シリア軍が使用したとされる化学兵器・サリンで、4日、シリア北西部イドリブ県で多数の死者と負傷者が発生した空爆に対して、トランプ大統領がシリア内戦に対する不干渉的発言から一転して、アサド政権を厳しく批判し、対抗措置をとると明言したことは、昨日「シリアでサリンガス使われる」でお伝え通りである。
7日、トランプ大統領は米国入りした習近平主席と会談に入る直前、6日午後10時(日本時間7日午前11時)過ぎ、今から3時間ほど前に、米軍に対してシリア国内の空軍基地を攻撃するよう命じたと発表した。 米軍はこれまでシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦で空爆はしているが、アサド政権軍は標的にしていなかっただけに、今回のミサイル発射は米国の対シリア政策は大きく転換したことになる。
その後、国防総省から、米軍は地中海の洋上に展開する2隻の米艦船から59発の巡航ミサイル「トマホーク」をシリア中部ホムス近郊のシュアイラート空軍基地の航空機や武器庫、防空施設、レーダーなどに向け発射したことが発表された。
このシュアイラート空軍基地には化学兵器が貯蔵されており、4日にイドリブ県に化学兵器を投下した攻撃機の発着に使われた基地であると米軍は見なしている。 国防総省は、今回の攻撃により、空軍機や装備などに大きな損害を与え、シリア側が化学兵器を使用する能力を減らしたと強調。
シリア国営テレビは早速、米軍の攻撃について「侵略行為だ」と批判。 問題はアサド政権の後ろ盾であるロシアの反応である。 米軍は攻撃前にロシア軍側に通知し、空軍基地にいるロシアやシリアの人員の危険を最小化したとしている。 しかし、ロシアのサフロンコフ国連次席大使は6日に、米国が検討しているシリアへの軍事介入に関し「マイナスの結果を考えなければならない」と警告していただけに、間もなくロシア政府から強い非難の声明が発表されることは必至である。
気になる米中首脳会談の行くへ
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フロリダで始まった米中首脳会談。
トランプ大統領の北朝鮮制裁強化に対して習近平主席はどう対応するだろうか
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なんと言っても驚いたのは、今回のシリアへの攻撃が中国の習近平主席との重要な会談に入る直前に実施されたことである。 これまでの常識では、世界を代表する国の首脳会談の前にはこうした行動に出ることはないとされていただけに、驚いているのは私だけではないはずだ。
さらに気がかりなのは、トランプ・習近平対談への影響である。 今回の首脳会談の主要議題となるとされているのは、北朝鮮の核やミサイル開発に対する中国政府の手ぬるい制裁姿勢である。 会談に先立ってトランプ大統領は「もしも、中国がより厳しい制裁に出ないようなら、米国が独自に北朝鮮対策を実施する」と発言している。
会談場所となるフロリダのウエストパームビーチに向かう機内においても、何度もそれを繰り返していたようなので、それを知る習近平主席がどう反応するか注目である。 習近平主席がトランプ大統領の発言を「また、例のトランプ砲だ」と高をくくっていたとすると、今回のシリアへの攻撃はショッキングであったに違いない。
米国議会は大統領を後押しするかのように、米中首脳会談の直前に、もしも中国が北朝鮮への制裁を強化することを拒否するようなら、米国として独自の手段を取る事と、北朝鮮と結ばれている中国の組織や人物に対する制裁を発動すべきだという決議を採決している。
もしも、習近平主席から北朝鮮に対する厳しい制裁の確約が取れないようなら、北朝鮮に対しても、何らかの軍事的行動に出る可能性が大きくなって来るだけに、東アジア情勢も一気に厳しさを増し来そうである。 何やらここに来て、トランプ大統領旋風がロシアと中国を巻き込んだ厳しい世界情勢を引き起こすこととなって来たようである。
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