世界情勢を一層深刻にしたトルコの決断
トルコがロシアから最新鋭のミサイルを購入するというニュースが飛び込んできた。 何とも驚きである。 なぜならトルコはロシアからの脅威に対抗するために結成された、米国とヨーロッパ諸国による軍事同盟・NATO
(北大西洋条約機構)の加盟国であるからだ。
今回トルコが購入することを決めたロシアの地対空ミサイルシステム「S400」については、これまでロシアが輸出契約を結んだのは中国だけ。 そのミサイルをNATO加盟国のトルコが購入するというのだから驚きだ。
一体その背景に何があったのか?
それは、トルコの蓄積されてきた米国やヨーロッパ諸国に対する不満である。 米国は対IS作戦を実施するために、トルコの空軍基地を提供してもらっている。 なのにトルコが敵対視しているクルド人勢力に米国は武器を提供し続けている。 これはトルコ政府にとって大きな不満となっていることは間違いない。
さらに、ヨーロッパ諸国に対する不満も大きい。 EU諸国が抱えた一番の難問は、大量に流入するシリアなど中東諸国からの難民問題である。 この問題を解決するために、トルコとしてはシリア難民500万人の内300万人を国内で留めおくという協力体制をとってきている。 それなのに、最近のEU諸国はトルコのエルドアン大統領の強権政治に対して非難の声を強めている。
トルコが購入することになったロシアの最新鋭地対空ミサイルシステム「S400} |
中でもドイツは、エルドアン政府の閣僚がドイツに在住しているトルコ人の集会に参加することを拒否して来ており、先般はドイツで開かれた20カ国首脳会議に出席したエルドアン大統領による在ドイツ人集会の開催をも認めなかった。
こうした一連の動きに対して、エルドアン大統領は、「トルコへの敬意を欠くと、相応の反応があるぞ!」と怒りを込めた発言をしている。 それは早速ドイツに向けられ、対IS作戦に使用している国内基地へのドイツの議員団の訪問を認めない対抗措置をとった。 そして今回のロシアからのミサイル購入は、米国に対するしっぺ返しとして実施されたというわけである。
私はかねてから、これから先に予想される新たな中東戦争や世界最終戦・ハルマゲドンに向かってキーを握るのはトルコではないかと、伝えてきた。 そういった意味からして、今回の地対空ミサイルシステムのロシアからの購入は、中東情勢のみならずNATO諸国との亀裂を生むことになるだけに見逃すことの出来ない出来事である。
直近の問題として心配されるのは、ヨーロッパ諸国と米国との亀裂である。 ロシア疑惑で揺れるトランプ政権は新たなロシアへの制裁を実施。 これに対して、これ以上ロシアとの関係悪化を望まないヨーロッパ諸国では、米国に対する嫌悪感が生まれて来ている。 それでなくても、環境対策のパリ協定からの離脱や、NATOにおける軍事費の増額要求などの点でトランプ政権に対する反発が強まっているだけに、米国のトルコに対するミサイルの売却拒否が生み出した両者の亀裂が心配されるところである。
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トルコのミサイル購入が、トルコとロシアとの関係をより緊密な
ものとして、今後の世界情勢を変えることになるかもしれない。
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