ロヒンギャ問題、いよいよ国連の場に
先般、「ロヒンギャ族の悲劇 @」で、長い間、ミャンマー人としての正当な扱いを受けることなく、虐待されてきたロヒンギャ族の人々が、反政府勢力による警察や軍の施設への襲撃をきっかけに、家を焼かれたり殺害されたりし
て1000人を超す死者が発生し、隣国バングラデシュに逃れた避難民の数が30万人に達したことをお伝えした。
その後、武装勢力アーサーが、10月9日までの1ヶ月間の一時停戦を宣言。 政府側に停戦と、被害者に対する支援を呼びかけているものの、その後もミャンマー政府はこれといった対応を示しておらず、ロヒンギャ族のバングラデシュへの避難は今もなお続いており、避難民の数は40万人に
迫ろうとしている。
これに対して11日、国連の人権部門のトップが、「ミャンマーが行っている行為は民族浄化の典型的な例だ」 と強く非難。 13日には、
イギリスとスエーデンの提案によって、ロヒンギャ問題を討議する国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ
、安保理として初めて、ミャンマーの戦闘を非難・懸念する声明文を発表するところとなった。
しかし、これから先、ロヒンギャ族避難民の帰還する権利を保障させることや、国連の調査団の派遣をミャンマー政府に受け入れさせることなどについては、中国政府が「ロヒンギャ問題に口をはさむことは、内政干渉に当たる」 と
、介入に反対する姿勢をみせているため、北朝鮮問題と同様、国連が一枚岩となって、ミャンマー政府に対し厳しい対応をとれるかは不透明である。
中国政府が、国連によるミャンマー政府への介入に反対している背景にあるのは、中国自身が抱えた少数民族問題である。 中国では長い間、チベット自治区や新疆ウイグル自治区などで少数民族
による反発が起きているため、国連や第三国による自国の民族問題への介入を避けたいのだ。
避難民が遭遇している惨状
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バングラデシュの病院に担ぎ込まれた少年には両足がない。
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先日、イギリスBBCテレビがバングラデシュに避難するロヒンギャ族の人々の悲惨な実体を放送していた。 この番組もまた、3月31日掲載の
口と鼻から血を流しながら、既に死亡しているママを探す幼児や(「
シリア・アレッポの悲劇」)、 6月29日付の母親と妹たちとの生活費のために自分の腎臓を売った後苦しむ10代の少年(「シリア難民の悲惨な実態」)の映像と同様、あまりにも無残で、心をえぐられる
悲惨な状況を映していた。
前回の「ロヒンギャ族の悲劇」では、バングラデシュに逃れるために1週間近く、飲まず食わずで山やジャングルを超える難民の状況をお伝えしたが、今回、BBCの番組が伝えていたのは、
こうして避難する途中で地雷が爆発し、バングラデシュの病院に担ぎ込まれた15才の少年の姿であった。 ベットに横たわる少年には下半身が無く、ときどき襲う激しい痛みに泣き叫
ぶ姿が映り出されていた。 (上下の写真参照)
ベットの横で少年の手を握って励まし続ける母親は、「こんな苦しみを味わうなら、地雷や銃で死んでいった人たちと同じように、この子もアラーの神に召されたほうが幸せだったと思う」
と涙ながらに語っていた。 まさに母と子にとって今の病院での一日一日は「生き地獄」である。 番組は恐らくこの少年は16歳を迎えることは無理だろう、病院には必要な輸血がないからである、と伝えていた。
この少年のように、避難の最中に地雷を踏んでしまっ
て重傷を負ったり、その場で死亡した人はかなりの数に達しているようだ。 ミャンマー政府は自分たちは地雷など埋めていない、家に火を放っているの
もロヒンギャの反政府軍が、国際社会から同情を得るために行っているのだと言っているが、素直には受け入れ難い発言である。
それを裏付ける映像をイギリスのBBCニュースが伝えていた。 バングラデシュ側から河の向こうのミャンマーの森林を見ると、まるで噴火のような巨大な噴煙が上がっていた(
最下段写真参照)。 バングラデシュに逃げ延びても、やがて時が過ぎれば戻ってくるつもりでいる
住民の家を、同じ仲間の反政府軍が焼き払うはずがないではないか。
一方、政府軍は隣国にわたったロヒンギャの人々を再び国に戻したくないのだ。 そのために帰るべき家を焼き払い、地雷を埋めているのだと考えた方が筋が通る。 BBCテレビは、ミャンマー側の川沿いを走っているのはミャンマー政府軍の船で、越境してくる人民を見つけては撃ち殺そうとしているようだと伝えていた。 どうやらミャンマー政府軍は、家に火を放ってロヒンギャの人々を村から追い出すだけでなく、あちらこちらに地雷を埋めたり逃れる住民を銃撃して、帰還を阻止しようとしているようだ。
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激しい痛みに見舞われる少年の姿は心をえぐる
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夫は政府軍に銃殺され子供は負傷、
他の3人の子供とは生き別れ
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左腕を負傷し治療を受ける5歳の子供とその弟
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上に掲載したのは、もう一組の親子の写真である。 逃げ延びてくる途中兵士の撃った弾が当たり、ケガをした5歳の兄とその弟、それに母親。 その時、父親は同じ兵士の銃で死亡。 残りの3人の兄弟ははぐれてしまい、今は探すことすらできないでいる。 「家を焼かれ夫を失い、3人の子供と離ればなれとなってしまった私たちは、これから一体どうしたらよいのでしょう」
と言って泣き崩れる母親の姿は痛ましい限りであった。
そもそもこうした残虐な事態を引き起こした元凶は、長期にわたって、ミャンマー政府がイスラム教の異教徒を一切受け入れずに生活権を奪って来たからではないか。 今回の避難劇のきっかけとなったのは、ロヒンギャの武装勢力が政府軍や警察を襲ったことであった。 しかし、そうした事態に至ったのは、職も得られず、移動を制限され、まるで柵の中に放たれた豚や牛と同様な状況に置かれたロヒンギャの若者の怒りがピークに達したからではないか。
こうした残虐な行為を繰り返しているようでは、もはやブッタが説いた教えを守る仏教徒とは言えない。 さぞかしブッタも天界から眺めて嘆き悲しんでいることだろう。 イエスやマホメットにおかれても同じ心境に違いない。 アメリカ・インディオやホピ族を皆殺しにして開拓地を広げてきたのは、アメリカ人やスペイン人などキリスト教徒であり、いま中東で殺し合いを続けている戦闘は、同じイスラム教のスンニ派とシーア派の宗派間の争いであるからだ。
どうやら、宗教の存在意義は完全に失われてしまったようだ。 現在、世界各地で行われている紛争や戦争の大部分が、宗教間や宗派間の争いと化して来ていることを考えると、むしろ、宗教的概念は捨ててしまった方が平和になりそうである。 「霊的世界の真実」や「輪廻転生の仕組み」、「カルマの法則」などに関する知識をしっかり学べば、宗教に頼る必要性はないのではなかろうか。 そのように思えてならない昨今である。
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夫を失い、子供を負傷させ、3人の子供と離ればなれになった母親の嘆きは大きい
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ビルマ領内から立ち上がる噴煙は、ビルマ政府軍の
ロヒンギャ族の追い出しの意図を伝えているように見える。
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