一時凌ぎとなる可能性大
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17〜18日開催されたEU首脳会議でトルコの提案した難民解決案合意
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どうやらシリアなどからの難民問題は、トルコのダウトオール首相も参加して行われた18日のEU(欧州連合)首脳会議で、一応の決着がついたようである。 その内容はこれまでにお伝えしてきたように、およそ次のようなものとなった。
@ トルコ経由でギリシャに渡った難民や移民をギリシャの政府機関がチェックし、原則的にその
全てをトルコに送り返す一方、同じ数のシリア難民をEU各国が受け入れる。
A 現在トルコに留まっているシリア難民の内、7万2000人をEU各国が受け入れる。
B トルコのEU加盟に向けての交渉を加速する。
C トルコ国民のEUへの渡航ビザを6月末以降免除する。
D EUは2018年までに30億ユーロ(3700億円)をトルコに支援する。トルコ国内
に留まっている270万人のシリア難民たちのための学校建設などの支援をする。
一見、難民問題の全面解決に向けて大きく前進したかのように思えるが、問題点は多く残されており、さらに今回の合意によって、「地中海ルート」の復活やトルコからのクルド人難民の発生など、新たな難問が発生することになりそうである。
トルコへの難民の流入は減少するか
先ず気になる点は、今後、ギリシャに渡ってもそこから先に進めないことを、難民たちがどう受け止めるかという点である。 難民は皆、好き好んで海外に渡っているわけではない。 シリアに残れば自分や家族が命を失う可能性が大きいが故に、命がけでヨーロッパ各国を目指しているのだ。
それを考えれば、今回の合意で難民が激減することは考えにくい。 なんとかならないかと、トルコへの流入はしばらくは続くことになるのではないかと思われる。 さらに心配なのは、トルコ政府がこれから先、厳しくすることになる密航業者の取り締まりによって、トルコに入ってきた難民の密航をストップすることが出来るかどうかという点である。
なにしろ、トルコからギリシャに向かうエーゲ海の海岸は何百キロに渡っており、密航船を全て止めることは不可能ではないかと思われるからである。もしも、トルコ政府が密航を完璧に止めることが出来たとしたら、今度はトルコ政府にとって新たな問題が発生する。 トルコ入りした難民・移民をトルコ政府がすべて保護しなければならなくなってしまうからである。
「地中海ルート」の激増
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地中海ルートで渡る難民が急増しそうである
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10メートルのゴムボートに150人が乗る
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さらに心配なのは、トルコ、ギリシャ経由の「バルカンルート」が難しいと判断した人々が、アフリカのチュニジアやリビア経由でイタリアに渡る「地中海ルート」に押し寄せることになりはしないかという点である。 現在「地中海ルート」は難民全体の10%に過ぎないが、比率が「バルカンルート」と逆転することになるかもしれない。
現に、イタリアの沿岸警備隊は15日と17日に地中海のシチリア島の沖合でヨーロッパを目指す2400人余の難民・移民を救助したことを明らかにしている。 彼らは10メートルの小さなボートに150人が乗ったすし詰め状態であったという。 これでは、少しでも荒波が立てば全員が海の藻屑と化すことになる。 距離が長い分、バルカンルートの渡航より遙かに危険度が大きいだけに、地中海ルートへの移行が増せば死者の数は激増し、我々はその悲惨な姿を日々映像で見ることになりそうである。
懸念されるクルド人難民のヨーロッパへの流入
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国家を持たない世界最大の民族と言われるクルド人はおよそ3000万人。
その内のシリアのクルド人組織が17日、自治開始を宣言。 その影響は
多くのクルド人が住むトルコにも及ぶことになりそうだ。これから先、難民の受け入れ国
であったトルコは、クルド人問題で自国からの難民が発生することになりそうだ。
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もう一点心配なのは、ヨーロッパを目指す新たなクルド人の移民が急増することになりはしないかという点である。 トルコの政治情勢の不安からクルド人組織によるテロが発生していることは、読者は既にご承知の通りであるが、先日の爆弾テロ以降、トルコ政府
が一連の爆弾テロをクルド系武装組織(PKK)による犯行と断定し、本格的な国内のPKKに対する掃討作戦を始め出している。
問題は、この掃討作戦への巻き添えを恐れたトルコ南東部に住む多くのクルド系の人々が、難を逃れようと欧州に
避難することである。
今回のトルコ政府とEUとの合意事項である「トルコ国民のEUへの渡航ビザを6月末以降免除」事項が実施されたら、ヨーロッパへの移動が容易になるため、大量のクルド人が
「表ルート」を通じて、EU各国に押し寄せることになりそうである。 また、17日に行われたクルド人組織の自治開始宣言も、避難を加速させることになるかもしれない。
こうして見てみると、今回のEUとトルコとの合意による難民問題の解決案は一時凌ぎに過ぎず、これから先も次々と難問が発生し、各国間の意見がまとまらなくなれば、最悪の場合にはEUの崩壊に向かって進むことになるかもしれない。 唯一、抜本的な解決方法は、現在シリアやイラクで発生している様々なテロや内戦を終了させることである。
どうやら、難民問題の行方は、現在、行われているシリア和平協議の行方次第となって来ているようである。
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