揺れ始めたEUの未来
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ドイツ政治の不安定化

 
 

 
 


ドイツでの大連立政権誕生で5カ月余りに及んだ政治空白が
解消されたが、メルケル首相の支持率低下が不安を呼んでいる。
ドイツの政界の行方はこれから先、EUを揺さぶることになるかもしれない。

 
 

中東情勢に関する先行き不透明感が強まって来ていることについて は、既に記している通りである。 実は同じように 先行きに対する不安感が増して来ているのがヨーロッパであり、EU(欧州連合)である。 その元凶となっているのがヨーロッパやEUのかなめ的存在であるドイツの政局の 不安定化である。

ドイツでは9月に連邦議会選挙が行われた結果、メルケル首相の率いる中道右派キリスト教民主同盟(CDU)が第1党となったものの、議会の過半数350議席を得ることが出来なかったため、 社会民主党(SPD)や自由民主党(FDP)、緑の党などと連立を組むための交渉が続いていた。

しかし、難民政策や環境政策などで折り合いがつかず、なんと5ヶ月間にわたって内閣を組むことが出来ないまま、今日に至るという異常な 政治空白が続いていた。 ドイツは過去数十年間で最も深刻な政治的危機に陥っていたのである。

そうした中、一昨日、ようやく第2党の社会民主党(SPD)と連立を組むことが決まり、第4次メルケル内閣が誕生することとなった。 しかし、重要な閣僚ポストを社会民主党(SPD)に譲ったことで党内 から反発が出ていることや、長期政権に飽きた党員も出てきていることから、メルケル首相の党内における支持率は当初の80%から50%へと急落。

そのため、英国との離脱交渉を進める上で指導力を期待されているドイツの力が弱まるのではないかと、ドイツ国内だけでなくEU諸国からも心配の声が上がっている。

 

EUに火種、イタリア総選挙

 
 

 
 


23%
 

37%

33%

 
 

一方、イタリアで行われた5年に一度の議会選挙の結果もまた、EU(欧州連合)にとって、新たな火種をまくこととなった。 反EU・反移民に支持が半数以上に達したからである。 EU寄りの政策を行ってきたレンツィ首相率いる現政権の「中道左派連合」は敗退し、政党別でトップに立ったのは反移民を掲げる「五つ星運動」で、党派別で最大勢力となったのは反EUを唱える「中道右派政党」。 

単独で過半数の勢力はないため、これから先、各党派は連立協議に入ることになるわけだが、連合の中でも意見が食い違う面もあり、連立交渉は時間を要することになりそうである。 もしかするとドイツと同様数ヶ月を要する可能性もあり、政治空白が長引くことになるかもしれない。

なにしろ多額の債務を抱えるイタリアであるだけに、政治空白が長引けば世界経済にとって新たな懸念材料となり、ギリシャ危機に代わってイタリア危機を生むことになるかもしれない。 また、いかなる連立政権が誕生するにしろ、反EU、反移民を柱に掲げることは必至だけに、EUが新たな不安定要因を抱えることなるのは間違いない。

これまでEUの中核をなしてきた主要4カ国の内英国が離脱し、残りのドイツ、フランス、イタリアの中で、けん引役を期待されているドイツのメルケル首相の立場が弱体化することが予想される上に、イタリアがEUに新たな火種を持ち込むようなら、EUの将来が一段と厳しさを増すことは間違いない。

トランプ大統領の出現で世界が混乱し始めて来ている時だけに、EUの結束力の弱体化はヨーロッパだけでなく、世界の政治を不安定化に向かわせ、戦争の火種をまくことになる可能性が大きいだけに要注意である。

 

 


政党別でトップになった「5つ星運動」
ディマイオ党首

 


党派として第1党となった中道右派連合
の同盟党のサルビーニ党首




 

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