かれる今回のG7では、お互いに国民に知らしめられない内情を語り合い、緊急避難的な対処法を話し合う場となるのではないだろうか。 また一方で、中国に対する為替レートの変更など突っ込んだ問題も論議されるはずだ。 今回の秘密会議の呼びかけがガイトナー米財務長官であったことを考えると、アメリカはニュー・ダラー発行のための根回しを行おうとしている可能性もある。

だからこそ、犬ぞりしか交通手段のない、極北の地で非公式という名の秘密会合が開かれることになったのではなかろうか。カナダ政府が述べている、前代未聞の異常な地での開催の理由は、自然な形で報道管制を敷く為の方便に過ぎない 、と思っておいた方がよさそうだ。

いずれにしろ、恐らくこれから先、世界各国は財政問題で大きく揺れることになる ことは間違いない。5月に行われる万国博覧会が幕を閉じた後、 オリンピック、万博と国民の不平・不満を封じる手段を失った中国で、格差不満などの国内問題が火を噴くような事態が発生するようなら、 背に腹はかえられず、共産党政府はアメリカ国債を売却し始めることになる。

こうして中国の火の粉は一気にアメリカに飛び火することになったら、ドルの崩壊 はあっという間だ。その結果、世界経済は未曾有の混乱状態に突入 、やがて資本主義経済の崩壊へと一気に進むことになる。

今回の掲載記事が私の杞憂で終わることを祈っているが、各国の財政状況が危機的状況におかれていることだけは、 読者諸氏も是非頭に入れておいて頂きたいものである。

 


 

 

 

 

 

 

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