暴動化し始めたギリシャデモ
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ギリシャの首都アテネで5日、デモ隊の投げた火炎瓶を受けて炎に包まれる警官隊=ロイター
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国際通貨基金(IMF)とユーロ圏諸国(EU)によるギリシャへの1100億ユーロ(約14兆円)の緊急融資が正式決定したにもかかわらず、ユーロの下落が一向に止まらず、対ドルで1.30の大台を割り込み、1.28まで売り込まれ、対円でも120.70円と120円台突破が目前となってきた。
ユーロ下落の要因としてあげられるのは、次の2点。
@ ギリシャの財政再建には暗雲が漂っていること。
A ポルトガル、スペイン、イタリアなどがギリシャの後追いをする可能性が高いこと。
ギリシャの財政再建には歳出削減と税収増が欠かせないが、それを拒もうとしているのが、ギリシャの伝統的な「スト社会」である。国民にとってストはほぼ生活の一部となっており、政府もこれまで、労組がストを行えば必ず何らかの妥協をしてきた歴史がある。
それゆえ、現地の日本人のブログなどを見ると、毎度のことなので何も心配していませんなどと、ノー天気なことを書いている。
しかし、1日のデモに続いて、5日には、官民の2大労組による10万人規模のゼネストが暴動に発展し、3名の死者、20名の負傷者が出るなど、アテネ市内は大混乱に陥っている。国民の多くはまだ「国家倒産(デフォルト)」という現実に目を向けられない状況にいるため、こうしたストライキはこれから先
しだいにエスカレートし、暴動が大規模になっていく可能性が大きい。
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デモは暴動に発展 (ロイター)
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そのため、ユーロ圏諸国や市場は緊急融資を巡ってギリシャ議会が紛糾したり、財政再建が挫折して融資返済が滞ることになるのではないかという不信感をぬぐえずにいる。
それを見越したかのように、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ社が、ギリシャ国債の「A3」への格下げを発表している。
ギリシャが発行している国債のうち約70%は外国が保持しており、その中心は欧州の銀行である。したがって、もしも、ギリシャが国家破綻し国債の価値がゼロになってしまうようなことになれば、欧州の銀行は大打撃で、破綻する銀行が出てくることは必至である。
1931年にドイツの銀行の倒産がきっかけとなって、ヨーロッパ全土を覆う大恐慌が始まったわけであるが、「歴史は繰り返す」の例え通り、あれから80年、今度はギリシャのデフォルトによる欧州各国の銀行破綻が
第2の欧州恐慌、ひいては世界恐慌を引き起こすきっかけとなるかもしれない。
因みに、欧州恐慌は1929年10月のニューヨークの株価暴落から20ヶ月後の1931年5月に発生しており、その後世界的な恐慌へと進んでいる。今回のリーマン・ショックによる株価暴落が2008年10月であったことを考えると、
次なる欧州恐慌の始まりとなるのが今年の5月と重なってくる。
更なる問題点は、スペインとポーランドが第2、第3のギリシャとならないかという点である。財政状況を見てみると、ギリシャの財政赤字が国内総生産(GDP)に対して13.6%に対して、ポルトガル9.4%、スペインは11.2%と、ポルトガル、スペイン
両国共に、決して安心しておれる状況ではなさそうである。
失業率に至っては、ギリシャの10・2%に対して、ポルトガルは10・5%、スペインは20%とギリシャを上回っており、両政府が財政再建策を打ち出せば、
貧困にあえぐ市民によって、ギリシャを上回るストライキや暴動が発生する可能性は大だ。
6日早朝のニュースでは、米格付け会社ムーディーズが、ギリシャに次いで、ポルトガルの格付けを引き下げ方向で見直すことになったようである。その理由として、「最近のポルトガルの財政の悪化」、主に競争力の低下による「長期的な成長への課題」などを挙げている。
こうして、今後スペインやポルトガルなどの財政が危機的状況に追い込まれるような事態になると、もはや国際通貨基金(IMF) も
欧州連合(EU)もこれらの国々の救出に手を貸す余裕はないはずだ。なにしろ、スペインの経済規模はギリシャの4倍もあるからだ。となると、ユーロの信用は急落し、世界経済が混乱に陥る恐れは一段と高くなってくる。
まさに1931年の再来である。
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ロイター
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ギリシャ債務危機、欧州の他地域に広がるリスク=IMF専務理事
[パリ 5日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は仏紙パリジャンに対し、ギリシャの債務危機は依然として他の欧州諸国に広がるリスクがある、との認識を示した。ただ、フランス、ドイツなど欧州連合(EU)の主要国に波及するリスクはないと語った。
一部の国のユーロ圏からの離脱は、単一通貨の終えんを意味する可能性があると指摘、経済政策のさらなる協力が必要だと語った。
ユーロ圏諸国、ギリシャ債務問題波及の深刻なリスクに直面=独連銀総裁
[ベルリン 5日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)の理事会メンバーであるウェーバー独連銀総裁は5日、ギリシャの債務問題が他のユーロ圏諸国に波及する深刻なリスクがあると警告した。
同総裁は、ドイツ議会予算委員会の冒頭で「現在の非常にぜい弱な状況の中でギリシャがデフォルトした場合、通貨同盟と金融システムの安定性に多大なリスクをもたらす」と指摘。ギリシャへの支援策にドイツが拠出することは正当だと説明した。
総裁は「他のユーロ圏諸国に問題が波及し、資本市場でネガティブな反応が高まる深刻な脅威がある」と語った。
カトラ火山噴火と欧州恐慌
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エイヤフィヤヨークトル氷河下の火山噴火(20010年3月27日)
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アイスランドの噴火活動が再び活発化し、その影響が広がり始めている。これもまた、ユーロ危機をもたらす要因となるかもしれない。私は現在の火山活動は容易におさまることはないのではないかと
危惧しているが、それにも増して気になるのは、現在噴火している火山の火口から25キロしか離れていないカトラ火山の動静である。
カトラ火山はアイスランド屈指の大きな火山で、過去10、17、19世紀の3回、今回噴火した火山と同時に噴火を起こしているだけに、1823年以来190年ぶりに噴火したエイヤフィヤヨークトル氷河
に覆われた火山に連動して、噴火活動を始める可能性は無視できないように思われる。
先月、アイスランドのグリムソン大統領がカトラ火山の噴火に言及し、「もしカトラ火山が噴火したら、これまでの混乱はほんのリハーサルだったと思えるだろう」と述べているのは、そうした歴史的な裏付けとカトラ火山の規模の大きさが背景にあるからである。
今のところ、エジンバラ大学の火山学教授ソルバルドル・ソールザルソン氏は、カトラ火山の噴火の兆候を示すものは何もないと語っているので、無用な心配かもしれないが、
最近の欧州の状況を眺めていると、 暗雲が漂い始めてきているように感じられるだけに、少々心配である。
もしも、グリムソン大統領の心配が現実となるようなことになったら、ユーロは壊滅的な打撃を受け、世界経済は一気に奈落の底へ向かうことになる。このところ、ヨーロッパ、アメリカ、中国市場の株価が調整局面に入りかけているだけに、ユーロの動きからは目が離せない状況が続くことになりそうである。