シリア反政府軍が支配してきた地域、北部の古い都アレッポや首都近郊の街・東グータ地区が、アサド政府軍とロシア軍によって次々と空爆され、多くの死傷者が出たこと
は「アレッポの悲劇」や、「シリア・拡散する生き地獄」でお伝えして来た通りである。 その惨状を国連のグテーレス事務総長が、「この世の地獄だ!」と語っ
たことは、読者の記憶に残っていることだろう。
同じシリアで半月ほど前から、わずかに残された反政府軍の拠点の一つであるダラアの町に対するロシア空軍とシリア軍による空からの空爆
と地上からの砲撃が開始されていたが、その惨状がカタールのアルジャジーラによって伝えられた。 アルジャジーラは今回の事態は30万人が一度に避難するという、シリア内戦が始まって以来の最大の悲劇であると伝えてい
た。
今回の悲劇の要因は、突如始まった空爆が2週間に渡って行われ続けたことと、市民が避難しようとした隣国ヨルダンへの国境が封鎖されてしまったことであった。 ダラアの町は
ヨルダンとイスラエルとの国境沿いにあるため、市民が避難するには両国との国境を超えるしかなかたった。 しかし、ヨルダンは既に多くの難民を抱えていたことから国境を封鎖
し、イスラエルもこれまでの封鎖を解こうとはしなかった。
そのため、街を離れた人々の避難先は国境沿いの砂漠地帯となってしまった。 避難者たちは40度近い酷暑が続く中、水も食べ物も手に入らない砂漠に粗末なテントを張り、家族で過ごすことになってしまったのだ。 そのため熱射病や水不足で幼児たちの死者が続出。 まさに「生き地獄」と化してしまったのである。 これを「生き地獄」と呼ばずに何と言うのか。
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ヨルダンとの国境周辺の砂漠地帯に集まった避難民たち。
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粗末なテントで暮らす人々が置かれた環境が、いかにひどいものかを物語っている。
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足を負傷した男性が杖を頼りに避難所に向かう。
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こんな幼い子供が猛暑の中を歩いている。 なんとも痛ましい光景である。
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避難の途中で一休みする幼児たち。 ペットボトルは既に空になっている。
イエメンの惨状
一方、内戦が続くアラビア半島の南端イエメンもまた、シリアのダラアの町と
同様地獄と化している。 暫定政権を支援するサウジアラビア主導の連合軍とイランが支援する反政府軍によるイエメン内戦の惨状については、既に「国際社会から見捨てられたイエメンの惨状」などで何度もお伝えして来た通りである。
3年前から始まった内戦による深刻な食糧難と医薬品・水不足で、2000万人が飢餓とコレラに苦しんでいる都市が、さらなる戦闘の地と化しているのだからまさに「生き地獄」である。 そうした街に支援物資を配送する唯一の拠点となっているのが、紅海に面したホデイダ港である。
このボデイダ(フデイダ)の町がサウジアラビア主導の連合軍の大規模な空爆を受け、4日間に新たに100人を超す死者が発生。 その結果、飢餓とコレラに苦しむ人々を救う手だてが失われた状態と化しているのだ。 国連の要請で一時空爆はストップしたものの、再開されようとしている。
イエメン訪問から戻ったばかりのユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は声明で、「イエメンでの無慈悲な内戦はすでに瀬戸際にあった同国を、さらなる奈落の底の奥深くへと押しやって
いる。 3年間にわたる激しい内戦が子どもたちにもたらしたものは、2200人の死者と3400人の負傷者、40万人の深刻な栄養失調者である」と述べ、「この大虐殺を正当化するものは存在しない」と
、怒りの声を伝えていた。
こうしたシリアやイエメンの人道的危機に対して国連は対処しようとしているのだが、ほとんど効果のある対策が打ち出せておらず、機能不全の状態に陥っている。
特に支援が難しい状況にあるイエメンでは一段と厳しさを増して来ているようである。
いま我々に出来ることは義援金を支援団体を通じて送り届けることだけである。
シリアに比べるとイエメンへの支援が手薄であるようなので、茨城県から来館しておられる皆さまから寄せられた義援金を含めて、本日、155,000円を国連WFPに送金させて頂くことにした。 戦禍と飢餓、それにコレラに苦しむ人々に、少しでもお役に立って頂けることを願っている。
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イエメン・ハッジャ州アブスの仮設キャンプで、戦闘から逃れテントで暮らす避難民
(AFP ニュース)
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医師の手当てを受けれる子供たちは幸せである。 (AFPニュース)
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わずかな基金であるが、地獄と化したイエメンの人々のお役に立つことを願っている。
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