貿易戦争に向かう米国と中国
トランプ政権、対中国関税25%を発表
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上乗せ関税が進められ、米中の貿易摩擦は増す一方である。 |
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世界的な貿易戦争の動きに火をつけたトランプ政権。 ここに来て一段とその動きに拍車がかかり出したようである。
米国と中国との貿易摩擦の始まりとなったのは、中国から米国へ輸出する品目に対する関税の上乗せであった。2017年の中国から米国への輸入額は5056億ドル(約55兆円)、一方、米国から中国への輸出額は1539億ドル(約17兆円)。
中国に対する関税上乗せの第1弾・340億ドル(3兆8000億円)が発動されたのが、7月6日。 第2段・160億ドル分(1兆8000億円)は
間もなく発動が予定されており、上乗される税率はどちらも25%。 その後、トランプ大統領は第3段として輸入総額の約40%に当たる2000億ドル分
(22兆円)という膨大な輸入品に、上乗せする予定であると発言して来ていたが、その上乗せ税率は10%と抑えられていた。
ところが、昨日、上乗せ税率を25%とすることを発表。 世界に衝撃が走った。 全てが11月の
中間選挙目当てであることを考えれば、9月中には発動することになるものと思われるが、これで中国からの輸入総額の50%に対して、25%という高関税が課せられることになる
わけだ。 対する中国も既に500億ドル分については同率の関税を発動しているが、新たな2000億ドル分について中国政府はどう対応することになるのだろうか。
現時点で、中国が課すことのできる米国からの輸入額は、あと1000億ドルしか残っていないため、同率の25%の上乗せ関税では対抗できない。
したがって、税率を50%に引き上げるか、別の対抗措置をとるしか方法はない。 しかし、50%まで引き上げれば中国人は米国製の製品を購入する際に、従来の購入価格に比べておよそ50%も価格が高くなってしまう
ことになる。 これは現実的ではない。
そのためか、今回の米国の発表に対して中国外務省の報道官は直ちに報復措置を取るとは語らず、「米国には態度を正し、理性を取り戻すよう忠告する。 最終的には自らを傷つけるだけだ」とするコメントを発表するにとどまっていた。 しかし、今朝のニュースでは500億ドルに報復関税を課すことを決めたようであるが、その税率は明らかにされていない。
トランプ大統領のことだけに、もしかすると、これから先、残りの2500億ドル超にも課税することも無きにしも非ずである。
こうした動きが続けられるようなら、南シナ海問題を含めてこれから先、米中間の関係が一段とぎくしゃくしてくる可能性が、増してきそうである。
ドイツ政府、中国企業による買収を拒否
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最近の経済界の動きを見ていると、外国のハイテク技術など知的財産をサイバー攻撃や企業買収によって中国が不当に入手しているという不信感や危機感が欧米を中心に世界で広がって来ている。 そうした状況下、中国との貿易の拡大を精力的に進めて来ていたドイツでも、中国に対する警戒感が出始めてきたようだ。
中国企業によるドイツ企業の買収に対して、ドイツ政府がストップをかけることになった。 中国から狙われたのは従業員200人の小規模な耕作機械メーカであるが、この企業は航空機や宇宙船の部品の製造会社として名の知れた企業である。
買収を目論んだ中国の企業は、買収後、航空機や宇宙産業だけでなく原子力産業にも、技術力を転用しようとしていたようである。 そうしたことから、ドイツ政府はドイツの安全保証を脅かすことになるとして、買収にストップをかけることを決断したというわけである。
中国のこうした動きは今や世界中に広がって来ており、我が国も恰好の相手とみなされていることには変わりはない。 既に我が国からは新幹線などの技術をはじめ、様々な分野におけるハイテク技術が中国に
盗用されて来ていることは、周知の事実である。 ドイツだけでなくEU各国においても同様な警戒感が広がっているのである。
これから先、欧米諸国や我が国と中国との間に、様々な面で摩擦が生じてくることは避けられないようである。
こうした動きを受けて、中国企業の欧米に対する投資は様々な面で難しくなって来ており、中国経済に打撃を与えるところとなってきている。 下の図を見て頂ければお分かりのように、昨年2017年の上期における米国に対する投資額はおよそ10分の1、またEUに対しても5分の1近くに減少している。
覇権国家を目指して軍事面、経済面で世界に打って出ようとしている中国であるが、海洋進出や軍事拠点の拡大、アフリカや東南アジアの国々に対する度を越した投資など、昨今の習近平主席の政策は常軌を逸している面が多くなって来ているだけに、
世界的に政治や経済が混乱に陥り出した時には、中国国家を揺るがす激震が発生することになるかもしれない。
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