6日、日本時間の夜3時過ぎ、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認め、米国大使館を現在のテルアビブからエルサレムへの移転することを、国務省に指示したと発表。 とうとう超えてはならない一線を越えたことになり、これでパレスチナとイスラエルの中東和平交渉は完全に挫折し、中東を一段と厳しい状況下に置くこととなった。
今回の発表でトランプ大統領は、今後も中東和平の仲介役を担い続けることに何ら変わりはないと語っているが、国家樹立の後の首都と位置付けているパレスチナが、これから先、おめおめと交渉に応じるはずがない。 また今米国は、地球温暖化対策のパリ協定や多国間の貿易協定であるTPPからの離脱などで信頼を失っているだけに、国際社会からの新たな反発を受けて、今回のエルサレム問題が、米国の覇権国家としての地位を更に低下させることになりそうである。
ただ、肝心な中東諸国からの強い反発については、米国から毎年1460億円の軍事援助を受けているエジプトや、対峙するイランに強硬姿勢をとるトランプ政権を称賛しているサウジアラビアのように、米国との対立は避けたい国々もあり、また、IS(イスラム国)系の武装勢力との戦いなどで、自国の問題に手いっぱいな国々も多いため、反米や反イスラエルの大きなうねりになる可能性は低いかもしれない。
しかし、近い将来、それも極めて近い将来に、「イスラエル対イスラム諸国」間の中東全体を揺るがす危機的状況が到来することは間違いなく、その時に改めて、2017年12月6日のトランプ大統領の決断が、紛争の発端であったことを思い起こすことになるに違いない。
当面の心配点は、前回の「中東情勢に新たな火の手」で記したように、パレスチナの過激派組織であるハマスが一般住民による抵抗運動
(インティファーダ)
の再開を呼び掛けていることから、イスラエル軍との紛争でパレスチナ人の犠牲者が大量に出るのではないかという点である。 今週の金曜日がパレスチナ人による集団礼拝なので、その後に、どの程度のデモが発生するかが、一つの見極めのポイントになりそうだ。