国際社会から見捨てられたイエメンの惨状
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報道のとん挫がもたらした悲劇

 
 

 
 


極度の栄養不良で生まれたイブラヒムちゃんは、
その後体調を回復しているのだろうか。

 
 

シリアでは地獄と化したアレッポでの戦闘が収まり一安心したのもつかの間、首都・ダマスカスの近郊・東グータ地区と、北部のクルド人が住むアフリンで新たな戦闘が始まり、毎日のようにその惨状が伝えられている。 東グータ地区での民間人の死者の数は、3月5日の「1週間を振り返る」では700人とお伝えしたが、昨日のニュースでは1000人を超えたことが伝えれている。

一方、シリアやイラクより遥かに地獄と化し、悲惨な状況に陥っている国がある。 しかし、その後の状況が伝えられないため国際社会から忘れられ、支援が止まってしまっている国があるのだ。 その一つがアラビア半島南端のイエメンである。 アラブ諸国の中で最貧国として知られているイエメン、そこで3年前から始まったのが、サウジアラビアが支援する政府軍とイランが支援する反政府軍との内戦である。

内戦の悲惨な状況については、「宗教間対立がもたらしたイエメンの惨状」「さらに拡大するイエメンのコレラ」でお伝えして来ているので、読者も ご承知のはずである。 実は、その後も内戦は一向に止むことなく続いており、国際的な支援が行き届かないため、その悲惨な状況は さらにその度合いを増して来ているのである。

アレッポや東グーダ地域で戦闘に巻き込まれているのは何十万人単位であるが、今イエメンは国全体が戦闘地区と化しているため、1800万人が飢えに苦しみ、300万人が内戦やコレラから逃れるため避難する悲劇的な状況と化しているのだ。

しかし、シリアやイラクの紛争が報道され国際社会の注目を集める一方で、イエメンの危機は陰に隠れてしまって この半年間ほとんど報道が為されない状況が続いている。 そのため、国際社会から忘れ去られた状況となっており、約束された資金援助のうち、実際に供与された額は半分に満たない 状況と化しているのである。

 
 

 
 


簡易シェルターで暮らす8人の子供の母親
人口2700万人の3分の2に当たる1800万人が
いま生き乗るために外からの支援に依存している。

 

国連のイエメン担当官マクゴールドリック氏は、「政治的側面が人道の側面を凌駕(りょうが)してしまった。 人道はもう機能していない。 世界はイエメンの状況に対して、見て見ぬふりをしている。  この危機に対応するにもあまりに何もかもが不足していて、ありえない状態だ」と、国際社会の反応について強い憤りを発している。

偏(かたよ)りについては国際社会の目だけではなく、報道面においても見られる。 シリアの東グーダ地区の惨状については各国の報道機関がその様子を伝えており、国連もなんとか支援物資を届けようとしているが、イエメンについてはここ 半年以上にわたってほとんど報道されることが無くなっている。 その理由はよくわからないが、政府側と反政府側の攻撃がところ構わず行われているため、報道陣が取材できないためではないかと思われる。

先日、ドイツZDF局がアラブ海に面した南岸のアデンと呼ばれる街の周辺の状況をレポートしていたが、内陸部には危険で入れないことを伝えていた。 内陸部は内戦だけでなくアルカイダやIS(イスラム国)のテロ組織も加わり、まともな市民生活が送れない状況に 陥っているようである。

この悲惨なイエメンの内戦はスンニ派とシーア派との宗派間対立が原因である。 宗教間の争いだけでなく、同じイスラム 教徒同士による宗派間対立によって何百万人、何千万人の人間を不幸にしているのだから、宗教ほど恐ろしいものはない。 教祖ムハンマドも嘆き悲しんでいることだろう。

イエメンの現在の惨状を知って頂くために、ドイツのZDF局のニュースが伝えた映像を何枚か添付させて頂いたので、読者におかれては、世界で最も逼迫した人道危機に陥っているイエメンの惨状を頭に入れておいて頂けたら幸いである。  

また私が中東の内戦情勢や米国の自然災害の記事を、繰り返し、繰り返し書き続けているのは、読者にそうした状況が今もなお続いていることを知っておいて頂きたいためである 。 この点はぜひ理解しておいて頂きたい。

 

取材班が見た道中の惨状

 
 

 
 

 

武装兵に守られてアデンの町からラヒデッシュ州に入った報道班が見たものは破壊された橋や放棄された戦車。 公共の建物や学校などのインフラはほぼすべて破壊され焼かれてしまっていた。 道路には100万個の地雷が埋まっており、住民はもはや畑を耕したり放牧することは出来ず、残された道は避難することだけだ。

 

 
 

 
 


 

 
 

 
 


 

 
 

 
 
 

難民キャンプの悲惨な状況

 
 
 

 
 


難民キャンプで支援活動を行っている国連の難民高等弁務官事務所の女性は、「今イエメンの経済は崩壊しインフラは全く機能せず、世界で最も逼迫した人道危機の状態にある」、「支援のための資金が逼迫しており、今あるのは必要な資金のわずか4%に過ぎない」と語っている。
 

 
 

 
 


 

 
 

 
 


 

 
 

 
 


 

 
 

 
 


「夜中に子供や孫が寝ている所に砲弾が撃ち込まれ、2人が即死、重傷を負った子供たち4人は治療を受けられずにいる」、「何の罪もない子供がそんな目に合わなければならないのか」と涙ながらに語る母親。 今イエメンの人々は、我が国のような平和な国に住んでいたら、決して体験することのない悲劇を味わっているのだ。

 

 




 

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