政府の借金・6000兆円
世界が抱えた借金の総額が1京8500兆円という膨大な数値であることは、前回お伝えした通りである。 それではその内訳
はどうか? 政府、企業、個人別に分けて見てみると、下の図のようになる。 それぞれの数値は全体のほぼ3分の1ということになり、その概略は政府が6000兆円、企業が7000兆円、個人が5500兆円である。
では最初に、総額6000兆円という政府の借金の状況を見てみることにする。 国別では米国がトップで2136兆円、次いで2番目が我が国で1137兆円、3番目は中国で707兆円である。 ただ一般的に伝えられて
いる政府の借金は、米国が約3000兆円、日本は約1300兆円とされているので、実際の額は国際通貨基金(BIS)の数値よりさらに大きいと思っておいたほうがよさそうである。
中国の後には、ギリシャやポルトガル、アイルランド、イタリアなどが続いているが、それらの国は既に過剰な債務がもとで政府の財政が危機状態に陥っており、現在も大きな改善が見られないままの状況が続いている。 中でも非常事態に遭遇したギリシャが
、年金カットや公務員削減を強行し、国民の反発と社会の混乱を招いたことは読者もご承知の通りである。
どうして、ここまで政府の借金が世界中で拡大したのだろうか?。 その発端となったのが、1971年にリチャード・ニクソン氏が米国の大統領がであった際に発生した「ニクソン・ショック」であった。
1970年代初頭の米国は、ベトナム戦争などの影響で財政赤字が拡大すると共に、大幅な輸入超過で貿易赤字が膨らんでいた。 そういった状況の中で、ニクソン大統領が突然発表したのが「金ドル交換停止」で
、この措置が世界にもたらした衝撃を「ニクソンショック」呼ぶようになったのだ。
これまでは政府がお金を発行するには、同等の「金(ゴールド)」の裏付けが必要であった。 それゆえ、国が保有する金(ゴールド)を上回る紙幣は発行することが出来なかったのである。 ところが、ニクソン大統領による「金ドル交換停止」によって、
政府は金とドルとを交換する義務が亡くなったので、金の保有量を無視して、必要とされる量の紙幣を自由に
発行することが出来るようになったのだ。
そして、この流れが世界各国に広まるところとなったのである。
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こうして、1970年代以降世界中の国々が新たな成長をもたらそうと、通貨の供給量を劇的に増やすところとなったのである。 その結果、1980年代以降、ばらまかれたお金の行く先が無くなり、
その多くが不動産市場へと流れ込んで急激な不動産バブルを発生させ留ところとなったのである。
そのバブルの崩壊として発生したのが、今から10年前、まだ記憶に新しい2008年の「リーマンショック」であった。 この
米国の大手投資銀行・リーマン・ブラザーズの経営が破綻したことがきっかけとなって発生したリーマンショックは、100年に一度といわれるほどの世界的な経済危機をもたらすところとなったのである
。
その後、世界各国は冷え込んだ経済を立て直そうと
して、再び世界中に空前の通貨供給が行われるところとなったのだ。こうしてばらまかれた紙幣は世界中の個人や企業、政府へと貸し付けられ、今日の膨大な借金を生むところとなったというわけである。
米国以外の国が大量に紙幣を発行するとドルに対して価値が下がり、通貨安となる。そうなると、他国から物を購入するのが大変になってくる。
そのため、簡単に紙幣を発行することは出来にくかったのである。 しかし、米国はドルが自国通貨であるゆえにそうした影響は受けにくい。 そのため米国はドルを自由に刷ることが出来たのである。
いま世界中が不景気に陥っているというのに、米国の景気だけが順調だといわれているのはそのためなのだ。
しかし、米国とていつまでもドル札を刷り続けることが出来るわけではない。 増刷に次ぐ増刷で世界一の借金国となった米国は、今や一歩間違うと政府機能が立ちいかなくなる状況が目前に迫っているのだ。 増税案が議会を通過しなかったら政府の一部機関が閉鎖に追い込まれる状況が毎年のように続いていることがそれを物語っている。
こうして今や米国政府も危機的状況に追い込まれているのである。 こうした状況を脱しようと今トランプ政権が覇権国家のメンツをかなぐり捨てて行っているのが、保護主義であり自国第一主義であるのだ。 今一見好景気に湧いているように見える米国景気も何かきっかけがあれば、いつドン底に落ちてもおかしくない状況にあるのだ。
次回は政府と同様、企業と個人の借金がいかに危機的状況に陥っているかを見てみることにする。
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