19日のイスラエル議会で可決された法案について、我が国ではほとんど報道されていないが、これは大変問題のある法案で、これによってイスラエルとパレスチナやアラ諸国との溝は一段と深まり、更なる紛争の火種になるのではないかと案じられている。
その問題の法案とは、イスラエルが「ユダヤ人の国家」であるとことを明記した法案である。 読者は一見当たり前な法案であり、どこに問題があるのかと思われるだろうが、イスラエルの地はもともとアラブ系のパレスチナ人が暮していた土地であった。 そこに英国などの支持を得てユダヤ系の人々が国家を樹立したのが今から半世紀以上前のこと。
その後、建国されたイスラエルは、何回にもわたる中東戦争でパレスチナから領土を奪い、、1967年の第3次中東戦争でほぼ現在の領土をイスラエル領としたのである。 その結果、イスラエルには今も多くのアラブ系住民が暮らしており、その割合は
約870万人口のうちの約20%で175万人に達している。
そうした特殊な国家であるイスラエルが今回の法改正で、イスラエルはユダヤ人の国家であるとしたことは、分かりやすく言えば米国が「白人系の米国人の国家」であると宣言したようなものである。 その結果、ユダヤ人の使うヘブライ語を公用語として指定し、アラビア語を公用語から外すことになった。
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議会で紙を引きちぎってまき散らすアラブ系議員
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ネタニヤフ首相は議会で全ての国民は平等であると述べているが、今回の法改正によって、単に言語だけでなくあらゆる面において、アラブ系国民に対する差別が発生してくることは明らかである。 法案の可決が賛成62に対して反対が55であったことを見れば、この法案にはユダヤ系国民全体が賛成しているわけでないことが分かる。
現に、米国のユダヤ系の組織からも、今回の法案可決によってイスラルはユダヤ寄りとなり民主主義的国家でなくなったと、強い失望と批判の声が出ている。 当然ながらイスラエルに住むアラブ系住民やパレスチナなどアラブ諸国からも強い反発が声が上がっている。
ガザ地区に住むパレスチナ人の強い抗議に対して、イスラエルはイスラム原理主義組織ハマスの軍事施設に攻撃を加え4人の死者が発生。 これでは、中東和平の道のりが遠のくどころか、聖書の予言通りにハルマゲドンに向かってさらなる一歩を踏み出すになりそうである。
どうやら、トランプ大統領からの強い支持を背景にネタニヤフ首相の進める強引な政策は、取り返しのつかない結果を生むことになりそうである。