今朝のニュースはアフリカのリビアからイタリアに渡ろうとしていた難民船がリビア沖合の地中海で沈没し、500名を越す死者が出たようだと伝えている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は20日、難民や移民を乗せた大型の密航船が地中海で沈没し、約500人が死亡した恐れがあるとの声明を発表した。 確認されれば、難民らを乗せた密航船による地中海での事故としては過去1年間で最悪レベルとなる。
生存者の証言によると、100〜200人の難民らのグループが先週、リビアを船で出発。 数時間後、密航業者らがグループを別の大型船に移そうとした最中に大型船が転覆、沈没した。船は難民らでぎゅうぎゅう詰めだったという。
3月にEU(欧州連合)とトルコとの間で交わされた難民流入抑制策の合意により、同国からギリシャに渡る難民の数はここに来て減少してきているようである。 その一方で、リビアなどのアフリカ沿岸からイタリアに渡る「地中海ルート」を利用する難民の増加が懸念されていたが、事態は案じていた方向に向かっているようだ。
問題は、かねてから記してきたように、トルコからギリシャ経由でヨーロッパに渡る「バルカンルート」に比べて「地中海ルート」は危険性が大きいという点である。 なにしろ大海原の地中海をさして大きくないの密航船で渡るのだから、悪天候に遭遇したら沈没、遭難の危険性は避けられない。 ましてや今回もそうであったように、船はぎゅうぎゅう詰めであるから、その危険性はさらに大きくなる。 難民にとってはまさに命がけの渡航である。
500人の死者となると、今回のエクアドルの地震による死者に匹敵、尋常な数ではない。 国連難民高等弁務官事務所が危惧するように、EUとトルコとの協定は、難民の死者の数を急増させることになりそうである。 これから先、数百人規模の死者が数多く出るようなことになると、EU諸国に対する道義的責任を問う声が出てくることは必至。
シリアの和平協議の行方次第では、難民問題はこれから先、再びEUを揺るがす大きな難問となりそうである。