伊勢志摩サミット出席のため日本を訪れようとしているオバマ大統領が、その前に立ち寄ったのがベトナム。 昨日ベトナムのハノイでクアン国家主席と会談した後の共同記者会見で、30年以上続いていた武器禁輸を全面解除することを発表。 これでベトナムは
南シナ海の中国軍に対抗するため、米国から対潜水艦哨戒機や大型輸送機などを購入することが出来ることになった。
この措置が南シナ海の島々を軍事化し、勢力を強めている中国を牽制するためのものであることは間違いない。 ベトナムの人権問題がまだ十分に改善されていない中での、今回の武器輸出全面解除は、人道問題を脇に置いても、中国に対する
対抗措置を急がねばと言う米国の焦りの気持ちが見え隠れしている。
米国政府は東欧で対ロシア用の弾道ミサイルを配備する一方で、東南アジアでは、フィリピンやベトナムを介して、中国の南シナ海戦略強化に対する対抗手段が進められている。 前回も記したように表立っての対立場面は、今はまだ現れてはいないものの、このようにして対ロシア、中国戦に向けての根回しが
着々と進められていることは確かである。
和解の旅
今回のオバマ大統領のベトナム訪問で私が感じたことは、一昨日から始まったベトナムと我が国への訪問は、かって戦火を交えた両国に対する「和解の旅」であるということであった。
1965年にソ連や中国に後押しされた北ベトナムの社会主義拡大を恐れ、攻撃を開始して始まったベトナム戦争は、予想外に長期化し1973年の和平協定締結まで、9年間にわたって続くところとなった。 その間、ジャングルに隠れて攻撃する北ベトナム軍に対して、米軍は枯れ葉剤を空中から散布し、森林を破壊し続けた。
その枯れ葉剤には猛毒のダイオキシンが含まれていたため、その後、多くの奇形児や障害者を生むところとなった。 それにもかかわらずアメリカ軍は
北ベトナムに敗北して撤退。 その結果、北ベトナムの社会主義共和国がベトナムを統一し今日に至っている。
こうして手痛い敗北を喫したベトナムを今回オバマ大統領は訪問し、敵対関係にある中国に楔(くさび)を打とうと武器禁輸措置を解除するところとなったのだ。 つまり、今回
のオバマ大統領のベトナム訪問は、10年近く続いた長期の戦争に対する「和解の旅」となったのだ。
そして、その後に訪れる日本では、米国大統領としては戦後初めての原爆投下地・広島を訪れるわけだが、これもまた、
多数の罪なき子供や女性たち一般市民を殺害するところとなった原爆投下に対する「和解の旅」いうわけである。
残念ながら先のNHKのインタビューで、オバマ大統領は広島訪問に際し原爆投下を詫びることはしないと明言している。 つまり原爆投下は早期に戦争を終了させ、犠牲者の数を少なくするために必要不可欠な手段だったというわけだ。 広島と長崎で20万人を超える一般市民を犠牲にし、その後数十万の人々を後遺症で苦しめていながら、そんな言い訳が出来るのは、米国が勝利国であったからに他ならない。
そのような言い訳が通用するなら、これから先発生する戦争においても、同様な理由でいくらでも核兵器を使用することが出来る。 世界中が今、核兵器削減に向かって進もうとしているのは、核兵器が人道上許されない兵器であるから
に他ならない。 ならば、戦争そのもの是非以前の問題として、被害者の冥福を祈る意味でも、核弾頭投下に対して詫びることは大事なことではな
いだろうか。 しかし、それが出来ないというのだから悲しいことである。
今もなお続く原爆と枯れ葉剤による後遺症
実は原爆投下に対して詫びようとしないのと同じ態度が、ベトナム戦争における枯れ葉剤
の散布においても見られるのだ。 枯れ葉剤に使われた猛毒のダイオキシンは多くの死者を出しただけでなく、一頭双生児「ベトちゃんトクちゃん」に代表される身体障害児を産み出した。 戦後40年以上経過した今でもなお
同様な被害者を発生し続けており、その数は300万人を超えている。
戦争期間中に米軍が使用した枯れ葉剤の容量は、なんと8000万リットルに達していると言われている。
ところが、米国政府は今もなお、健康被害と枯れ葉剤の因果関係を認めておらず、そうした被害者に対して一切の支援も保証もしていないのである。かって米軍の基地が置かれ、大量の枯れ葉剤が保管されていたベトナム南部のビエンホワ空軍基地
周辺で深刻な汚染が続いていることを考えたら、因果関係は火を見るより明らかである。
そして今もなお基地周辺には、危険を知らせる看板があちらこちらに立っている。 それでもなお、米国政府は枯れ葉剤と健康被害との関係を認め、謝罪しよう
とはしていないのである。 それはまさに、広島や長崎の被爆者に対して、原爆投下という非人道的な行為の非を認めず、詫びようとしないのと同じである。
米国政府の考えはどうあれ、一つだけ明らかなことは原爆投下と枯れ葉散布によって罪なき人々を死に追いやり、後遺症で苦しめてきたカルマは、
時間が経過したことで決して消えるものではないと言う点である。 いま3次元世界の終焉に向かって、世界の全ての国家や民族、個人がカルマの刈り取りに向かっている。
被災国や被災者に対して心から詫びたなら、カルマもいくらかは小さくなるだろうが、それをせぬまま時を迎えたら、広島・長崎やベトナムの被災者が体験した以上に
、米国国民が悲惨な状況を迎えることは必至である。 これだけは決して避けて通ることは出来ないのである。 それがカルマの法則であるからだ。 今回のオバマ大統領の両国訪問が「和解の旅」と同時に「懺悔の旅」となることを願っている。