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三重苦に耐えて

 
 

 
 


「アナホリフクロウ」  (日本にはいない種類である)   (クリックで拡大)

 
 

今回は「徳乃蔵ニュース B」で紹介した「アナホリフクロウ」を撮影した際の、少々厳しい撮影環境をお話しすることにする。 先ずは上の「アナホリフクロウ」写真を見て頂こう。ギャラリーで写真展をご覧になられた方でも気づかれない方が多かったが、この写真は後ろ向きに止まったフクロウが振り返った一瞬を捉えたものである。

全ての鳥類の内、夜間に活動するものは3%に満たないが、その内の半数以上が「アナホリフクロウ」の属するフクロウの仲間で占められている。ワシやタカを昼の猛禽類とすると、彼らは夜の猛禽類である。 そんなフクロウたちが真っ暗闇でも捕食できるのは、彼らの目に他の鳥にはない特殊性があるからである。

フクロウは他の鳥に比べて大きな目を持っており、その分だけ瞳が大きく網膜に多くの光を送ることが出来る仕組みになっており、その集光力は鳩の目に比べて100倍もある。 だから夜の暗闇も狩りには何ら支障がないのである。そんな特異な目を持ったフクロウだけに、カメラマンがその黄色に輝く大きな瞳をしっかり撮りたい と考えるのは至極当然である。

しかし、アマゾンと言えどもまれにしか遭遇出来ないフクロウが、いつも正面を向いて止まってくれるというわけではない。むしろ横向きであったり、後ろ向きであったりするケースの方が多いくらいである。 上の写真の撮影時も、遠くの枝に止まったフクロウの姿は後ろ向きであった。

しかし、諦めてしまうにはもったいないチャンスだ。 周囲が緑に覆われた中で、小枝に止まった姿などそう滅多に巡り会えるものではないからだ。 辛抱強く後ろを向いてくれるチャンスを待つことにした。 幸いフクロウは視野が狭いため、真後ろを向くことが出来る柔軟な首を持っている。あとはただ ピントを半押しにした状態で、180度首を回してこちらに目を向けてくれるのを待つだけだ。

 
 

 
 

 

 
 

問題は待っている間の周囲の状況だ。 気温は40度を越し湿度は90%、まるでサウナ風呂の中にいるようだ。 それだけなら耐えようがあるが、厄介なのが血を求めて飛び交う蚊の集団である。 我が国で使う蚊取り線香などアマゾンの蚊にはまったく役に立たない。先進国に住む人間の血はおいしいらしく、 ガイドは狙わず狙いは私に集中する。待っている間にむき出しの顔や手に止まる蚊の数は10匹、15匹と増えていく。

しかし、その蚊を手で追い払うわけにはいかないのだ。 シャッターから手を離したその瞬間にフクロウが振り向いたら、チャンスは消えてしまうからである。 だから振り向いてくれるまで、かゆみに耐えてただひたすらシャッターチャンスを待つしかないのだ。 「高温」 「多湿」に 「かゆみ」が加わった三重苦に堪えない限り、狙ったチャンスをものにすることは出来ないというわけである。

そんな状況の中、フクロウの金色に輝く目をしっかり撮影するチャンスが訪れたのは、かなりの時間が経過してからのことであった。やっとのことで撮影を終えて顔 に触ると顔中がボコボコ、そのかゆみと言ったら皮膚をちぎり取りたい程であった。

 かゆみの元凶は蚊だけではない。 寝袋に入り込んだダニの一種にやられると、身体中いたるところが血を吸われ、朝起きると下の写真のように赤く腫れ上がっている。 そのかゆみも半端ではない。 1時間ほどかかって身体中を掻きながら、 血を吸われた箇所を数えてみたら100ヶ所を越えていた。

 
 

 
 

 

 

 




 

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