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政府「アイヌは先住民族」を法案に明記


サパウンペ[幣冠]をかぶったアイヌの長老
(アイヌ民族博物館パンフより転写(故・木下清蔵氏撮影)
 

政府は2月5日、アイヌの人々を先住民族として認める 「アイヌ新法案」を 、今国会に提出することになったと発表。この発表を6日付の新聞で見た私は大変驚くところとなった。

というのは、2008年(平成20年)の6月7日に、政府がアイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し独自の言語、宗教や文化を持つ先住民として認める法案を閣議決定し、国会の本会議で全会一致で可決されたはずであったからである。

そのことについては、当時「アイヌ人の尊厳回復へ」で記していたので、記憶しておられる方もおられるに違いない。北海道のスタッフの方にお聞きしたら、やはり皆さん記憶しておられた。

ところが、それから10年もたった今、同じ内容の法案が改めて国会に提出されることになったというのだから驚いて当然。どうやら2008年の法案は何らかの理由で廃案となって、今日まで 法案の実施は延ばされて来ていたようである。

現に、今回の法案の審議においても、早々に野党議員から、支援する団体の中に純粋なアイヌ人以外の人間が入っているとして、反対する意見が出ている。150年の歳月を考えたらそんな 些細な事にこだわっている時でないことが分かるはずだ。

なんとも情けない話である。もしも、今回も廃案になるようなことがあったら、取り返しの着かないことになることを分かっていないようである。それは今回の「先住民の犠牲の上に成り立つ現代文明」シリーズを読んで頂ければ分かるはずだ。

 
 

 
     
 

ここで一度、アイヌ人に関する法案の歴史をおさらいしておくことにする。北海道開拓の歴史が始まって以後、北海道のアイヌ人を保護する「北海道旧土人保護法」 が制定されたのは明治32年(1898年)であった。

しかし、この「北海道旧土人保護法」は アイヌの人々に対して、1、土地の没収 2、漁と狩猟の禁止 3、固有の風俗の禁止 4、日本語使用の強制 5、戸籍を獲得するには改名するというもので、アイヌ人から言葉も、名前も、文化も、生活圏も、民族の誇り をも奪った、同化政策的ななんともひどい法案であったのである。

その後、1997年にこの法律が廃止され「アイヌ文化振興法」が制定されたものの、アイヌの人々が求めていた「先住権」は盛り込まれないまま今日に至っていたのである。

アイヌの人々は,固有の言語や伝統的な儀式・祭事、多くの口承文学(ユーカラ)など,独自の豊かな文化を持っている素晴らしい民族であった。それにもかかわらず、150年前、北海道に入植した我々の祖先は、以後、こうした法律を拠り所に、彼らを先住民族として受け入れることなく、彼らの伝統や文化を否定し同化政策を推し進めて来たのである。

その結果、今日では,彼らの文化の十分な保存・伝承が図られているとは、言い難い状況にあるのだ。特にアイヌ語を理解し、アイヌの伝統などを担う人々の高齢化が進み、これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつある事を考えると、1日も早い新法案の実施が必要なのだ。

 

アイヌと大和人との関わり

 
 

 
 

 

 
 

2008年に北海道選出の町村官房長官が、記者会見で述べた「北海道的に言うならば、昔からこの地はアイヌ民族の土地であった。素直に言えば、 彼らは先住民族であったというわけである」という談話を聞いた時、至極当たり前のことが、何で今まで認められずに来たのだろうかと首をかしげたくなったのが、思い出される。

アイヌの人々が北海道ばかりか東北や樺太(からふと)に住んでいたことは江戸末期の歴史にはっきりと残されて いる。その後、明治に入って松前藩や伊達藩などが北海道の地で入植を始めた時、 彼ら先住民たちの手を半強制的に借りたことも、紛れもない事実であった。

さらに歴史をさかのぼれば、アイヌの人々は古くは『古事記』や『日本書紀』に、蝦夷(えみし)として登場している。古事記の中巻のヤマトタケルが登場する箇所には、「東のまつろわぬひとども(服従しない人々)を平らげた」とか、日本書紀の神武天皇の箇所には、「えみし一人で百人に当たると 、人は言うけれども抵抗もしない」などと、彼らとの接触の様子が残されている。

また、日本書紀にはそのほかの箇所にも、彼等はしばしば「蝦夷(えみし)」と漢字で登場し、斉明天皇の時代に阿倍臣比良羅夫が、アキタ、ヌシロ、ツガル、イブリサエなど に住む蝦夷(えみし)たちを討ったことも記されている。

こうした記録を読むと、彼らアイヌ人が太古の時代から北陸から東北にかけて広く住んでいたことや、その後、移住してきた倭人(和人)たちによって、東北から北海道へと追いやられたこと が分かる。そうした人々を先住民族として認めないまま、今日まで至ったのだから、なんともおかしな話ある。

 
 

 
 

 

 

今回のアイヌに関する記事は6回シリーズで掲載する予定なので、最後までしっかり読んで頂きたい。多少長文になるものもあるので、プリントアウトしてお読み頂くことをお勧めする。

次回は、世界70ヶ国以上に暮らしている3億人の先住民たち が、アイヌの人々と同様、「言葉」も「文化」も「伝統」も失われて来ている悲惨な状況を見てみることにしよう。
読者は一段と心が痛むことになると思うが、真実を知ることが何より大事なことであるから、目をそらさずにしっかり読んで頂きたい。

 




 

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