暖冬気味のこの冬、正月3ヶ日は一段と暖かく山には靄がかかるほどの天気となった。 こうした異常気象は世界各地で続いており、厳寒の地・北極点(North
Pole)でも異変が起きている。 年末の30日、驚異的な気温の急上昇によって、厳冬期平均よりなんと20度も高い気温を記録するところとなった
のだ。
カナダの気象当局は気温の急上昇について、今冬、北米にこの時期としては記録的な暖かさをもたらす一方で、英国には暴風雨や洪水をもたらしている異常な低気圧が原因だと伝えている。 この低気圧は年末にはアイスランド付近の上空にあって、北向きに暖気を引き込みながら北大西洋で風速38・6メートルというハリケーン並みの暴風と高さ約9メートルの波をもたらしている。
この強力な低気圧が暖かい空気を北極点にまで押し進め、気温が通常よりも20度ほど高い0度〜2℃まで上昇しているとカナダ政府の気象学者、ナタリー・ハセル氏は
述べている。 下段に掲載した気温図を見てもらえれば分かるように、29日に氷点下27・8度であった気温が、なんと24時間後の30日には融解温度を上回る+0・7度まで28度も急上昇している。
さらに北極点環境観測台(North Pole Environmental
Observatory)の米科学者ジェームズ・モリソン(James
Morison)氏によれば、北極点から300キロの位置にある北極圏の観測地点でも、2日前の28日に氷点下37度を記録していた気温が、30日には氷点下8度まで急上昇したようである。
真冬のこの時期、北極圏に位置するアイスランドの北の海で低気圧が発生し、風速40メートル近い暴風が吹き、北極点の気温をプラスに転じさせるなどと言うことは聞いたことがない。
2002年に私が北極点に立ったのは真夏のこと、それでも原子力砕氷船が極点に近づくのは容易でなかったことを考えると、真冬の12月末の+0・7度は信じ難い気温である。