ロシアのウラジオストックで開かれている国際会議「東方経済フォーラム」。 今回は習近平主席や阿部首相が参加したことから、世界の注目が集められている。 会議ではロシアと中国との親密な関係がアピールされるところとなったが、その背景にあったのはロシアに対するEUと米国の経済制裁、それに米国による中国への追加関税への反発であった。
大々的に取り上げられた今回の東方経済フォーラムの報道の中で、日本のマスコミでは全く取り上げられなかったが、私が注目したのは、英国で起きたロシアの元スパイの暗殺未遂事件に関するプーチン大統領の発言であった。
読者は既にご承知のように、英国のソルズベリーで発生したロシアの元スパイの父親とその娘の暗殺未遂事件の犯人として、英国政府はロシア政府の諜報機関に所属する二人の人物であるとして、その写真を公開。 そして、ロシアの外交官の国外撤去や経済制裁を発動し、英国だけでなくEUとロシアとの関係は一気に悪化、深刻な状態が今も続いている。
それに対してロシアは対抗措置を講じると同時に、英国政府の発表はフェイクニュースであるとして真剣に取り上げないまま今日に至っていた。 ところが、東方経済フォーラムで多くの参加者を前に、プーチン大統領は「調査をしたところ、彼らは事件とは何ら関わりがない人物であったことが判明した」と発言したのだ。
このニュースを伝えたのは英国のBBCニュースであったが、BBCはその中で、元ロシアの諜報機関であるKGBに所属していた人物がインタビュ―で語った、次のような発言を伝えていた。
「事件の背後にロシア政府が関与していた可能性はあるが、政府は実行犯が見つかることは計算外であったに違いない。 そのため、政府指導部はあくまででっち上げで、たわごとであると主張し続けているが、実体は驚きあわてている可能性は大である」
プーチン大統領の発言からすると、間もなく、民間人だとする二人の人物が公の席に登場することになるものと思われるが、それが英国政府が発表した写真に写っている人物と同一人物であるか、また、登場する人物がなにを語るか、興味津津である。
ロシア政府は犯行に関わったとされる人物は、観光やビジネスで英国を訪問していた一般市民であったとして、事を収めようとしたいところであろうが、英国政府や世界が納得するかどうか、はなはだ疑問である。
一歩間違えば、ロシア政府やプーチン大統領に対する欧米諸国の不信感はさらに増し、両者の関係悪化は一段と増すことになるかもしれない。 もしもそうなったら、世界情勢はさらに厳しさを増すことになりそうである。 先ずは、二人の人物の登場を見守ることにしよう。