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昨年の台風10号と
 ハリケーン「オフィーリア」が示す異常事態

 
 

 
 


異例な進路をたどり、アイルランドを直撃したハリケーン「オフィーリア」
 

 


オフィーリアの発生地点は通常のハリケーンと大きく異なり、
イベリア半島のポルトガルの西の海上であった。

 

読者は昨年の夏、日本列島の東の海上で発生した奇妙な台風のことを覚えておられるだろうか。 これまでの常識では台風の発生場所は 、日本列島から2000キロ以上離れた沖縄諸島の南の海上であった。 ところが、昨年の8月に「台風が示す異常気象」「気候変動のサインを見逃すな」に記したように、台風10号と11号は通常より遥かに緯度の高い日本列島の東の海上 で発生。 

さらに驚かされたのは、台風10号はそこから南の海上に向かって進行し、1週間ほどかけて南大東島の東南まで南下。 その後、Uターンして発生場所の近くに戻ったのち、東北地方に 大きな被害をもたらし、さらに西に向かって中国とロシアにも洪水を発生させている。

このように発生場所が異常なだけでなく、その後の進路もこれまでにない道筋をたどっている。 実は、それと同じように異常な現象が、今年は大西洋 上で発生しているのである。 通常、アフリカ大陸の西の沖合で発生した低気圧は発達しながら、さらに西に向かって進み、ハリケーンとなってカリブ海諸島や米国の東海岸に上陸するのが 常識であった。 

しかし、前回「ポルトガルの森林火災も史上最悪へ」で記したハリケーン「オフィーリア」は、上の図を見て頂ければお分かりのように、通常より遥か北の海上で発生。 その後、西ではなく北東に向かってポルトガル沖合を通過して、イギリスとアイルランドに向かうという、ハリケーンとしては史上初めてのコースをたどることになったのだ。

「オフィーリア」は一時勢力をカテゴリー3まで伸ばした後、熱帯低気圧に弱まったものの、アイルランド北部を直撃した際には、最大風速35メート の勢力を保ち、各地で屋根瓦を吹き飛ばしたり、停電を発生させ、3名の死者が出たようである。 またアイルランドやイギリス各地で不気味な「紅色の空」と 「赤い太陽」が目撃され、シェークスピアの戯曲『ハムレット』で自殺した少女「オフィーリア」を思い出し、おびえる人も少なくなかったようだ。

 

何故、こんな異常現象が発生するのか?

 
 

 
 


昨年の春には、緯度の高いエリアを流れる「寒気ジェット気流」が
赤道に近い「亜熱帯ジェット気流」を貫いて南に流れ込み珍現象が発生した。

 
 

発生場所がこれまでに前例がないほど緯度の高いリベリア半島の西側海域で発生したという点と、西に向かわず北に進路をたどった点は、まさに台風10号と同様、 前例がない驚くべき現象であった。 しかも、このハリケーン「オフィーリア」は、これまで大西洋東部で発達したハリケーンの中では、風速毎時160キロという最も強い暴風となっているのだ。

なにゆえこうした異常な現象が発生して来ているのか? それは海水の温度と大気の流れがこれまでにないほど、大きく変化を遂げているからである。 海水温の上昇 要因として考えられるのは、宇宙からのエネルギーが強くなっていることと、海底火山の噴火が想像以上に発生して いるためではないかと言われている。

地球上空を流れているジェット気流には、北を流れる「寒気ジェット気流」と、赤道に近いエリアを流れる「亜熱帯ジェット気流」があるが、今回の大気の流れの変化は、 「寒気ジェット気流」が通常の流れから逸脱し南に大きく突出して来ているのが要因と思われる。 2016年には寒気ジェット気流が亜熱帯ジェット気流の帯を貫いて赤道まで達するという異常事態が発生している のだ。

こうして海水温が上昇する一方で、「寒気ジェット気流 」の南下によって上空の大気が冷やされ、これまでとは違った高緯度で台風やハリケーンが発生し、異常な進路をたどることになっているようである。 こうした動きについて、オタワ大学のポール・ベックウィズ教授は次のように述べている。

「北半球のジェット気流が赤道を越えて進行し、南半球のジェット気流と合流するという事態が起きました。これは今までになかった新しいジェット気流の動きであり、このことは、気候システムの騒乱が進行中であることを示しています」

「現在の気候システムの動きは、私たちが予想し得ない気象の状況を作りだすか、あるいは過去に経験したことのない新しい、あるいは恐ろしい方法で私たちを驚かせ続けるかもしれません。私たちは今、地球規模の気候緊急事態を宣言しなければなりません」 
 ( 2枚の図と共に、In deep より引用させて頂いた)

これから先、人類はベックウィズ教授が 言われるように、上空や海底で発生する地球的規模の変動によって、気候システムに異変が生じ、過去に経験したことのない異常事態に遭遇することになりそうである。  どうやらそれこそが、ポロハウ長老が伝えて下さった「ウオータークロックの到来」の意味するところであったようだ。

高温と乾燥が続くカリフォルニア州の森林火災は、発生から10日経過した今もなお燃え続けており、一向に収まる気配がない。 驚くことに、23日のロスアンジェルスの予想気温は39℃と、今年の最高気温に並ぶことになるようだ。 またポルトガルの森林火災も同様で 依然として燃え広がっており、6月の火災と併せて100人を超す死者が出た責任をとって、担当の内相が辞任する事態となったようである。




 

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