読者は10年ほど前にロシアの元情報将校だった人物がイギリスで毒殺された事件を覚えておられるだろうか。 情報部員が海外で暗殺されるといった事件はままあることなので、記憶に残ることは滅多にないのだが、この事件は緑茶に入った猛毒の放射性物質「ポロニウム」が死因ではないかと騒がれた特異な事件だったので、その残虐性が頭から離れず記憶に残っていた。
事件は2006年の11月に発生、被害者リトビネンコ氏は体調不良を訴え3週間後に亡くなっている。 その後、被害者の妻マリーナさんの要求に応じて、イギリス内務省によって第三者調査委員会が設置され、調査が続けられてきたわけであるが、調査委員会は21日、殺害はロシアの情報機関「連邦保安局」(FSB)による可能性が極めて高く、この計画は恐らくプーチン大統領によって承認されたものと思われる、という報告書を発表した。
11年前といえば当時の大統領はプーチン氏。 ロシア連邦保安局・FSBに所属していたリトビネンコ氏はプーチン大統領や政府のやることに疑問を抱き、批判を口にした後イギリスに亡命、家族とロンドン市内で暮らしていた。 彼はその後、イギリスの対外情報部(M
I 6)に協力していたこともあり、既に当時から、暗殺を指示したのはプーチン大統領ではないかという噂が広がっていた。
今回の調査委員会の報告書はそうした疑惑を改めて裏付けるものであり、イギリスだけでなく海外からもやはりそうであったかと受け止められているようである。 問題はウクライナやシリア内戦への対応などで対立が続いている時だけに、イギリスとロシアの関係がさらに悪化するのではないかという懸念である。
イギリスのメイ内相は、ロシア政府の関与を示唆した調査結果について、下院で「極めて不快である」と述べ、「許容できない国際法違反である」と非難している。 当時の大統領がプーチン氏であったことを考えれば、彼の指示による可能性は十分にあり得るだけに、これから先彼がどう動くか気になるところである。 場合によっては今回の報告書の発表もまた、最終戦争に向かって一歩を刻むカードとなるかもしれない。
国家の歳入の半分が原油・ガスのロシアは、今や原油の暴落で財政は一段と厳しい状況に追いこまれており、予算の10%削減を余儀なくされている。 さらにそれに追い打ちをかけているのが通貨ルーブル安である。 通貨は1ドル=84ルーブルと、1年半前に比べると60%も下落しており、ヨーロッパでは1ドル100ルーブルまで暴落する可能性も囁かれている。 もしかすると、ロシア金融危機が世界経済崩壊の引き金となるかもしれない。