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口から泡を吹き出し、痙攣する子供の姿はあまりに悲惨だ。
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前回掲載した「シリア・アレッポの悲劇」で、シリアにおける内戦によって多くの市民、中でも幼い幼児や乳飲み子たちが悲惨な苦しみに遭遇している恐ろしい現状を、お伝えしたばかりである。 なのに、今回再び同様な悲劇的な惨状と、それを食い止める国際社会の無力さを見せつけられることとなった。
読者もテレビや新聞の報道で、既にシリアにおける化学兵器による恐ろしい惨状を見聞きしておられることだろう。 国際法で使用が禁じられている化学兵器が、アレッポにおける政府軍の攻撃で使われていた可能性が大きいことは、すでに「シリア・アレッポの悲劇」で記しておいた通りである。
今回のシリア北西部・イドリブ県の反政府軍の拠点に対する攻撃では、それが大々的に使われるところとなったようである。 その結果、
100人を上回る死者が発生し、サリンガスと思われる毒ガスを吸った小さな子供たちが病院に担ぎ込まれ、苦しそうにのたうち回っている姿を再び目にすることとなった。
昨日、国連安全保障理事会の緊急会議が開かれたものの、欧米がアサド政権を厳しく批判する一方、ロシア政府は今回の化学ガスによる死傷者の発生の要因は、反政府側にあると反発。 真相究明や対応措置など何一つ結論が出ないまま、わずか2時間の非難合戦で終了してしまった。
トランプ大統領豹変
今回の化学ガス兵器問題で注目を浴びたのは、またもやトランプ大統領の発言であった。 大統領はこれまで一貫して、シリア問題はシリア人自身が解決するべきものであるとして、これから先、米国はシリアの内戦問題に深く関わることはないと、明言してきていた。 ところが今回の事件を受けて、アサド政権の行動を厳しく批判し、対抗措置をとることになると明言したのだ。
その具体的方法は明示していないが、米国としていかなる行動に出るのか世界が注目するところとなった。 今回の発言は当初の自身の発言が軽率であったことを認めるものであると同時に、これまで、「オバマ大統領はシリア政府軍による化学兵器の使用に警告は発したが、何ら具体的な行動に出ることがなかった」と厳しく批判して来ていただけに、これから先、もしも具体的な行動に出ることがなかったら、もはや大統領としての資格を失うことになる。
しかし、今回の安保理の真相追求はロシアの拒否権で否決され、今後のアサド政権に対する米国の行動は厳しく反発される可能性が大きいだけに、「言うは易く、行うは難し」だ。 トランプ政権はいかなる手段を用いて、今回の化学兵器使用が政府軍によるものであることを明確にし、アサド政権に対して厳しい制裁措置を行い、再発防止策を打ち出せるのか注目である。
不可解なアサド政権の行動
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こうした光景は見慣れたものとなっているが、化学兵器の使用は悲惨さを
倍加している。 現地の医療関係者は、アレッポと同様、ここでもまたあらゆる
医療施設が攻撃対象になっていると訴えいている。 (フランスF2)
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それにしても、もしも今回の化学兵器による攻撃が政府軍によって行われたものだとすると、世界中から非難を浴びることを百も承知しているはずのアサド大統領が、なにゆえ、再び大々的な化学兵器の使用に踏み切ったのかだろうか。
アサド大統領はテレビでのインタビューで、自分たちは化学兵器の使用など一切行っていない。 あれは反政府軍の自作自演劇だと語っている。 また、ロシア政府は安保理で、今回の化学兵器による被害の発生は、反政府軍が独自で製造し保管して来た化学兵器の弾薬庫が、政府軍の爆撃で破壊された結果生じたものであると発言している。
こうしたアサド政権やロシア政府の主張に対して、フランスのF2テレビは、専門家の厳しい意見を伝えている。 今回の犠牲者が広いエリアに及んでいることや、多数の死者や被害者が発生していることを考えると、ロシア政府の主張するように、反政府軍が貯蔵している化学兵器が貯蔵庫の破壊で拡散したとは思えないというのだ。
また、頻繁に攻撃を受けている反政府勢力は、今回使われたような極めて有毒なガスの製造を手がける技術を持ち合わせるいることはあり得ず、「ロシアの主張はまったくな絵空事だ」と述べている。 確かに私のような素人が考えても、我が身を守る防御マスクなど十分な装備がなければ、毒ガスを兵器として使用することは出来ないはずだけに、反政府軍自らがサリンガスを製造し保管していたというロシア政府の発言は納得し難い。
だとすると、ロシア政府が今回のガス兵器問題の実体を知らないはずがないだけに、プーチン大統領はシリア政府軍のやっている残虐な行為を隠していることになり、その責任は大変大きなものとなってくる。 それにしても、人間はこれほどに残虐なことを為すことが出来るものなのか、考えれば考えるほど恐ろしくなってくる。
いずれにしろ、国連を始め、今、国際社会は事の起きた真相を究明することすら出来ない状態にいることを考えると、なんともはや言葉を失ってしまう。 やがて、化学兵器に代わって、核兵器が使用されるときが来るに違いない。 今の世界情勢を見ていると、その時が刻一刻と近づいているように思えてならない。 お互いに明日は我が身となるかもしれないのだ。 その時にはマスクも吸入器も何の役にも立たないことを肝に銘じておく必要がある。
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外で遊んでいた少女は重体、父親は死亡。 残された祖母が2人の孫を看ている。
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これがあなたの子供であり、孫だったらどうする。 そうならないという保証はないのだ。
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目を開いたまま動けなくなってしまった子供
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