絶滅に向かうバオバブの木々
|
|
|
|
マダガスカル島の象徴ともいえるバオバブの木。
|
|
|
|
|
|
アフリカ半島の南東部に位置する西インド洋に浮かぶマダガスカル島
|
|
アフリカ大陸南東部の海岸から沖へ400キロ
、西インド洋に浮かぶ
マダガスカル島。 島といっても日本の1・6倍の広さであるからその面積は広大である。 この島に住む人種の最大多数は中央区地に住むメリナ人。 全人口は約2300万人で、「後発開発途上国」に分類されているだけに、生活レベルは低く貧しい農民が多い。
そんな島には1万種を超す固有種の木々が生育しているが、島を代表する木の一つであるバオバブは、世界に9種あるバオバブのうち6種を占めている。 先日、フランスのF2テレビがこのバオバブの木が絶滅に向かっていることを伝えていた。
私がこのバオバブに引き付けられたのは、その姿がなんとも雄大で
美しかったからである。 写真をご覧になって頂ければお分かりのように、背の高い大木であるが、その幹は大変に太く、最上部の先端まで全く枝が生えていない。アマゾンなど多くの
地を旅してきた私であるが、これまで目にすることのなかった珍しい姿をした大木である。
バオバブの樹齢は大変に長く1000年ともいわれているが、実は今、マダガスカルを象徴するこのバオバブの木々が、絶滅に向かっているようなのである。 その要因となっているのは住民の増加とその住民によって行われいる伝統的な焼き畑農業であった。 かっては、バオバブの木々が林立するその周囲は
、落葉樹などの森林で囲まれていた。
しかし近年、焼き畑農業の拡大で森林が焼き払われ、バオバブの木々もその犠牲となって次々と姿を消し
始めているのである。そのため、バオバブの連なる並木道として世界的に有名な景勝地にも、次第に影響が出始めて来ているようである。
焼き畑を営む住民は「森が破壊されるのは悲しいことだが、他にどうしようもない。自分達も食べていかなければならないから」と、木々が絶滅へと向かうことに目をつむるしかない実態を語っていた。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
バオバオの並木道には多くの観光客が訪れている
|
|
|
|
|
|
幹には枝がないので落書きが容易に出来るようだ。
|
|
|
|
|
|
バオバブの特徴は幹の上部まで枝が無いことと、幹の太さである。
|
|
|
畑作りのために森林は焼かれ、バオバブもその犠牲となっている。
|
|
|
|
|
|
難を逃れたように見えるバオバブの木も炎を浴びているため、やがて倒木となる。
|
|
|
|
|
バオバブの周囲を取り巻いていた林は焼かれ、砂漠と化してしまった。
|
|
消滅に向かうアマゾン
このバオバブの木々が絶滅に向かっているという報道を聞いて、思い出したのが遠く離れた南米のアマゾンにおける熱帯雨林の絶滅の危機である。 私の写真集『最後の楽園
PERU 』をご覧頂いた方は、そのエピローグに記した一文を思い出されたのではなかろうか。
私がペルーアマゾンの旅を終え、プエルト・マルドナド空港に向かう途中、車中から眺めたのは、広大な
熱帯雨林が次々と焼かれていく自然破壊の姿であった。 一晩かけてジャングルを抜けたのだが、なんとその間ずっと、焼かれた木々から煙が立ち上がる風景を見続けたのだから、その広さがいかに広大
であるかがお分かりになるだろう。 畑や牧草地を広げるために失われていくその面積は、なんと毎年10万平方キロメートル。それは東京都の十数倍にも達しているのだ。
熱帯雨林の樹木の高さは40メートルにも達する一方、
その下の土壌は数十センチしかない。 そのため、木々が伐採されたり焼かれたりすると、薄い表土が雨水に流され、回復不可能な荒地と化してしまうのだ。
そして、砂漠地帯と化した一帯は赤くひび割れした台地が広がり、舞い上がった赤い土埃(つちぼこり)が空を染める。 その荒涼とした風景はまるで宇宙探査機が撮影した火星のシドニア地方ようである。
科学者は、アマゾンの熱帯雨林は、早ければ 30〜40年後にはアマゾンの70%が砂漠化してしまうことを予測している。
何なんとも恐ろしいことである。 地球から自然を癒す木々が消えてしまうことになるのだ。 しかし、マダガスカルのバオバブの絶滅はそれよりさらに早く、あたり一帯がアマゾンと同様、砂漠化してしまうことになりそうである。
|
|
|
|
ペルーアマゾンから空港に向かう途中で目撃した焼き畑のために焼かれた木々。
|
|
|
|
|
|
延々と続くこうした風景が、やがてアマゾンが砂漠と化すことを伝えている。
|
|
地球から木々が消える
焼き畑による自然破壊はマダガスカルやアマゾンに限られたことではない。 東南アジアの国々でも広がっている。インドネシアやマレーシアの山岳民族もまた、焼き畑を広げているため自然を破壊し、多くの動植物を絶滅へと導いているのだ。
最近、そうした悲しいニュースをテレビで見ることが多くなった。
だからといって、先進国に住む我々に彼らを責める資格はない。 排気ガスや農薬で空気や土壌、河川や海を汚染し、大量の二酸化炭素を排出して温暖化現象を進めているのは、他ならぬ我々であり、二酸化炭素を減らそうとするパリ協定から脱退したのは
、ほかならぬ覇権国家・米国であるのだから。
このように、世界中の人間たちが競って自然を破壊して続けていては、母なる「地球」も、たまったものではない。
地球を生命体(ガイア)とする考え方に基づいた「ガイア仮説」は、地球には自浄作用力があり、その力の作用によって自然災害や環境破壊がもたらす負の影響を、時間をかけながら修復していくと説いている。
しかし、その力には限りがあることを忘れてならない。巨大なガイア「地球号」もその限界を超えた時から、自己破壊へと向かうことになるのだ。 昨今の自然災害の発生の様子を見ていると、地球はすでにその限界越えに達しており、生まれ変わりに向かって動き始めたことは確かである。
最近
、地球各地で発生している記録的な台風やハリケーンによる甚大な被害状況を見れば、いつまでたっても反省心のない愚かな人間に向けられたガイア地球の「警告」と「怒りの声」が聞こえてくるようである。 時は日々刻々と近づいていることは間違いない。 旅立ちの時は間近かに迫っているのだ。
読者におかれては、心の準備をしっかりしておいて頂きたい。
|