エジプトとエチオピアのダム建設を巡る対立激化
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エチオピアとスーダンとの国境付近に建造された水力発電用ダムが
今エジプトとエチオピアの間に厳しい状況をもたらそうとしている。 |
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アフガニスタンからの米軍とイギリス軍の撤退により、中東のイラク、シリア、アフガニスタンに置けるタリバン軍の勢力拡大が心配される事態と化して来ていることについては「米国と中国の最新情報」でお伝えしたが、中東に隣接するアフリカでも新たな脅威が発生しようとしている。それはアフリカの地域大国であるエジプトとエチオピアの「ナイル川の水資源」を巡る対立である。
対立の原因となっているのは、エチオピアがスーダンとの国境近くに建設を進めているアフリカ最大級の水力発電用ダムである。エチオピアはここ数年急速に経済発展が進んでおり、電力不足が緊急の課題となっていた。そのためにダム建設が10年前から進められており、ここに来ていよいよ本格的な貯水開始が始まろうとしているのだ。
この「大エチオピア・ルネサンスダム」と命名されたダムの総貯水量は740億立方メートル。この貯水量は琵琶湖の2.7倍の大きさであることから、貯水が始まると下流のスーダンやエジプトに流れる水量は大きく削減されることになる。
一方、人口が1億人を超えたエジプトは国内の水需要の95%をナイル川に依存しているため、水量の減少は死活問題となってくる。こうした中、エチオピアは今月からエジプトの反対を押し切り、本格的な貯水開始を始めることになり、対立が深まって来ているのである。
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大エチオピア・ルネサンスダム
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エジプトは私も何度か訪ねており、ナイル川からの給水量が激減したら市民生活が出来なくなるばかりか、農業用水の確保が難しくなるため、致命的な影響を受けることになるという話はしばしば耳にして来ていた。つまり、ナイル川の水は数千年前から続くエジプト文明と人々の命であり続けているのである。
そのため、エジプトのシシ大統領は「エジプトにとってナイル川の水を侵害されることはレッドラインだ、そうなれば想像もつかない状況になるだろう」と武力攻撃を匂わせる衝撃的な発言をしている。
それに対してエチオピアの担当大臣は「電力不足は国にとって死活問題であるからこそ10年間にわたって開発を進めてきたのであるから、貯水開始は止めることは出来ない」と主張し、両国関係は一触即発の危機的状況と化して来ている。
エジプト政府が国連による仲介を希望しているのに対して、エチオピア政府はアフリカ連合が仲介役となり交渉を進めるべきだとしているため、妥協点を探る動きがとん挫している状況が続いている。
そのため、かって両国の仲介役を担ったトランプ大統領が語った「追い詰められればエジプトはダムを破壊するだろう」とする発言が現実となる可能性が大きくなって来ているようである。どうやら、こうして見てみると
アラブ圏における新たな危機的対立が発生しようとしているようである。
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エジプトの首都・カイロを訪ねた際に何度も目にしてきたナイル川の風景である
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エジプトのシシ大統領がどの様な行動に出るか、いま世界が注目している。
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