ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の殺害疑惑を巡っての報道が世界を駆け巡っている。 どうやら、前回「窮地に立つサウジアラビア」でお伝えしたように、カショギ氏はトルコのサウジアラビア大使館で殺害された事は間違いないようである。
今朝飛び込んできたサウジ国営通信のニュースは、サウジの検察が本事件に関わった人物18人を拘束し、王室顧問など5人が解任され事を伝えている。 間もなく王室からの発表があるものと思われるが、皇太子が関係していることは伏せた内容になることは間違いなく、部下の過失による行為であったとして収束させようとするに違いない。
それはともあれ、当日、カショギ氏との会話はほとんど行われず、はなから殺害する計画のもとに行われたようである。 殺害の様子を録音したとされる音声データーを基にしたトルコ当局者の情報によると、カショギ氏は2日昼過ぎに総領事館に入って間もなく、暴行を受け注射を打たれた後に殺害され、体を切断されたようである。
音声データには切断に関わった法医学者の「こういう仕事をする時、私は音楽を聴くのだ」と話す声も録音されているというから驚きだ。 録音テープの内容が確かなものであるなら、全ての行為がサウジの治安機関による計画的な犯行であることは間違いなく、なんともはや残虐非道な行為であったことになる。
これから先の注目点は、トルコ政府がこれまでの捜査で得た情報をどこまで公表するかと言うことと、サウジアラビ政府がいかなる対応をとるかという点である。 一連の殺害行為がサウジの治安機関が行ったとなると、責任者はムハンマド皇太子と言うことになる。 他国におけるこれだけの殺人事件を治安機関の職員が独自の判断で行うことなど、あり得ないからである。
それにしても、本件が中東諸国の中で最も裕福な大国・サウジアラビアの最高権力者が命じた殺害事件だとするならば、なんともおぞましい限りである。 ムハンマド皇太子が最高権力に就いたのは1年ほど前、その後、多くの王子など皇室関係者がホテルに拘束されたり殺害されたりしたことは
、既に知られていることであるが、今回の事件で、彼の浅ましい本性が改めてむき出しになったようである。
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総領事公邸の調査を終えて退去するトルコの調査員。総領事館と公邸では遺体の
確認が出来なかったため、イスタンブール近郊の森などを捜索しているようである。
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一方、トランプ大統領もまた、カネと地位にまみれた情けない姿を改めて示すところとなったようである。 皇室が事件の裏にあるとされるたくさんの情報が
伝えられているにも拘らず、大統領は「国王も皇太子も何も知らなかったようだ。 事件はならず者による犯行だったのではないか」などと、お門違いの発言を繰り返し、皇室をかばっているからである。
彼のそうした言動は、米国にとってサウジアラビアが大変な武器輸出国であり、中東問題のカギを握る重要な国であるため、と言うのが表向きの理由である。 しかし、実際のところはそれとは別に、サウジとはトランプ氏個人が以前から深い蜜月関係にあった事
の方が大きな要因であったようである。
トランプ氏が資金繰りに困っていた1991年には、所有していたクルーザーを2000万ドル(約22億円)でサウジ王室の王子に売却。 この王子はトランプ氏が経営に困窮していたニューヨークのプラザホテルを3億2000万ドル(約364億円)で購入。 さらに2001年にはサウジ政府がトランプ・ワールドタワーの45階部分を1000万ドル(約11億円)で購入などしているのだ。
まさにトランプ氏にとって、サウジの皇室は恩義ある救世主であったというわけだ。
こうした経緯を見れば、大統領の「私はサウジからは利益を得ていない」と
する発言が、真っ赤な嘘である事は明白である。 よくもしらじらしい嘘をつけるものだ。 一人のジャーナリストが何の罪もないのに無残な殺され方をしているというのに、自身の損得のために、国王や皇太子をかばって擁護しようとしている事は、到底許される行為ではない。
いずれ事の真相は表に出て、サウジの皇室の人間性を失ったおぞましい実体が明らかにされることになると思うが、今回の事件を見ていると、富と権力を持った人間たちの隠された恐ろしい姿が露見され、身震いがして来る。 こうして「人間の素」が次々と表に出てくるのだ。
ジャマル・カショギ氏がこの世に対する恨みや執着心を残さずに、霊界へ旅立たれることを願わずにはいられない。
人殺しを命じた男(右)とその男を弁護する男(左)、
2人が死後に旅立つ世界はおのずと想像できるというものだ。
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