読者の皆さんは先月31日に、中国共産党が一組の夫婦に3人までの出産を認める新たな方針を示したことはご存じのことと思う。1979年から数十年間にわたって中国が「一人っ子政策
」を続けて来たのは、人口増を抑えるためであった。その政策を中国政府が破棄したのは5年前の2016年
の「二人つ子政策」で、2人までの出産を認めることにしたのだが、今回は「三人っ子政策」に転換したのだ。
中国政府の政策は国民に対して強制力を持っているだけに厄介である。「一人っ子政策」が始まった当初は、政策を無視し2人、3人と出産する家庭が多かった。
しかし、政府の命を受けた地方政府
が厳しく取り締まりを行った結果、そうした家庭では家で育てることが出来なくなったため、他人の家に預けたり、有料で子供を引き取る会社に渡すことになったのである。
中には、こうしたことが出来ない家庭もあったため、出産した赤子をその場で殺害する無残なケースも多く
、数多くの女性に消すことのできないトラウマを残すことになったようである。こうした状況の中で「一人っ子政策」は徐々に定着し、結婚した夫婦は4人
の両親の面倒を見ることになったのだ。
それから5年、中央政府が改めて状況を確認したところ、子供の数は政府の想定していた数よりはるかに少なく、このままでは
父母や祖父母の高齢者を支えていくことは難しい状況となっているのに気づいたのだ。それは、長い間にわたって一人っ子政策が定着していた為、二人までの出産が許されることになっても、二人の子供を持つ家庭は少なかったからであったのだ。
そうした状況の中で発表された今回の3人目解禁策。国民はどのように受け止めているのか? 国営新華社通信が中国版ツイッターで「3人目を計画するか?」というアンケート調査を行ったところ、90%以上の回答が「全く考えられないことだ」という回答が寄せられたようである。
そればかりか、今回の政府の方針は、私たち世代に「早く結婚して親4人と子供3人を世話しろ」と言っているようなもの、と多くの意見が批判的な内容であった。
それは、今回のような政策の実行には、高すぎる住宅費や保育所の整備、税金優遇など総合的な対策が必要であるが、市民は地方政府の財政が厳しいことを知っているため、政府の方針に従うことなど出来ないというわけである。
となると、中国における少子高齢化はこれから先も進むことになるため、これから数年先の中国社会は、ニュースで伝えられる豊かな生活とは裏腹に、少ない子供や孫たちに「おんぶにだっこ」の状況に向かって進むことになりそうである。
十数億人の国民を抱えているだけに、中国の近未来が心配である。