米国のトルコに対する関税率の引き上げの発表を受けて、トルコの通貨リラが一時40%も下落したことや、その影響で、米国とトルコの関係悪化や欧米諸国への経済的悪影響が懸念されることは、先日、「米国のトルコへの制裁がもたらしたものは」でお伝えした通りである。
こうしたトルコ通貨の急落は一方で、中国、インド、ブラジル、南アフリカ、それにアルゼンチンなどの新興国の通貨の下落を引き起こす所となった。 中でもインドのルピーやアルゼンチンのペソは30日に過去最安値を更新、両国経済に大きな悪影響を及ばしている。
通貨の下落は輸出産業に依存している国なら、輸出量が伸びるので歓迎する面もあるが、インドのように輸入が輸出を大きく上回る国では外貨不足をもたらすと同時に、物価が高騰するためインフレを発生させることになる。 インドは特に原油輸入国でその量が多いため経済的打撃が大きくなっている。
一方、アルゼンチンはペソの下落、特にドルに対する下落は大きく、今年に入ってから半値となっており、物価の高騰を招いている。 それに対応するためアルゼンチン中央銀行は今年に入ってから政策金利を上げ続け、今月13日に40%から45%に引き上げたばかりなのに、30日にはとうとう60%にまで引き上げる事態となった。
ここ数年、ゼロ金利政策が続く我が国では、金利が60%と言われてもピンとこないが、100万円の借金をしたら、1年間の利息が60万円になるのだから尋常ではない。 物価が高騰するだけでなく金利までが信じ難い高さになっては、貧困者は生きていけなくなってくる。
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通貨や金利の動きに呆然とする市民
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IMFからの融資に反対する人々のデモ
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不安が広がるアルゼンチンと世界経済の先行き
アルゼンチン政府はペソ安を食い止めるため、IMF(国際通貨基金)に金融支援を要請。 ところが、これに対して国民からは反発が起きており大規模なデモが発生している。 アルゼンチンは既に8回も破綻を繰り返してしており、そのたびにIMFからの支援を受けてきているが、その結果、国民にはその都度、厳しい経済改革の負担が重くのしかかった経緯があるからである。 どうやらこれから先、アルゼンチンは相当厳しい状況下に置かれることになりそうである。
こうした現象が新興国で起きている要因は、これまで欧米の国々で日本と同様ゼロ金利政策がとられていたため、世界の投資家は金利の高い新興国へマネーを預けたり投資をしていた。 しかし、米国の中央銀行が景気の回復によって金利を上げ始めたため、投資家たちは新興国からマネーの引き上げを始めたのだ。
そのため、新興国通貨は下落し物価は高騰する一方で、米国株式市場の株価は高騰し、史上最高値を更新し続けるところとなっているのだ。 心配なのは新興国とは言え覇権国家を目指す中国通貨の人民元や欧米からの制裁が続くロシア通貨ルーブルの下落も進んでいることである。
トルコやアルゼンチンなどと違って中国やロシアは、大幅下落を止める手立てがあるので、今しばらくは大丈夫だと思われるが、米国との貿易戦争や経済的制裁が一段と進むようなことになった時には、経済的混乱は避けられないかもしれない。
その時には、いよいよ世界の株式市場の大崩壊が始まることになりそうである。 いずれにしろ、これから先、新興国の状況だけでなく、中国やロシア、またスペインやイタリアなどの経済状況から、益々、目が離せない状況になって来そうである。