大規模なテロや政治の混乱が続く英国で、今回は多数の死者が出る前代未聞の高層住宅の全焼火災。 国民の動揺が広がっている。
発生した場所はロンドン西部。 14日深夜12時から1時にかけ、24階建の高層住宅・グレンフェルタワーから出火。 1階から24階まで火は瞬く間に燃え広がり、わずか30分ほどで全焼。 確認されているだけで12人が死亡。 ビル内にとりj残された住民がいるようなので、死者の数はさらに多くなるものと思われる。
延焼のスピードが速かったのと、火災警報器の音が小さかったことが死者の数を多くしているよう。 イギリスBBCニュースは、高層階に住む住民はシーツを使って降りようとしたものの、そのシーツに火がついて落下する人や、24階の最上階から着衣に火がついたついたまま飛び落ちる人、また消防隊員に声をかけて幼い子供を投げ落とす人など、なんとも悲惨な状況を伝えている。
ロンドン西部は豊かな人と貧しい人が隣り合わせで暮らしている地域で、今回火災が発生した地域は最も貧しい人々が住んでいる地域であるようだ。 私がショックを受けたのは、今回被災した高層住宅は貧しい住民の住む建物で、すでに築43年が経過しており、以前から何度も何度も防災面での安全性に問題があるとされて、ビルを管理する住宅管理会社に改善を申し出ていたものの、改修がなされないまま放置されてきていたという点である。
21世紀において、世界で最もきびしいと言われる防災対策が定められた英国において、今回のような悲惨な事故が発生したことはには、何か深い意味が隠されているように思われる。 そのひとつはこれまで隠されていた英国の格差社会の実体が示されたこと。 いまひとつは、連続するテロやEUからの離脱に伴う政治の混乱と併せて考えれば、かつての覇権国家の衰退のスピードが速まっていることの啓示であるようだ。
米国では下院議員ら数人が銃撃される
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共和党議員に対する銃の乱射事件が発生したワシントン (ドイツZDF)
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英国で国家衰退の兆候を示す悲惨な火災事故が発生した14日、 米国では恒例となっている共和党と民主党議員による野球の親善試合に備えて、、ワシントン近郊の野球場で共和党の議員が練習をしていたところ、ライフルを持った男が現れ、議員らをめがけて60〜100発を連射、5人が負傷する事件が発生している。
犯人は60歳代の白人で、犯行前に、今練習しているのは共和党儀委員か民主党議員か尋ね、共和党議員であることを確認した後に犯行に及んだというから、共和党憎しによる犯行であったことは間違いないようだ。
アメリカではIS(イスラム国)やイスラム過激派によるテロは発生していないものの、銃撃事件が多発し年に数千人の死者が出ている。 そうした中で今回はトランプ大統領憎し、共和党憎しの恨み心が議員の狙撃事件となったというわけだ。 トランプ政権の樹立がいかに国を二分するところとなり、アメリカ社会に憎しみの世界を蔓延させつつあるかを示す事件であった。
かつての覇権国家英国が衰退の兆候を見せているのと同様、米国も完全にそうした状況に陥ってしまったようだ。 トランプ政権のロシア疑惑が次々と取りざたされ、コミー前FBI長官やセッションズ司法長官の議会証言が行われているが、また新たに首都ワシントンとメリーランド州の司法長官がトランプ大統領を相手取り、「報酬条項」に関する憲法違反で提訴する方針が伝えられている。 各国の首脳陣の訪米に際し、トランプホテルを宿泊先にしていることに関する疑惑である。
「闇の世界」の分裂がもたらしている米国の混乱は、これから先、ますます激しさを増していくことになりそうである。 まさに我々はかつてと現在の世界の覇権国家の衰退が粛々と進んでいる姿を見せられているようである。
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