既に何回にわたってお伝えしてきた米中間の関税合戦。昨日その第3弾が発令された。 米国が行った第1弾と第2段の関税対象額は総額500億ドル(5兆6000億円)
で関税率は25%。 これに対して中国も同額の報復関税を実施。
こうして始まった関税合戦はさらに進んで、18日には中国からの輸入品2000億ドル(約22兆4000億円)分に10%の追加関税を24日から実施ると発表。 これで昨年の中国からの総輸入額5050億ドルの約半分に追加関税を課したことになる。 これに対して中国も時を置かずに米国からの輸入商品600億ドル(6兆7000億ドル)に対して5~25%の追加関税を課すと発表。
今回の中国の対抗措置、対象品目や課税率を見て、トランプ政権は恐らく来年早々には、今回の2000億ドル分の追加関税率を10%から
更に上乗せする可能性が大きい。 それどころか、残された輸入品額約25兆5000億ドル(28兆5600億円)にも追加関税を行う可能性も
ありそうだ。 既にそれらしい発言をしているからである。
25兆5000億ドルへの追加関税の問題と同時に気になるのは、中国がこれからとる対抗措置である。 というのは、中国に残された追加課税
の対象となる米国からの輸入額は400億ドル超しかないからである。
昨年、中国が米国から輸入している輸入額の総額は約1570億ドル。(朝日新聞のデーターでは1539億ドル) いずれにしろ、米国への輸出品のおよそ3分の1
未満である。 したがって昨年に比べて今年米国からの輸入額が極端に増加しない限り、中国としてはこれ以上課税額を増やす対象品目はが470億ドル~439億分しか残されていないことになる。 第3弾の米国による2000
億ドルへの課税に対し、報復関税額が600億ドルと抑えられているのはそのためである。
トランプ政権は27,28日に米中の閣僚級の貿易協議を行おうとしているが、中国がこの会議を受け入れるかどうかも見ものである。
もしも、この会議で前向きの妥協点が見つからないようなら、年末から年初にかけてひと波乱ありそうである。 そして、中国だけでなく米国の経済や通貨にもその波は押し寄せるる可能性は大である。
貿易戦争と化した関税合戦が次に向かう先は日本
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このような和やかな笑顔で首脳会談を終えることが出来るだろうか
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いずれにしろ、関税合戦は今やまさに貿易戦争と化して来ていることは間違いなく、その波紋は米中両国間だけでなく、我が国を含めEU諸国やインドやカナダ、メキシコなど多くの国々にも悪しき影響を与えて始めている事は確かだ。
自国優先の度を越した保護主義は各国間の協調路線をないがしろにし、大切な信頼感が消えてしまうことになる。 これから先、こうした考えが世界に蔓延することになるようなら、その先に見えるのは「対立」であり、「争い」であり、やがてそれは世界を「戦場」へと導いていくことにな
りかねない。
しかし、トランプ大統領にとって貿易戦争は自らが仕掛けたものだけに、今や止めるわけにはいかない状態となっており、これから先、世界的に国際関係が相当ぎくしゃくして来ることは避けられそうもなさそうである。
中でも我が国は、米国に世界最大数の3万社を超える企業が進出しているだけに、その影響は大きくなりそうだ。 トランプ政権が中国との関税問題に一応の決着がついた後、狙いをつけているのが日本であることは確かである。
既に6日のウォールストリート・ジャーナル紙は、同社のコラムニストがトランプ大統領と電話でインタビューした際に、日本との貿易問題に触れ「貿易赤字の解消のために、日本がどれだけ米国に対して払わねばならないかを伝えた瞬間、安部首相とのこれまでの友好関係は終わ
ることになるだろう」と語ったことを伝えている。
どうやら、来週25日(火)にニューヨーク行われる予定の日米首脳会談は、これまでにない激しい貿易交渉が行われることは間違いなさそうである。