米国のティラーソン国務長官はG7外相会議を終えた後12日ロシアを訪問、ラブロフ外相、プーチン大統領と会談した。 その結果は予想されていた通り、互いに自己主張を繰り返しただけで何ら合意点は見出せず、実りなき結果に終わったようだ。
会談時間は5時間に及んだというから、かなり激しい議論が交わされたものと思われる。 その中で論戦が戦わされた主要な議題は、シリアの化学兵器の使用を巡る問題であったことは言うまでもないことだが、北朝鮮の核実験やミサイル実験問題に関しても話し合われたようである。
シリアの化学兵器問題については、ティラーソン国務長官「シリア政府軍によって計画、指示、実行されたもの」と主張。 これに対してラブロフ外相は「ロシアとしてはシリア政府軍による攻撃の証拠は一切目にしていない。 航空機が飛び立ったときの映像や目撃者の話などから、化学物質を積載した兆候は全くなかった」と米国側の主張を全面否定。
アサド政権に関しても、ティラーソン国務長官は「アサド大統領は正真正銘の悪、アサド一家による統治は終わりが近づいている」と厳しい発言しているが、一方、ラブロフ外相は「これまで通りロシア政府はアサド政権を支持する」と表明。 話はまったくかみ合わないまま会談は終了したようである。
まさに狸とキツネの化かし合い合戦である。 いずれにしろ真実は一つ。 神ならぬ身の我々には時の経過した後でなければことの真相は分からないが、はっきりしていることは2点。 一つは被害に遭遇しもだえ苦しみ、死に至った子供を含めた多くの市民がいたという事実。 もう一点は、ロシアにとってシリアは中東で唯一、空軍と海軍の拠点を持つ重要な戦略地域であるという点である。
ユダヤの預言で伝えられているように、世界最終戦争となるハルマゲドンでロシアがイスラエルに侵攻することになるなら、シリアはまさにその拠点となるだけに、シリア政権は親ロシアでなければならず、そのためには、ロシア政府はアサド政権の退陣は絶対に受け入れるわけにはいかないと言うことになる。
唯一、プーチン政権とトランプ政権が一致しているのは、IS(イスラム国)撲滅であるが、この点も、シリアやイラクなど中東諸国を分裂させ弱体化するために、ISなるテロ軍団を産み出したのがイスラエルであるとするならば、親イスラエル寄りのトランプ政権がどこまでロシアと手を組んでIS作戦を進めていくかは、はなはだ不透明である。 いつかこの問題も紛争の火種となるに違いない。
次なる発火点は北朝鮮問題
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急遽行われた米中首脳の電話会談
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親ロシア寄りとして誕生したトランプ政権であるが、どうやら政権誕生早々からの動きを見ていると、これから先、米露対立はむしろ深まる方向に向かうことになりそうである。 現に、プーチン大統領は、外相同士の対談中に放送されたロシアテレビで、米ソ両国の信頼関係、特に軍事面では改善しておらず、むしろ悪化している」と述べている。 その両国間の軍事面での次なる衝突の発火点となる可能性が高いのは、北朝鮮問題である。
驚くことに6日と7日に首脳会談をしたばかりの中国の習近平主席が、昨日12日、トランプ大統領と電話会談をしたことが明らかとなった。 もちろんその主要議題は北朝鮮問題であったようだが、首脳会談を終えた直後に再び電話会談するなど前例がない上に、それをあの中国政府が国営テレビを通じて公表したという点もなんとも奇妙なことである。
恐らく習近平主席は先の会談では伝えられなかった、北朝鮮への石油の輸出などの制裁の決意を伝え、米国に対してシリアに対するのと同様な武力行使は実行しないで欲しいと要請したものと思われる。 先日、韓国の朝鮮日報が「中国軍が北朝鮮との国境沿いに15万人に登る兵士を終結させている」という記事を掲載しているようなので、その点を米国に伝えた可能性もある。
いずれにしろ、この5年間で3回の核実験と40発の弾道ミサイルの発射を実行しているキムジョンウン(金正恩)主席が、祖父の生誕105周年記念式典などを機に、更なる核実験を実行する可能性が高いだけに、中国政府がその反動を心配していることは確かなようだ。
米国は今や対北朝鮮戦略として迎撃ミサイル・サード(THAAD)の韓国への配備を実行に移そうとしており、また北朝鮮を威嚇するために原子力空母・カールビンソンを韓国沿岸に向かわしている。 こうした行為は中国にとって決して好ましいことでないことは確か。
しかし、最近こうした行為に対する中国政府の反発的発言を耳にしなくなった点を考えると、どうやら先のシリアへのミサイル発射を見て、今のトランプ政権は何をするか分からないと、中国政府が警戒し米国を刺激しないようにしている可能性は大きそうだ。 その結果、北朝鮮の行動に対して今まで以上に強く釘を刺そうとしているのかもしれない。
いずれにしろこれから先、北朝鮮の行動はロシアや中国と米国との間に紛争を引き起こす可能性があるだけに、注目しておく必要がありそうだ。
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韓国沿岸へと向かう原子力空母・カールビンソン
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韓国へ配備されようとしている迎撃ミサイル・サード(THAAD)。
米国と韓国に対して強い反撥を見せていた中国政府はここに来て急遽、沈黙してしまった。 |
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追記
★ 前回の記事「頻度を増す一方のテロ」で、ロシアにおけるテロの記載を見落としてしまいましたので、追記記事を掲載しておきました。 なお、現地時間の12日には、ドイツのドルトムントで起きたサッカーの選手団を載せたバスに対するテロも発生しており、それを加えると、3週間で5件のテロとなり、テロの頻度が一段と増していることが一段と鮮明になって来ているようである。
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