「合意なき離脱」に向かう英国とEU
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15日メイ首相の提案したEUとの離脱協定案は下院で大差で否決された。
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世界が注視する英国のEU(欧州連合)からの離脱問題。両者間で協定された離脱案がとうとう昨夜の英国の議会下院で否決。賛成202票に対して反対432票とする圧倒的な大差での否決は100年の議会投票の中でも初めてのこと。
メイ首相にはこうした結果を予測出来たため、先月の議会で予定されていた投票を先送りし、EU首脳や自国の反対派議員との話し合いを続けてきたわけだが、何の効果もなかったと言うわけである。むしろ、3月29日にEU離脱の期限が刻々と迫って来ている時だけに、無意味な時間つぶしであったようだ。
今回の否決を受けて、メイ首相は3日以内に代替案を提示しなければならなくなったわけだが、否決した議員が納得するような代替案が簡単に提示できることは困難。このまま打開策が見い出せないまま時が経過し、3月末までに英・EU双方の議会が推進手続きが終えなければ、いよいよ「合意なき離脱」となる。
「合意なき離脱」は何の取り決めもないまま離脱することになるため、英国とEU間の国際便や鉄道の運行に支障が出たり、物流が停滞して市民生活や経済が大きく混乱することは必至。
だからこそ経済界では「最悪のシナリオ」とされてきたのである。
アイルランド島は北部が北アイルランド、南部がアイルランド共和国に2分されており、
北アイルランドは英国領であるためEUから離れ、アイルランド共和国はEU加盟国
として残る。 そのため北アイルランドとアイルランド共和国との間には国境の
行き来の問題が発生。 それが今、EU離脱における最大の難問となっているのである。
一番の問題点は英国領の北アイルランドと地続きのEU加盟国のアイルランド共和国との国境の行き来をどうするかであるが、多くの難問を抱えているだけに、解決は容易ではなさそうである。
私は今回の離脱交渉は英国にとって、よりよい結果は期待できないと思っている。その理由は二つある。その一つは、英国は長い間覇権国家としての負のカルマを抱えているだけに、国家衰退に向かうEUとの離脱の道に進まざるを得ないのではないかと思われるからである。
もう一つの理由は、EU(欧州連合)そのものがそう遠くない内に分裂状態に陥る可能性が大きいことである。
ここにきて、EU内にはギリシャだけでなくイタリアやスペインなど国家財政の厳しい国々が出て来ており、現時点では何とかやりくりしているが、財政破綻となる日はそう遠い先のことではなさそうである。
もしも、そうした事態に陥った時には、EUにはイタリアやスペインのような大国の財政を支援するだけの力はないため、EU自身が分裂の危機に陥る可能性が大きいのである。
現にマオリッツオ・カヴァーロ氏やペトロ・ホボット氏は私がお会いした当時から「EUは遠からずして解体することになる」と語っていた。
カヴァーロ氏は「そもそもEUの創設はその解体によってヨーロッパに混乱をまき起こす為に形成されたものである」と、驚くべきことを語っていたほどである。
いずれにしろ、あと2か月余で離脱劇の行方は明らかになるのだから、しっかり見守っていきたいものである。
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協定案の否決を受けてEU離脱の再投票を呼び掛ける離脱反対派の人々。
再投票など行われることになったら英国は世界の英国、EU離脱協定案大差で否決笑いものになってしまう。
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