笑顔の裏にあるのは猜疑心
何ら成果の上がらなかったG20大阪サミット
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作り笑顔で手をかざす首脳たち。心の中にあるものは互いの不信感と猜疑心だけ。 |
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いよいよ今日から7月。早くも半年が過ぎ去ってしまった。2019年の後半に向かって、これから先もまた、どうやら様々な暗い記事を書く日々が続くことになりそうである。そうした中、読者の皆さんにおかれては、世情の厳しさはしっかり受け止めた上で、穏やかな明るい日々を送って頂けることを
願っている。
さて、先月29日に大阪で開催されたG20首脳会議。米中間の貿易戦争問題や米国とロシアの対立関係が、解消に向かう手がかりがつかめたかのような報道もあるが、事実上何ら成果らしい成果が上がっていないのが実態である。
気になる米中間の貿易の関税上乗せ問題については、とりあえず中国からの3500億ドル(約40兆円)の輸入品に関する関税上乗せは当面は課さないとしたもの、先行きはどうなるかわからない。香港や台湾で発生している中国に対する抗議集会などについては、各自が自己主張をしただけで、何ら得るところなく終わっている。
それより、トランプ大統領にとって自慢して帰国できる成果は、朝鮮半島の南北の境界で金正恩主席と対面し、約1時間の対談をしたことであった。両首脳ともに満面笑みを浮かべてカメラに向かって友好関係をアッピールしていたが、肝心な北朝鮮の非核化については具体的な話し合いは一切行われておらず、3週間先から事務レベルでの交渉を再開することしか決まらなかったようである。
トランプ大統領の型破りの外交が、一時とはいえ、両国関係の緊張を緩和したことは事実だが、二人の笑顔や握手はカメラマンに対するシャッターチャンスを生み出しただけで、米国が目指す北朝鮮半島の非核化に向かっての具体的な成果は何もなかったようである。来年の大統領選挙に向けたトランプ大統領の点数稼ぎと、体制維持のために何とか制裁解除を狙う金正恩主席。
両首脳の交渉の前途多難は、そのまま何も変わってはいないのが実情だ。
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二人が南北境界線をまたいだことは歴史的な瞬間であった。
しかし、二人の首脳がそこで得た成果は幻のようなものではなかったか。
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うやむやに終わるのか
サウジ皇太子の殺害指示
今回のG20で私が非常に残念に思えたことは、会議に参加したサウジのムハンマド皇太子が為した、トルコのサウジアラビア人記者のジャマル・カショギ氏への殺害行為に対する非難や真相究明などの動きが、全くなされなかったことである。
実は、カショギ氏が昨年殺害された事件で、独立調査に当たっていた国連の特別報告者は先月19日、皇太子らが事件に関与したことを示す信頼できる証拠があるとして、ムハンマド皇太子やサウジ高官を捜査するべきだ、との見解を示していたのである。
そして、国連のカラマール特別報告者は殺害が国際的な犯罪だとし、普遍的管轄権の原則の下で真相を究明するように呼び掛けており、個人の責任が証明できた場合は逮捕すべきだと主張。また、皇太子に責任がないと証明できるまでは
、対サウジ制裁の対象を皇太子とその海外資産に拡大すべきだと述べていた。
国連のこの発表はG20でムハンマド皇太子の為した行為に対する、真相究明や何らかの制裁措置が議論されることを期待したものと思われる。それにもかかわらず、会議では全くそうした動きはなく、安倍首相やトランプ大統領などがにこやかに握手を交わす場面だけが映されていた。
なんとも早、情けない限りである。 そんなサウジアラビアで来年のG20は開かれるのであるのだから、世の中がよくなるはずがない。あなたはそう思いませんか。
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