今年3月にトランプ政権が発動した異例の輸入制限。 米国に輸入される鉄鋼やアルミニウムに25%と10%の高い課税を課すもので、その対象はEUやカナダ、メキシコなどを除くすべての国であった。 ところが、昨日、期限付きで適用外とされてきたEU、カナダ、メキシコにも6月1日から課税することを発表。 EU諸国には衝撃が走った。
これに対してEUは直ちに反発、ユンケル委員長は「米国における一方的な関税は正当化できず、WTO(世界貿易機関)のルールにも反する行為で、純粋な保護主義に基づくものである」として、米国に対して100以上の製品に報復関税をかけることを発表。
こうした自国の利益を優先したトランプ大統領の政策は、相手が同盟国であろうがお構いなし。 こんなことをこれから先続けて行くようなら、同盟関係はうすれていくことは必至。自国にとって都合のよいことは手を結ぶが、不利益なことは容赦なく一方的に断ち切る。
この手法はまさに不動産屋のやり方以外の何物でもない。 自分さえよければ、カネさえ手に入れば、今さえよければ、これでは国家を導くことは出来ない。 もしも、これから先もこんな考えで覇権国家たる米国を牽引していくようなら、すべての面で国家間の協調関係は断ち切られてしまう。 米国国民もこんな大統領を選び、支持し続けているのだから残念なことだ。
今朝のニュースは更なる驚きの情報を伝えている。 米国が中国にも知的財産を理由に輸入品500億ドル(5.5兆円)分に25%の関税を上乗せする案を、6月15日までに品目を確定し発動すると発表。 その課税額は1兆1000億と巨大な額となる。 中国との間で妥協点を探っていたはずだけに、驚きの発表である
。 これでまた、米中間の関係悪化は一段と進みそうである。
こうした自国優先の度を越した保護主義は各国間の協調路線をないがしろにし、大切な信頼感が消えてしまうことになる。 これから先、こうした考えが世界に蔓延することになるようなら、その先に見えるのは「対立」であり、[争い」であり、やがてそれは世界を「戦場」へと導いていくことになる。
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EUは米国に対して100以上の製品に報復関税をかけることを発表。
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イタリア、スペインの混乱、世界に波及
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混乱し始めた世界情勢を受けて、EU市場だけでなく世界の株式市場が混乱し始めた。
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米国からの関税に揺れているEUでは、一方で、イタリア政治の混乱が政局や金融市場を揺らし始めている。 3月の選挙でEU懐疑派の政党「五つ星運動」と[同盟」が躍進し、連立政権を組むことになったものの、選んだ首相候補をマッタレッタ大統領が拒否、このままでは組閣が出来ないまま政治空白が続き、秋に再び選挙を行うことになりそうである。
政治面や経済面で安定しているドイツでも総選挙の後、連立政権が成立せず、5か月ほど政治空白が続いたが、今回のイタリアは、巨額の政府債務を抱えているため、ドイツのような悠長なことは言っておれないのである。
政局の行方は見通しが立たないが、もしも、これから先、EUからの離脱やユーロからの離脱を求める政党が主導権を取るようなら、イタリアの国債は下落しギリシャの財政危機以上の危機に陥る可能性もある。
一方、同じ借金国・スペインもラホイ首相率いる政権が大規模な汚職事件を受けて、苦境に立たされており、政権転覆の可能性が大きくなって来ている。 スペインはカタルーニャ州の独立問題で混乱が続いて来ているだけに、もしも野党政権が誕生するようなことになったら、政局はさらに不安定化し、財政悪化に火が付つことになるかもしれない。 そうなったら、スペインもまたギリシャの後を追うことになってしまう。
こうして今EUは英国が離脱した後、ドイツとフランスの力で何とか団結を保っているが、両国に次ぐ地位にあるイタリアやスペインにEU懐疑派の政権が誕生し、EU離脱に向けての動きが加速化するような状況になったら、「ユーロ安」と「欧州の株安」が進むだけでなく、EU解体、ユーロ崩壊の可能性も出てくることになりかねない。
まさに世界は日に日に不安定化し、いつ紛争が起きようが、経済の崩壊が起きようが不思議でない状況に陥っているのである。