英国のEU離脱の賛否を問う国民投票の結果が出た。 日本時間13:30、92%の開票所が開票を終えた段階で、離脱が1558万票(51・9%)、残留は1443万票、(48.1%)。 イギリスBBCニュースは離脱派の多数は確実となったと速報。
賛否は拮抗しているものの、コックス下院議員の射殺に対する同情票もあって、残留派が有利ではないかと見られていただけに、今回の結果はイギリスだけでなくEU域内や全世界に大きな衝撃を与えている。 金融市場でもほぼ残留派の勝利を予測していたため株価は上昇。 また売られていたポンドやユーロが値を戻す動きが起きていただけに、市場は大混乱となっている。
私が離脱派の勝利もあり得ると考えたのは、「世界が注視する英国・国民党投票の行方」で記したように、投票日前日、首相官邸前の広場で行われたキャメロン首相の演説を聴いた首相の元戦略アドバイザーだった人物が、「今回の首相の演説は残留派の負けを予期した者が語るような内容だった」と述べている点に着目したからであった。
結果的に、私の予測通りになったわけであるが、金融市場を動かす人々を始め、多くの方が残留派の勝利を予測をしていたようだ。 今回に限っての話ではないが、経済評論家であろうが政治評論家であろうが、評論家と称する人々の予測はなんとも当てにならないものである。
今回の結果は、経済全般、難民問題などに影響を与えることは必至で、当面、世界の株式市場や為替市場、金(ゴールド)市場などに動揺が広がることは間違いない。 既に我が国の市場ではユーロは111円台に急落、これにつられてドルも一時100円を割って99円台に。 株式市場は日経平均が1300円(8%)を越す急落で15000円割れ、中国のハンセン指数も一時1200ポイント(5・8%)の下落となっている。
今夜のヨーロッパ市場はもとより、ニューヨーク市場の動きが気になるところであるが、この衝撃の余波はしばらくの間続く可能性が高く、今回の結果を受けてこれから先、全世界的な景気後退に陥ることになるようなら、世界金融恐慌のきっかけとなる可能性もあり得る。
さらに心配なのは、英国のみならずEU全体に及ぼす難民問題への影響である。 そもそもEU離脱派の主要な主張点の一つが、EUに加盟している限り、中東からの難民・移民の流入を自国で制限できないではないかという点であっただけに、これから先、英国は難民問題には一段と厳しい対応が求められることになるのは避けられず、それはEU諸国にも大きな影響を与えることになりそうだ。
しかし、一方で、シリアの内戦は政府軍と反政府軍による休戦交渉はストップしたままで、アレッポなどへの政府軍やロシア軍の空爆は続行し続けている。 また、IS(イスラム国)のテロはシリアのみならずイラクやリビアなどで発生し続けており、難民は今もなお増え続けている。 彼らが逃れようとする行き先はヨーロッパ諸国であることは今もなお変わりはない。
英国の今回のEU離脱決定によって、難民の受け入れを事実上拒否しているハンガリーなどの国々は、ますますそうした動きを強くしていくことになる可能性は大きい。 それだけに、EU内での難民受け入れの是非を巡る論争が再発する可能性は大きい。 その結果、メルケル首相率いるドイツに対する風当たりも一段と強くなり、EUの一体化が一段と難しくなって来そうである。
経済問題、難民問題、急進的右派・左派の登場など、これからヨーロッパは大きな難問に遭遇し、一歩間違えると、世界を巻き込む紛争の発生もあり得るかもしれない。 その点については、日を改めて記すことにするが、2016年6月23日という日は、世界の歴史に残る日となりそうである。