国際社会が懸念する中、北朝鮮は昨日新型の中距離弾道ミサイルの実験を行った。 30分間にわたって800キロを飛行し、日本海に落下。 今回は飛行距離を抑えるために発射角度を通常より上げて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」を行ったため、高度は初めて2000キロに達したようである。
北朝鮮はアメリカ大陸に届く大陸間長距離ミサイルの開発を推し進めているが、今回の実験を見ると、開発は着実に進んでいることは間違いないようだ。 長い射程距離が確保できるようになれば、我が国や韓国を攻撃する際には、今回のように「ロフテッド軌道」で打ち上げることが可能となり、その場合にはミサイルの落下速度が速くなるため、迎撃が一段と難しくなってくる。
これから先、長距離ミサイルが開発され、ミサイルと弾頭の保有数が多くなれば、隣国はもはや発射される全てのミサイルを迎撃することは不可能になってくる。 つまり、もしも金正恩が気が動転して我が身保全のために、発射スイッチを押すことになったら、韓国はもちろん我が国も中国も、全ての爆撃からは逃れることが出来ないということになる。
国際社会はたかが小国家・北朝鮮、30才の若輩者(じゃくはいもの)に何が出来るかと、高を括(くく)っていたが、現実はとんでもない状況に立ち至っていたというわけだ。 金正恩としてはトランプ政権の圧力には屈しない姿勢を見せると同時に、ミサイル技術が着実に進んでいることを世界に見せしめようとしたのだろうが、その効果は十分にあったようだ。
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ミサイルの隊列は近隣諸国を威圧する
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習近平政権にも反旗
私が気になったのは、今回のミサイル発射実験が行われたタイミングである。 というのは、実験の行われた昨日は、北京では中国が主導するアジア、中東、欧州を結ぶ「シルクロード経済圏・一帯一路」の初の国際会議の開催初日であったからである。
この一帯一路構想は習近平主席が最も重要視し政策の柱に据えているもので、今回の会議は中国政府が威信をかけて主催したものである。 それだけに、そんな重要会議が開催される日の早朝に実施されたミサイル実験は、まさに習近平のメンツをつぶすと同時に、中国政府に楯突く行為でもあった。
トランプ大統領はシリアへのミサイル攻撃と時を同じくして、北朝鮮への圧力を誇示したものの、いつの間にか尻切れトンボになってしまって、何ら具体的な行動を行うことなく静かになってしまっている。 それとは逆にトランプ政権にせがまれて、北朝鮮に自制を求めて反発をかってしまった習近平政権は、米国に代わって窮地に立たされることになってしまったようある。
大国・アメリカに立ち向かう一方で、友好国であったはずの隣国・中国にまで牙をむく金正恩という男は、どうやら想像以上にしたたかな人物である様だ。 それにしても、核やミサイル開発の資金源となっている中国に反旗をひるがえして、北朝鮮はこれから先、どうやって資金繰りを確保していこうとしているのだろうか? また国際社会を敵にまわして、ここまでやり遂げる金正恩という人物は、一体いかなる人物であるのだろうか?
そうした点について、次回から2回にわたって「北朝鮮特集」掲載しようと思っている。
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