中国・急増する高齢者の自殺
 

 


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逆ピラミッド型社会の悲劇

 

 
 


一人の青年を取り囲む両親と5人の高齢者。 まさに逆ピラミッド型の少子高齢化社会の
到来である。 今しばらくしたら、この青年は一人でこれらの親族の面倒を見ることになる。

 

今回は中国の「一人っ子政策」が生んだ悲劇について記すことにする。 上段の写真は、最近、中国のインターネット上で論争を呼んだ、一人の若者が高齢の家族に囲まれたある家族の集合写真である。 真ん中にいる20代の青年の左右と後列に曾祖父母や祖父母、そして両親と思われる4代の家族が写っている。

この写真は「一人っ子政策」によって急速に進んだ少子高齢化社会で、将来、年老いた家族を数人も養っていかなければならない青年の不安やプレッシャーを、一枚に収めたものだとして話題を呼んでいる のだ。 画像は何度も転載され、コメント欄には共産党の「一人っ子政策」についての批判が相次いでいるようである。

1979年に実施された「一人っ子政策」は、昨年1月に廃止されることになったものの、40年近く経った今、多くの家庭で一人っ子の家族構成が定着してしまったため、二人目の子供を持つことに抵抗感を持つ家庭が多くなってしまったようだ。  とくに都会に住む人々は農村部の人々のように、畑仕事を手伝わせる必要がないだけに、子供は一人のほうが 集中して教育を受けさせることができるので良しとされてしまったようである。

こうした40年近く続いた 「一人っ子政策」と、その後も続く「一人っ子が最適」的な考え方が生み出した余波が今、中国社会に大きな問題を生み出しているのだ。 その余波の一つは、両親と双方の祖父母の過保護、過干渉による子供への悪影響である。   最近の一人っ子たち の多くが、「小皇帝」と呼ばれるように、自己中心のわがままな性格を持つようになったことから、さまざまなトラブルが発生し、社会問題となってきている。

それ以上に問題なのが、祖父母たち高齢者の悲劇である。 先日、NHK・BSの「国際報道」で も同じ問題が大きく取り上げられていたが、曾祖父母や祖父母たち高齢者の相次ぐ自殺である。 その件数については触れられていなかったが、NHKで取り上げるくらいだから、自殺の数は相当数に達しているはずである。 

下段に掲載したように、偶然、その場に出くわした人がスマホで撮影したと思われる映像が何枚か放送されていたが、そうした悲惨な場面が映像に撮られるということが、自ら命を絶つという異常な行為がいかに頻繁に発生しているかを示している。


「4−2−1社会」の悲劇

 

 

 
 


今の中国社会は「4−2−1社会」という、逆ピラミッド型の高齢者社会を迎えている。

 


読者は「4−2−1社会」とは何を表しているかお分かりだろうか。  それは、4人の祖父母と2人の父母、そして一人っ子の7人家族を表す用語である。  一人っ子 同士の男女が結婚したら、彼らは年老いた両家の4人の両親の面倒をみることになる。 そしてそこに一人っ子が生まれるのだから、こうした 逆ピラミッド型の「4−2−1」の家族構成が形成されることになる。

両親の世話は子供が見るのは、これまで中国社会において当たり前であった。 ところが、最近はそうしたことが行われなくなってきており、子供に見放されて生活に困窮する高齢者が続出してきているのである。  なにゆえそうなったのか? その要因の一つが、孫の世代に対する教育熱と教育費の高騰である。

これまでは、農村部では5〜6人の子供を持つのは当たり前、だからこそ、14億人(一人っ子政策で籍を持たない人を入れると16億人を超していると言われている) を超す大人口となってきたわけである。  これだけ多くの子どもを持ったら、特別優秀な子供以外は義務教育の終わったところで、教育は打ち切りとなるのが普通であった。 

ところが、一人っ子となったため、一人の子供に集中することができるようになり、都市部、農村部を問わず、多くの家庭が収入の多少に関わらず大学を目指すところ となったのだ。  その結果、教育市場が過熱化し大都市では子供が大学を卒業するまでに、4000万円以上が必要となってしまった。 その結果、多くの家庭が子どもの教育費でアップ ・アップとなり、両方の両親(祖父母)の面倒を見る余裕がなくなってしまったのだ。

 

見放される高齢者

 

 

 
 


生きるすべを失った高齢者の悲惨な姿が、街のあちらこちらで見られるようになってきた。

 


その結果、家族の中で高齢者は邪魔者扱いされ、一部には高齢者の財産を奪おうとする者や家を追い出す者も出てきてしまったのである。  そうなったら、曾祖父母や祖父母は家を出て手持ちのわずかな資金と年金で暮らすしかない。   しかし、中国の年金は我が国のそれとは比較にならないほど低いのだ。

上海などのように都市の財政が豊かなところでも、月に540元 というから日本円でおよそ1万円弱。   内陸部の地方都市ではそれよりさらに低いようなので、ほとんど生活の足しにはならない。 したがって、手持ちの資金にわずかな年金を加えた程度で暮らすことになった高齢者は、粗末な家を借り、食費を切り詰めて暮らしていくことになる。 

しかし、高齢であるがために、さまざまな病気を発病することになるが、その治療費を払えなくなってくる。 頼る親族に見放され、病弱となった高齢者のその先に待ち受けているのは、自らの命を絶つことである。  その結果が 見放された高齢者の自殺の多発化なのである。

一人っ子家庭はこれから先も当分の間続くことは避けられそうもなさそうだ。 政府が突然政策を変えたからといって、定着してしまった一人っ子家庭の考え方をそう簡単に変えることはできないからである。   一方、年金などの社会保障制度を充実することは、2ケタ成長が終わり、6%台の成長率になってきている現在の経済状況をみると、政府の財政が追いつかないことは 明らかである。

そうした現状を考えると、老人の自殺多発問題はこれから先、習近平政権を揺るがす問題として長く続くことになりそうである。  「一人っ子政策」で男の子 を出産する家庭が多くなったことによって発生したいびつな男女人口比によって、2020年には3000万人〜3500万人の男性が結婚することができなくなると言われている。 これは男性にとっては 人権が無視された大きな悲劇である。

単なる男性の結婚難だけでなく、女性・子供の誘拐や人身売買、性犯罪などの社会問題を引き起こしていることも事実である。 さらに恐ろしいのは、「一人っ子政策」を堅持するために、 この世に誕生するはずの数億人の子供の命が絶たれたことである。

そうしたことを考えると、長きにわたって中国政府が進めてきた「一人っ子政策」は中国社会に巨大なカルマを産んだことは間違いない。   どうやら、中国はこれから先、大きな「罪と罰」を背負って、カルマの刈り取りという厳しい試練に遭遇ことになりそうである。
 

 

 
 


飛び降りようとする高齢者に駆け寄る女性
 

 
 

 
 


川で自殺しようとした高齢者を救助しようとする男性。

この女性は夫に先立たれた後、息子に見捨てられうつ病状態になっていたようである。

 





 

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