パレスチナに対する支援金を削減
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一段と対立感が深まったトランプ大統領とアッバス議長 |
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米国によるエルサレムのイスラエル首都認定後、パレスチナのアッパス議長と米国のトランプ大統領との間の確執が次第に高まってきている。 その要因の一つが、米国のパレスチナに対する支援金の削減の動きである。
エルサレム首都承認に強く反発し、もはや米国には和平協議を主催する資格がなくなったとするパレスチナのアッパス議長に対して、トランプ大統領は「米国はパレスチナに毎年何億ドルも支払っているが、感謝も尊敬もされていない」と批判し、パレスチナに対する支援の
削減もしくは凍結を示唆。
その後、我が国のマスコミではあまり大きく取り上げていないので、ご存じない方もおられるかと思うが、米ニュースサイト「アクシオス」は
外交関係者の話として、米政府が正式に国連パレスチナ難民救済事業機関に対する1億2500万ドル(約141億円)の拠出を凍結したことを伝えている。
これは1月に拠出することになっていた資金である。 また併せてトランプ大統領が今回の凍結分のみならず、最大1億8000万ドル(約203億円)の拠出金の削減を検討していることも伝えている。
将来の自国の首都にしようとしているエルサレムをイスラエルの首都と認定された上に、これまで続けて来た難民に対する救済金を削減されては、パレスチナにとっては踏んだり蹴ったりである。
米国の支援凍結の示唆を巡り、既にアッパス議長は「エルサレムはパレスチナ国家の永遠の首都であり、金で売り渡すものではない」と語っており、支援凍結がはっきりした時には強い反発は必至である。 エルサレムを巡る首都認定問題はパレスチナ国家の存続にかかわる問題だけに、あからさまに金の力を使って揺さぶりを掛けるトランプ流のやり方は、国際社会からも蔑まされことになり、覇権国家としては決して褒められる行為ではない。
ペンス副大統領のイスラエル訪問
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イスラエルを訪問することになった米国のペンス副大統領。
ネタニヤフ首相との会談やイスラエル議会での発言に注目。
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パレスチナとイスラエル問題がこうした厳しい情勢下にある中、米国政府は8日、マイク・ペンス副大統領が22日から23日にかけて、イスラエルを含む中東を
歴訪することを発表。 イスラエルではネタニヤフ首相と会談し議会で演説する他、エルサレムにあるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」も訪問することになる。
今回の副大統領のイスラエル訪問は当初12月20日を予定していたのだが、国連での米国非難決議などの動きを考慮して延期されていたものであ。 この訪問に関しては、「因果は巡る米国の惨状」で
もお伝えしたように、ネタニヤフ首相との会談やイスラエル議会での発言内容によっては、パレスチナ側の反発に火をつけかねないだけに要注意である。
先月、国連の緊急特別総会で「米国のエルサレム首都認定は無効で撤回すべきである」とする決議案が128カ国の絶対的多数の賛成によって承認されたことは、ご承知の通りであるが、この決議には拘束力はないため、米国が首都認定を撤回することはないまま、今日に至っている。
そして、それに対する交際社会からの反発も、肝心な中東諸国の中に、米国からの資金援助を受けているエジプトのような国や、サウジアラビアやイランなど国内問題で手一杯の国々も多いため、
私が「米国、エルサレムの首都を正式承認」で予想した通り、反米や反イスラエルの大きなうねりは起きていない
。 しかし、決して問題が鎮静化したわけでないことは確かである。
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「嘆きの壁」の前で祈るユダヤ教徒。
トランプ大統領に続いて、副大統領もまた壁の前で祈りを捧げることになるのだ。
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そうした状況下で行われようとしているペンス副大統領のイスラエル訪問は、一歩間違えるとパレスチナ側からの強い反発を招く可能性を帯びている。 私が懸念しているのは、ペンス副大統領
はキリスト教右派の福音派に所属しており、イスラエルに対する強い擁護者であるという点である。
福音派はキリスト教徒であるものの、ユダヤ人によるイスラエル統治を長い間支援して来ており、今回のトランプ大統領のエルサレム首都承認をもろ手を挙げて賛成している教派である。 そして、ペンス副大統領は、トランプ大統領のエルサレムの首都承認を裏から支えた第一人者でもあった。
それだけに、ネタニヤフ首相との会談や議会での演説で、パレスチナ側を刺激するような発言が出ることになりはしないか
、懸念されるところである。 それともう一点気になる点はトランプ大統領と同様、エルサレムにあるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」の訪問を予定していることである。
これまではイスラエル訪問に際し、大統領や副大統領による「嘆きの壁」の訪問は全く行われて来ていなかった。 それは「嘆きの壁」の上には、イスラム教徒の
聖地・岩のドームが建つ「神殿の丘」があるため、「嘆きの壁」だけしか立ち寄らないことは、イスラム教徒に対する礼儀を欠くことになるからである。
それが、今回は大統領だけでなく副大統領までが、その地に立つことになるわけであるから、パレスチナ人からの米国に対する反発は一段と強まり、投石などの抗議行動が発生する可能性が大きそうだ。 既にこれまでの抗議行動でパレスチナ人の犠牲者は、ガザ地区に住む若者などを中心に20名を超えているだけに、これ以上の犠牲者が出ないことを祈るばかりである。
それにしても、トランプ大統領の為すことは良い悪いは別にして、世界情勢を混乱に導くことがあまりに多過ぎる。 自国が世界最大の異常気象による災害国となっているというのに、温暖化協定からは脱退し、パレスチナとイスラエル問題については調停役を務めるべきなのに、対立を生み出している。
どうやらその背景には、「金と名声」こそが全てとする物質至上主義的な発想が見え隠れしているようだ。 衰退国家の末路を担う大統領としては最適任者なのかもしれない。
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イスラム教徒の祈りの場である岩のドームが建つ「神殿の丘」。
この祈りの場に、米国の大統領や副大統領が立つことはない。
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