生徒ら17人が犠牲になった米国フロリダ州の高校での銃乱射事件。 こうした悲惨な事件はもはや米国では日常茶飯事と化して来ている。 ヤクザによる銃撃事件以外、めったに目にすることのない我々日本人には衝撃的な事件であるが、それを止める手段が今の米国には無きに等しいというのだから、恐ろしいことである。
悲劇を無くすには銃規制しか方法はない。しかし、銃の乱射事件が起きるたびに銃規制を求める声が上がる一方で、銃の所持は自衛のため必要だという意見がわきあがり、世論は二分されたまま今日に至っている。
そして、既に何億丁もの銃が市民の手に渡っており、今年に入ってわずか1ヶ月半で銃によって亡くなった人の数は5300人を超しているのである。 なんともはや驚きの数値であるが、こうした状況が加速するようなら、米国
の国民はこれから先、巨大な自然災害だけでなく、銃による悲惨な事件を日常的に体験することになるかもしれない。
銃乱射事件のあと17日、フロリダでは事件に遭遇した高校生らが参加して、銃規制を求める大規模なデモが行われた。 その中で、事件で友人を失ったエマ・ゴンザレスさんという女子生徒が、涙ながらに語った銃規制の訴えが全米で話題になっている。 大統領に向かって「
恥を知れ!」と発言する彼女の訴えをテレビで聞いて、私もその迫力と内容の凄さに、しばし呆然としてしまった。
次は彼女の発言のポイントである。
「自動小銃の購入より週末に友人との計画を立てる方が難しいなんて、訳が分からない。 私たちが銃乱射事件の最後にならなければならない。法律を変えないといけない」。 こう訴えたゴンザレスさんは更に厳しい言葉を発した。
「もし大統領が私のところに来て悲劇だが何の対策も講じないというのなら、私は大統領に対して、全米ライフル協会から幾ら献金をもらったのか尋ねます。 でも、私は既にその答えを知っています。
3000万ドル(32億円)です。」
「この値段をことし起きた銃の犠牲者の数で割れば、一人の命は5800ドル(60万円)です。犠牲者の値段はこんなものなのでしょうか。もし何も対策を講じないのなら、犠牲者はさらに増え、命の値段も下がり私たちが価値のないものになります。全米ライフル協会から献金をもらっている政治家たちよ恥を知りなさい!」。
なんともはや凄いメッセージである。 まさに全米の多くの政治家が一瞬身を震わせたのではなかろうか。 彼らの多くが様々な企業などから得た献金に
振り回されて、政局に携わっているからである。
最新のウォールストリートジャーナル紙は、今回のゴンザレスさんの発言を聞いた全米各地の高校生らが、向こう数週間から数カ月内に抗議のデモや学校ストライキを行う計画を立てていることを伝えている。
高校生のストライキなど我が国ではあり得ないことである。
また20日には、被害にあった高校の生徒たちがバスで州都に向かい、そのあとホワイトハウスで大統領に会って、今回のような事件を防ぐため、いかなる対策を考えているのかを聞こうとしているようである。 若者たちのこうした動きは全米でもこれまでになかっただけに、注目されている。
しかし、抜本的な銃規制に関しては世論は2分されており、「ネバーアゲイン」を叫ぶゴンザレスさんたち生徒の訴え
が、実を結ぶことは難しそうである。それは、デモの行われた同じ日に、フロリダで銃や実弾を販売する大規模なイベントが開催され、そこには多くの人々が訪れていることが如実に物語っている。
また、「恥を知れ!」とののしられたトランプ大統領自身、「オバマは民主党政権時代に、銃規制をなぜ議会で可決しなかったのか」と圧力の矛先を他人に向け、銃規制について
は一切触れていなかったことも、銃規制の難しさを示している。
オバマ前政権が成し遂げられなかったら、自身がやればよいではないか。 何もかも他人のせいにするトランプ流の最低のコメントに「恥を知れ! 愚か者よ!」と言ってやりたくなって来る。 トランプという男がやっていることは「米国第一主義」ではなく、「金と地位第一主義」である。
金と地位のためなら何の躊躇もなく、心を売る、魂を売る、何とも情けないことである。