未知の領域へ突入
|
|
|
|
今回の政策で効果が出ないようなら更なる金利引き下げも辞さないと語る黒田日銀総裁。
その発言の裏には、米国のFRB(連邦準備制度理事会)からの圧力がありそうである。
彼はマイナス金利導入の反作用が、どれだけ大きなものになるか分かっているのだろうか。
|
|
日本銀行が我が国の金融史上かって行ったことのなかった「マイナス金利」というとんでもない政策を導入することを決定した。 都市銀行や地方銀行は顧客から預かった預金をすべて企業や住宅ローンなどに融資したり、国債を購入するなどして運用しているわけではなく、一部を日銀に預け金利を
得ている。 その金利は通常時は2%前後、しかしここ数年下がり続け、0・1%とゼロ金利近くまで下げっていたが、それでも
1000億預ければ1億円の利息収入はあった。
ところが今回のー0・1%という「マイナス金利」の導入で、民間銀行は預けた金額の0・1%分を逆に日銀に対して支払わねばならなくなったというわけである。 日銀としては自分のところに預金などせずに企業や個人客にどんどん貸し出して、企業には設備投資をしてもらい、個人にはマンションや住宅を購入してもらいなさいとゆうわけである、
もしそうしないなら「罰金」として預かっている預金から金利(預かり手数料)を取りますよと脅しているわけで、前代未聞の施策である。
景気を回復するために日銀が金融緩和策を始めたのは2013年4月。 それは、民間銀行が保有している国債を日銀が買い取るという方法で行われてきた。 その額は当初は年50兆円だったが、14年10月には80兆円まで拡大さ
れて今日に至っており、総額は既に1880兆円に達している。 なんと国家予算の2倍近い巨大な額である。
日銀が行って来たこの異次元的な金融緩和策とは「カネのばらまき」に他ならない。 日銀が民間銀行が保有する国債を買い取ることによって、銀行は現金化しそのカネを貸し出しや投資に回す。 融資を受けた企業は設備投資を行い、金回りの良くなった投資家たちは株を買っ
て株価を上げる。 そして利益を得た者たちが買い物をして景気を良くする。 その結果、日本経済はインフレに向かい、2%の消費者物価上昇率を達成しデフレから脱却する。 これが日銀の狙いである。
しかし、原油安などの影響もあって、現状は2%のインフレどころかデフレ気味で物価上昇率はいつまで経っても0%前後をうろうろしている。 そこで日銀が考えた最後の手段ともいえる政策は、銀行に強制的に貸し出しを増やさせるための「マイナス金利」の導入となったという次第である。銀行は金利を払うぐらいなら、日銀から資金を引き出して融資に回そうとするだろう、
日銀幹部はそう考えたというわけだ
|
|
|
|
マイナス金利の導入で民間銀行は投融資を拡大するだろうか?
一歩間違うと反作用で一層の景気低迷、株価暴落となるかもしれない。
|
|
疑問視される効果
この金融緩和策はどれほどの効果をもたらすのか? しばらくは様子を見るしかないが、私は決して日銀が考えているような効果は出ずに終わることになると思っている。 なぜなら景気の低迷は今や世界的な傾向で、唯一の救い主と言われていた中国自身が景気が落ち込み、株価も低迷、
爆買いもピークを過ぎ、GDPも6%台へと急落して来ているからである。 そうした状況を考えると、日銀や欧州中央銀行がいくらマイナス金利策を進めたところで、景気の反転につながる可能性は低いと考えざるを得ない。
それより、ここまで中央銀行が異次元的な金融緩和策を導入するのは、経済の先行き見通しがお先真っ暗であることを意味していると見なされ、市中銀行は融資を増やすどころか、ますます貸し付け先を厳しくチェックするようになる可能性が大である。 今回の日銀の施策
決定は総裁・副総裁と審議委員の9人のメンバーの多数決で決定されたわけだが、黒田総裁が賛成に回って辛うじて5対4で可決したことが、それを裏付けている。
今回の政策決定を喜んでいるのは、アベノミクスとやらを進めている安倍政権と株式投資で儲けようと企んでいる投資家たちだけである。 アベノミクスの司令塔であった甘利経済再生相の辞任で、安定していた安倍政権が揺れ始めた時期だけに、安倍総理は日銀の決定を高く評価
。 株式市場も好感し日本のみならず欧州、米国と軒並み株価が大幅に上昇して週末を終えている。
日本の株式市場では、29日のマイナス金利実施の発表後、あっと言う間に680円急上昇、その後870円急落して最後は730円上げて終値は476円高の17,518円で終わっている。 この大幅な乱高下は滅多に見ることのない
相場展開で、売買する上場会社の業績など二の次、三の次の博打相場であった。 その後、欧州株も米国株も日銀の発表を好感し大きく値を上げて終わっている。
|
|
|
|
上げ幅下げ幅の大きい取引となった29日の東京市場
|
|
副作用懸念
黒田総裁は記者会見で、今回の金利引き下げでもしも効果が出ないようなら、されに追加の利下げも辞さないと述べており、ECの欧州中央銀行も3月には更なる利下げを示唆しているので、春先にかけてしばらくは、世界的に株価は上昇することになるかもしれない。
しかし、私自身は上昇相場は長くは続かず、日本株の21000円、ダウ平均の18000ドルの高値を抜くようなことはあり得ないと思っている。 それより、「カネのばらまき」も「金利の引き下げ」にも限界があることを考えると、中国株式市場の次なる下げが本格化した際には万策尽きたと判断され、下げが下げを呼ぶ展開となり、世界的な株価暴落の連鎖が始まり、株式市場は地獄と化すことになりそうである。
実は、今回の日銀のマイナス金利導入には米国からの強い要請があったのではないかと、言われている。 昨年12月に米国の中央銀行(FRB
)は、日本や欧州とは反対に金利引き上げを実施したのだが、ここに来て12月の耐久消費財受注が11月に比べて−5・1%と事前予想値ー0・6%を大幅に落ち込み、また第4四半期(10〜12月)のGDP速報値が+0・7%と、第3四半期の+2・0%から急減速している。
米国の景気は回復しているとして実施した金利引き上げだったが、実際には回復どころか落ち込んできてい
るのが実体となると、株式市場は混乱状態となる。 それを心配したFRBが日銀に株価維持のためマイナス金利導入を実施するよう要請した可能性は大きいのだ。 そうした裏情報も頭に入れておいた方がよさそうである。
|