一昨日、トルコのテレビは信じられないニュースを伝えていた。 今ノルウエーで行われているNATO(北大西洋条約機構)の軍事演習で、敵を示す標的に加盟国であるトルコのエルドアン大統領
や建国の父アタチュルクの名前や写真が使われていた、というのだから驚きである。
トルコ軍の幹部からその事実を知らされたエルドアン大統領は、早速、強く抗議すると同時に、演習に参加していたトルコ軍の兵士約40人ほどに引き上げを命じた。 こうした事態を受け,NATOは演習参加者が個人的に行った行為であるとして、関係した将校や民間人を処分すると同時に、
ストルテンベルグ事務総長自らがエルドアン大統領に謝罪するところとなった。
それにしてもなんとも奇妙なことだ。 NATO加盟国が参加し合同で行う演習で、加盟国のトップの名前や写真が張られた標的に向かって発砲する
ことなど、あり得ないことであるからだ。 我が国のマスコミは簡単な記事やニュース報道で済ませているが、以前から、トルコはロシアとEUとの間の仲介役として重要な役割を担って
来ている国だけに、簡単に済まされることではないはずだ。
米国から軍用機の購入を拒絶されたことから始まった米国とトルコとの間の亀裂は、いまも一向に改善されないままである。 また、EU諸国、特にドイツとの関係悪化もそのままの状態が続いている。 そうした状況下での今回の信じ難いトラブルだけに、エルドアン大統領はEUに対する不信感を
一段と高めるところとなったことは間違いない。
一方、トルコを米国やEUから引き離して協調関係を結びたいプーチ大統領にとって、エルドアン大統領に米国やEUに対する強い不信感をもたらした今回の問題は、まさに吉報。 ロシアがこれを機に
、一段とトルコとの関係強化を進めることは間違いない。
宗派間の争いでくすぶり続けている中東諸国間に、これから先きしみが生じてくるようなら、「ハルマゲドン」に向かって世界情勢は一段と厳しさを増してくることになりそうである。 エルドアン大統領とプーチン大統領の発言や動きには要注意だ。