前回の「正念場を迎えた中国」で、「世界各地から伝えられるニュースは心が暗くなるものばかりである」と記した。 その中でも最も心が痛むのが
、シリアやイラクの戦闘に巻き込まれて家族を失い、着の身着のままで逃れてくる難民に関するニュースである。
5年目を迎えているシリアの内戦は今、国連による和平協議に向けての動きが始まっている
。 先ずは休戦であるが、今のところ大規模な戦闘行為は起きておらないようなので、このまま休戦が続くなら、9日から予定されている和平協議に入ることが出来そうである。
なんとか和平が実現して欲しいところであるが、反政府勢力の数が多く一枚岩でないことと、ロシアとシリア政府がアサド政権の継続を協議の前提にしている点を考えると、和平の実現は前途多難
と言わざるをえない。 和平協議の行方については、これから先の協議の進捗状況を見ながら、改めて記すことにするが、今回は難民問題の
厳しい現状とその行方、またギリシャとトルコの問題点や欧州連合(EU)で発生している各国間の亀裂について考えてみることにする。
シリアの難民の数は現段階でどの位になっているのか? 下の図を見てもらえれば分かるように、シリアの周辺国だけでも既に460万人近くに達している。
彼らとは別に、昨年EU各国に逃れた難民を加えたら500万は完全に超えていることは確かである。
シリアの人口をウイキペディアで調べてみると、2014年の段階で1800万人となっている。 内戦が始まる前には2000万人を超えていたと思われるが、その内の4分の1近くが国を離れて他国に移動していることになる。 我が国を例に取るなら3000万人が難民となっていることになる。 東北大震災の原発事故で福島を離れた人の数ではない。 他国に逃げ延びた人の数であることを考えたら、その数が尋常ではないことが分かるだろう。
そうした難民の発生から既に5年。 困ったことに、ここに来て難民たちを悩ます新たな問題が発生している。 シリアやイラクからの難民の多くはトルコを経由しギリシャに渡り、そこから陸路でEU各国を目指す。 いわゆるバルカンルートと言われている難民ルートである。
ところが、フランスのパリでの同時多発テロ以来、オーストラリアやクロアチア、スロベニアなどEUの中で難民の入国を厳しく制限する国や、入国そのものを受け入れない国が出てきており、難民の移動が難しくなってきている
のだ。
ギリシャに隣接するマケドニアの国境にもフェンスが張られて国境管理が強化されている。 そのためギリシャ北部の町イドメニ村には1万4000人
を越す難民が行き場を失って立ち往生。 イドメニ村の難民受け入れの施設は収容人数が1500人と少ないため、1万人を越す大勢の難民が寒さの中
、食料も水も不十分なまま、持参のテントを張り急場を凌いでいる。
現地の国連・難民高等弁務官事務所の担当者は「日に日に状況は悪化しており、このまま解決策が見つからなければ、人道上最悪の事態に陥る懸念がある」と警告を発している。
そんな中、 数日前には越境を阻害された難民ら数百人が
、国境越えのためにフェンスを破ろうとしたものの、マケドニア警察は催眠弾の発射で応酬し入国を阻止。 越境は叶えられなかった。 その結果、難民たちは厳しい環境の中、苦難に耐えて出国のチャンスを待つか、アテネの難民キャンプに戻るかの選択を迫られている。
しかし、ギリシャには
現在トルコからは日々2000人近い難民が入って来ており、1〜2月の難民の数は既に12万8000人、昨年同期の30倍に達している。 入国は出来たものの出国できない、
そんな状況下、ギリシャに留まる難民の数は急増し、ギリシャ政府も日に日に対応が難しくなって来ている。
政府は港のフェリーに宿泊させたり、2000人が収容出来る滞在センターをアテネに新設したりしているが、受け入れが限界に達するのは時間の問題となっている。
そのため、人道危機が起きないよう、EUは3年間で計860億円の緊急支援策を発表しており、その一部をギリシャに振り向けようとしているが、ギリシャの街に溢れた難民の姿(写真下2枚)を見たら、受け入れが限界が近づいていることが分かる。
次回は難民問題の鍵を握るトルコと、難民対応で亀裂が生じ始めているEUに関する情報をお伝えすることにする。