涼しさを味わおうと徳乃蔵の休日を利用し、標高1300メートルの山の中に入って撮影することにした。 そこにはアサギマダラやヒョウモン類の蝶が生息しているからである。 車を置いて
しばらく歩くと木々の切れ間から、3193メートルの北岳が連なる真夏のアルプス連峰が飛び込んできた。
最近家の周囲ではあまり聞くことのなくなったミンミンゼミの鳴く中、涼しい風に吹かれながらの撮影は気分最高、心の癒される一時である。 やはり自然が放つエネルギーは最高だ。
そんな林の中でカメラを構えて蝶を追っていると、私の頭の近くを飛びかっていた一匹のジャノメ蝶が突然レンズの上に止まった。
どうしたのかとしばらく眺めていたが、一向に飛び立つ様子が見えない。 そこで持参していた別のカメラをバックから取り出して、レンズに止まった蝶の姿を撮影したのが
掲示した写真@である。 撮影中のカメラに止まった蝶を自分自身で撮るのは珍しいことである。
その後、蝶の止まったカメラで、近くを飛び交うアサギマダラやウラギンヒョウモンを撮影し続けたが、一向に飛び立たない。
以前、野鳥のヒガラのヒナを撮影中、突然私の指先に止ま
ったので驚いていると、そこに親鳥がやって来て餌を与える場面に遭遇したことがあった〈下の写真参照)。 私の写真集『神々の楽園八ヶ岳』をご覧になられた方はご承知の
写真であるが、これも極めて珍しい現象である。 今回は鳥が蝶に代わったわけだが、ヒガラにしろジャノメ蝶にしろ特別人なつっこいわけではないだけに
、なんとも不思議な気持ちであった。
レンズ交換しようとカメラを近くの倒木の上に置いてみたが、蝶は相変わらずカメラから離れずにいる。 しばらくすると、今度はレンズの先からカメラ本体の方に移動し
、正面のファインダー
に近づいて、ファインダーの前で体の位置を左右に動かし始めた。 その様子はまるで小さな子供が私の真似をしてファインダーをのぞき込んでいるかのようで
、なんとも奇妙な光景であった。
そんな光景を撮影し終えて、周囲を見ると今度はメスグロヒョウモンのオスとメスが交尾をしながら目の前を飛び交い、近くの草木に止まった。 今度もまた不思議なことに
、接写しようと側によっても飛び立たずそのままの状態でいてくれた。 そのお陰で、珍しい蝶の交尾の姿を近くでしっかり撮影することが出来た〈写真8
) この日はなんとも奇妙でもあり、不思議な撮影の連続であった。
蝶に興味のある方は「八ヶ岳高原を舞う蝶」を
、昆虫に興味のある方は「夏の昆虫 @」、「夏の昆虫
A」ご覧下さい。