プーチン戦略着々進行
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15日早朝、続々と帰還するロシアの戦闘爆撃機
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スイスのジュネーブでシリア和平協議が再開されたタイミングに合わせたかのように、プーチン大統領がロシア軍のシリアからの撤収を発表したのは、14日。 早くもその日の夜から
撤収が始まり昨日には戦闘機の一部がロシアに帰還。 ロシアの国営放送はその様子をトップニュースで伝えていた。
先陣を切って帰還を果たした戦闘爆撃機のパイロットたちは、空港で仲間の兵士たちに胴上げされたり、家族からは花束をもらって大歓迎を受け、司令官からは「定められた目標を正確に爆撃し、ロシアの空軍の力が最高レベルであることを、世界に示した」とお褒めの言葉を
頂いて勲章を受けていた。
米国やヨーロッパの首脳陣にとっては意表を突く撤収表明であったが、それにしても、今回のプーチン大統領の撤退の決定はなんとも絶妙なタイミングであった。 ジュネーブの和平会議の進展を後押しする面を持っていると同時に、ロシアと大統領自身にとっても得るものが大きく、まさに一石二鳥、いや3鳥となる意味のある撤収であった。
このところの中東情勢の動きを見ていると、まさにプーチンの思うがままに動かされているようで、オバマ政策は後手後手となり、米国の威光は一段と
弱くなってしまったようである。 ここまでの中東危機の動きを見ていると、プーチンが表舞台に登場し、オバマは影が薄くなってしまった感が強い。
昨年9月、ロシアは突如としてシリアへの空爆に打って出た後、IS(イスラム国)撲滅を旗印にロケット弾と爆撃機による空爆を続け、それまで米国と
その同盟国による爆撃ではIS(イスラム国)に対する目立った効果が出ていなかっただけに、さすがはロシア軍と世界の注目を集めるところとなった。
既にお伝えしてきたように、ISの資金源となっていた原油採掘施設や石油輸送車両
に対するロシア軍の爆撃は、それまでのアメリカ軍のやって来た軍事行動が、いかに手を抜いたものであったかを世に知らしめるところとなった。 同時に、ISの裏にイスラエルや英米の一部の勢力がついていることを改めて示す
ところともなった。
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アサド政権側につくシリア国民にとって、ロシアの空爆参加は
大きな救いとなっただけに、彼らは旗を振ってロシア軍を送り出した。
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ロシアのショイブ国防相は、昨日、「この半年間でロシア軍機は9000回以上出撃、2000人以上の戦闘員を殺害、400の市町村を開放した」と語っていた。 もちろん攻撃の対象となったのはISだけでなく、アサド政権に対抗する反政府軍も含まれていることは間違いないが、ISにしろ反政府軍どちらの勢力も
、アサド政権存続を願うロシアにとって敵対勢力であることに変わりはなく、多大な軍事費を使っての今回の空爆作戦は大いに意味のあることであった。
しかし、これ以上空爆を続けると大きな「負の面」が表面化することになる。 軍事費はかさみ、兵士の死傷者も出てくる可能性があるからである。 今なら作戦はほぼ思う通りに
達成しており、ロシア兵士の血を流さず、混乱に引き込まれることもなく撤収することが出来る。
ロシアは今、原油の大幅な値下がりで経済難に陥っているだけに、これ以上作戦を続けると国民からの支持が得られなくなって来る可能性は大である
だけに、絶妙な撤収のタイミングであったことは確かだ。
今回の撤収が和平協議や今後のシリア情勢にどう影響を与えるかは、現段階では不透明であるが、一つ確かなことは、シリアや中東情勢がこれから先安定に向かって進むことはなく、一歩間違えれば
第3次世界大戦に向かって大混乱状態となることを、プーチン大統領がしっかり把握していることである。
ロシア軍は撤収したものの、その規模や今後のスケジュールについては明らかにしていない点は気になるところである。 シリアのラタキア近郊の空軍基地や地中海沿岸のタルトゥース基地はそのまま維持し、シリア政府軍の軍事顧問として1000人ほどが残留することになるようなので、和平プロセスが思惑通りに進まない場合、部隊を再び増強する可能性は残されている。
どうやら、これから先の行方は和平協議の行方次第となりそうである。
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ロシアに帰還した兵士たちは、まるで英雄のように家族や兵士仲間に迎えられた。
次なる出兵の時には、このような帰還光景は見ることは出来ないのではなかろうか。
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