覇権国家からの撤退が始まった
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得意げにパリ協定からの脱退を表明するトランプ大統領。
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昨日から今日にかけて世界各国のマスコミは米国の地球温暖化対策の国際ルールである 「パリ協定」
からの脱退をトップニュースで伝えている。 これはトランプ大統領が選挙公約で掲げてきたもので、先のG7首脳会議でもそうした意向を伝えてきていただけに、驚くまでもないことだが、それでもやはり世界に与えたショックは大きかったようだ。
中国に次いで世界第2位の温室効果ガスの排出国である上に、2015年12月に中国とともにパリ協定に調印を済ませて来ていたことを考えれば、その衝撃は大きくて当たり前である。 これに伴い、米国はこれから先、オバマ前政権が掲げた「2025年までに26〜28%削減する」という約束は反故にし、「緑の気候基金」への拠出も即座に停止することになる。
トランプ大統領の発表を受けて、ホワイトハウス前では早々に反対の抗議デモが始まっている。 また、ドイツやフランス、イタリア、カナダの首脳からは、早々にトランプ大統領に「落胆した」「残念である」旨の電話が寄せられたようである。
地球温暖化対策の影に原子力産業を進めようとする輩たちの思惑がうごめいていることは確かであるが、また、急激に進んでいる温暖化が二酸化炭素の増加だけによるものでなく、宇宙から注がれてきているエネルギーの急増の方がむしろ影響が多いのだが、二酸化炭素削減を行うこと自体は決して無益なことではない。むしろ積極的に進めるべきことである。 だからこそ、世界はショックを受けているのだ。
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早速、ホワイトハウス前では抗議の集会が開かれた。
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なんといっても今回のトランプ大統領の決定に対する大きなショックは、脱退の理由が米国の利益、つまり国内の雇用や経済的コストを優先することにあった点である。 米国の自然災害のニュースを長年書き続けてきている私の眼か見ると、米国は温暖化がもたらす「記録的な自然災害」の悪影響をもろに受けているだけに、今回の協定離脱は信じられない行為であった。
米国は将来の覇権国家を狙う中国に対して、経済的な対抗策としてTPP交渉を進めてきた。 ところが、参加予定国の間で妥結にこぎつけたその協定を、トランプ大統領は破棄し中国を喜ばせるところとなった。 そしてその矢先、今度はパリ協定を一方的に破棄することで、またまた、中国をほくそ笑ませることとなった。
案の定、パリ協定の推進にEUと中国が協調し合って進めていこうとする動きが始まった。 今ヨーロッパを訪問中の中国の李克強首相は「中国は約束は守る」と声高らかに宣言し、各国首相と手を携えて推進していくことを強調している。 まさに中国にとって「思うツボ」、「笑いが止まらない」
ところである。
こうしていま米国は、世界の覇権国から自ら身を退こうとしているのだ。 自国中心主義を唱え、世界とともにある立場から退去しようとする国が、世界が認める覇権国家としてあり続けることは不可能だ。 それは単なる大国でしかない。 2000年前ローマ帝国が歩んだ道を今米国は歩み始めているのだ。
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ドイツ、イギリス、イタリア、カナダの各首脳から厳しい非難が発表された
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