カタルーニャ州で行われたスペインからの独立の是非を巡る投票で、賛成派が多数を占めたものの、投票そのものを認めない中央政府との間で対立が続くまま、既に数週間が過ぎて来ていた。
そんな中、昨日(日本時間の夜10時)、カタルーニャ州の議会で独立を宣言する議案が賛成多数で可決され、プチデモン州首相が独立を宣言するところとなった。 広場に集まり、議会の審議が中継されるテレビを見守っていた独立賛成派の市民は、独立宣言が発表されたのを目にし、歓喜の声を上げ、カタルーニャ語で州の歌を歌い涙を流しながら抱き合って喜んでいた。
一方、時を同じくして開かれた中央政府の議会の上院では、憲法に基づいて自治州の自治権を停止する処置が承認され、プチデモン州首相を更迭するなど、州政府を中央政府の管理下に置くことが決定された。
問題は政府と自治州の亀裂が決定的となったこれから先の行方である。 州の自治権のはく奪はスペインの歴史の中で始めてのことであり、それがどのような形で行われ、現実に機能するのか予測がつかないからである。 問題点は幾つかあるがその代表的な点は、次の2点。
@ 州の中でも独立賛成派と反対派が二分されていること。
A 州政府の役人や警察官などの中には中央政府の命令に従わない者もいること。
@ カタルーニャ州を豊かにしてきた大手企業が、本社を他の州に移す動きが出て来ていることから、経済への影響が懸念されるため、州内の市民同士の対立が激化することになりそうである。
一方、Aを考えると、州政府が機能できなくなる可能性があり、その結果、独立賛成派の抗議行動が一段と活発化し、大規模な警察との衝突が発生することが予想される。 いずれにしろ、スペインがこれから先、大混乱に陥ることは避けられそうになさそうである。
今回の独立宣言に対して、EU(欧州連合)のトゥスク大統領をはじめ、ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領は皆揃って、スペイン政府を支持する考えを明らかにしている。 今はそうだが、これから先、スペインで衝突が発生し、負傷者や死者が出るような事態になった時、全面的な支持を維持し続けることが出来るかは確かではない。
気になるのは、いまヨーロッパでは、ハンガリーやオーストリアなど中央ヨーロッパ諸国において、EUからの独立を目指す右翼系の政党が実権を握り出しており、そうした国々がカタルーニャ州の独立を支持する方向に向かうことである。 もしも、そうした事態が発生したら、EU分裂の動きに拍車がかかることになるかもしれないだけに、これから先、世界はスペインの動きを注視し続けることになりそうである。
私自身は、EUはいずれ崩壊することになると思っているが、英国のEUからの独立がその第一弾だとすると、今回のカタルーニャ州の独立をめぐるスペインの混乱は、第二弾になるのではないかと受け止めている。 いずれにしろ、その点は遠からずして、はっきりして来るのではなかろうか。